瀬戸内地域の価値の最大化を目指す。 ‐ 株式会社せとうちブランドコーポレーション 代表取締役 井坂 晋

わたしたちせとうちDMOは、瀬戸内ブランドを確立し、地域経済活性化や豊かな地域社会実現を目的とし、これまで活動してきました。わたしたちはこの度の新型コロナウイルス感染症の影響を深刻に受け止めており、瀬戸内エリアの自治体・観光関連事業者のサポートに全力で取り組むと共に、収束後のいち早い復活に向け、組織が一丸となり、取り組んでまいります。

 

株式会社せとうちブランドコーポレーション 代表取締役 井坂 晋

 

経歴:

広島市中区生まれ。1994年広島銀行入行。しまなみ債権回収へ出向の後、広島銀行法人営業部にてせとうちDMOの設立、広島空港の民営化に従事。広島国際空港副社長を経て2021年より株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション代表取締役。 瀬戸内エリア内におけるDMOの設立支援業務に長年携わっており、しまなみジャパン、みよし観光まちづくり機構、津山市観光協会、イース ト徳島などの設立支援を行った。たびまちゲート広島の地域商社事業部の設置(平和公園レストハウスの受託)にも携わる。休日は朝の散歩とまちの銭湯でリフレッシュ。

 

◎せとうちDMOを立ち上げたきっかけは何ですか?

もともと地方というのは人口が減少することによって地域が縮小する。このような話をきっかけに地方創生が積極的に行われ、現在に至っています。地方の人口減少は自然減と社会減があります。自然減というのは死亡数が出生数を上回る状態を指し、これらをすぐに止めることはできません。しかし、社会減というのは18歳から25歳の方が地方から都心部に出る事で地方の人口減少に繋がっていることを指しています。何故このような事が起こっているのかというと、大きい理由としては「雇用」という問題があります。雇用機会が少ないことによって、地方にいる人材が都心部に流出します。その為、雇用を確保しなければ地方創生の解決はなかなか難しいと考えています。

 

以前は産業誘致や工業誘致を積極的に行っていました。しかし、誘致から数年後には企業の経営状況等もあり、多くの企業が撤退しました。自治体として懸命な努力あって誘致ができたものが、誘致した企業の撤退によって人口減少以上に雇用機会が失われてしまう事態が起こってしまいました。このような状況を踏まえて地方から無くならない仕事は何かを考えた時、長期的に見ると観光をビジネスにするといわゆる逃げない産業としてあり続けることが出来ると考えました。そうすることで雇用機会の減少がなくなるので地方創生を行う上で最も効率的なんです。なので私達は逃げない産業に対して投資を行い、ビジネスを創出することで瀬戸内全体の産業創出を行っています。

 

◎具体的なご支援としてはどのような事をされていますか?

個別に事業者様にもご支援をさせて頂くことはありますが、産業が生まれるインフラとして生きていくのが我々のミッションなんです。なので個別事業者に対するサポートだけではなく、事業者が事業を行いやすい環境を整えることが主な支援内容になります。環境を整備するためにはビジネスとしての資金が必要になります。なので資金源がよりスムーズに出る環境を整えています。この環境で言うと、以前に日本で観光が盛んになる前にリゾート法が制定されました。

 

この法律が制定されたことによって多くの自治体が投資を行い、地方活性化を図りました。しかし、結果的には多くの失敗している歴史があります。その為、観光に対する投資は金融機関ではネガティブな印象が働き、投資がされにくい傾向にあります。そのネガティブを変えていく為に、私共でせとうち観光活性化ファンドを設立して投資を行っています。それによりネガティブなイメージを払拭し、瀬戸内エリアへの金融の流れを促すというのが行っている内容の一部です。

 

しかし、お金だけでは難しいので経営に対するサポートなど観光に対するあらゆるサポートも行います。人材が必要であれば人材を紹介し、コンサルティングが必要であればコンサルティングを行う。資金面+実働面でのご支援を我々の会社としては行っています。

 

◎せとうちDMOは複数の企業が1つの組織となって動かれていますよね?

そうです。せとうちDMOでは大きく3つの組織で動いています。一般社団法人せとうち観光推進機構では主に観光客に対するプロモーションを行っています。インバウンドであれば海外の方向けにせとうちをプロモーションして集客を行う。その人たちが来て事業者様が宿、飲食店やアクティビティーなどのサービスを提供する。その事業者に対する支援を株式会社瀬戸内ブランドコーポレーションで行い、一部資金の投融資というところでせとうち観光活性化ファンドというおよそ100億円のファンドを作り資金投資から経営サポートまで行っています。

 

例えば、岡山県の観光関連事業者がインバウンドで集客を行いたい場合、ネットワークや資金を考えると難しいんです。そこをせとうち観光推進機構が一括して瀬戸内エリアに海外の人たちを集客することで支援をしています。その観光客に対して個別の事業者がサービス提供を行います。もし、サービス提供のクオリティを向上させる為に設備投資が必要な場合は観光活性化ファンドから投資を行い支援します。このような仕組みになっています。

 

◎投資等の支援では具体的な事例などございますか?

事例としては瀬戸内のハイエンド向けクルーズ船(guntû)事業に対する支援やKAMOME SLOW HOTELなども我々からの出資をして作っています。他には日本旅館「Azumi Setoda」というホテルの開発支援や「Soil Setoda」を観光案内所として改修するにあたって開発支援を行いました。また「サイクルシップ・ラズリ」というのは我々が経営しているものになります。他にも「グランドーム瀬戸内しまなみ」というグランピング施設等こういったものの運営や投資を行っています。なので実際に行っている事業支援って何ですかという部分をお答えするとこのような投資や我々が直接運営を行う事で瀬戸内の観光産業のバリューを高める施策を行っているということになります。

 

◎創業当時はどのような困難がありましたか?

この組織が立ち上がって5年半近くになりますが、創業当時は瀬戸内という言葉自体もポピュラーではありませんでした。今はテレビでは「瀬戸内レモン」、本屋に行けば「瀬戸内しまなみ」という旅行関連の本など出版されるようになりました。これはまさにこのような仕掛けの中で瀬戸内に行ったら何が出来るのかという時に「行ったら船に乗れる」「行ったらこのような宿に泊まれる」といった仕掛けを作ることで瀬戸内の価値が高まり認知獲得ができました。しかし、このような仕掛けをする上で創業当初は理解をなかなか得られませんでした。DMO自体は全国に200程ありますが、プロモーションしか行っていない組織が多いです。その中で瀬戸内に関してはプロモーションのみではなく、事業投資や運営支援など統一性を持ち支援を行う形で行っています。この建付けを作るまでには誰も行ったことがないので理解が出来ないというお言葉を多く頂いていました。なのでこの仕組みや仕掛けの説明に多くの時間がかかりました。

 

◎コロナに入ってかなり厳しい状況に入ったと思いますが、どうでしたか?

そうですね。状況としては厳しかったです。新型コロナウイルスの感染が拡大した時は需要が蒸発したタイミングでもありました。これまではターゲットを海外の外国人観光客にして集客をしていましたが、GOTOトラベルやアウトドアブームで近隣の観光が少しずつ回復しつつある状況なんです。そこでこれまでは海外をターゲットにマーケティングを行ってきましたが、現在は変更して国内もターゲットに集客を行っています。いまはやっとある程度落ち着いてきました。

 

◎成功事例としてはどのようなものがありますか?

実はまだ失敗していないのでどれも成功事例なんです。労働集約型の事業にはなるので観光産業は収益的にはあまり良くないんです。その代わりに雇用機会を生みやすい特徴があります。投資した会社でどれだけの人材が働いたのかというのも我々の成功事例にもなります。

 

◎社会減として雇用機会がなかった事が上げられる為、このような支援を通じて雇用を生み出し地方創生を行っているんですね。

以前に比べると現代は圧倒的に地域のことや社会の事を考える方々が増えているんです。東京や大阪にあこがれて地方から都心に出る時代から、今の人たちは地域や社会にどれだけ貢献できるかというのを1つの価値観の軸としてもっているんです。なので貢献できるものがあってそこで生活が成り立つのであれば残って働きたいと思ってもらえる方が圧倒的に多いです。まさに受け皿を作るか作らないかが、私達のやるべきことだと思っています。

 

◎瀬戸内FinderとSETOUCHI REFLECTION TRIPはいつ頃から運営されているんですか?

瀬戸内Finderに関しては創業当時から運営を行っています。瀬戸内のコンテンツを紹介するサイトになるのでこちらは一般社団法人せとうち観光推進機構で行っている内容になります。SETOUCHI REFLECTION TRIPは海外向けのコンテンツを紹介するサイトになっています。

 

◎観光客誘致の為に新たなお取組みもされているんですか?

コロナが収束すれば間違いなく市場は回復すると考えていて、現状は移動範囲が少しづつ拡大している状況です。なので近隣からどれだけ集客するかという部分に力を入れようと動いています。最終的には観光業界はインバウンド需要がどれだけ回復するかということろが大きいと思います。

 

私自身がこの事業の立ち上げの後に広島空港の民営化のプロジェクトに入って2021年の3月までは空港にいたんです。地方にはかなりの空港があります。ですが、例えば、「東京によって広島に行く」「大阪によって高松に行く」ということになると外国人観光客の場合は降りたところで飲食店や宿泊施設などを利用してくれますが、国内観光に関しては予算を決めて観光に向かうことが多いので経由地で何かをすることは少ないんです。なので我々としては直接来てほしいんです。これからは空港とどのように運営して、羽田空港や成田空港から経由するのではなく、直接来てもらえるように仕掛けを作ることが重要だと考えています。

 

◎将来的にどのような事業にしていきたいか教えてください。

我々は設立当初から世界に冠たる観光地を作ると宣言をしておこなっています。なので国内外にせとうち観光推進機構のほうでPRを行い、世界のどの国の方がいらしても満足できるようなコンテンツを作るのが我々の仕事にはなる冠たるので歩調を合わせて2つの組織でやり続けます。観光地は1つのブームだけで終る訳には行かないので、100年単位で続く観光地にするために安定成長をし続けます。

 

‐本日インタビューした株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション様の情報‐

会社HP:https://www.setouchi-bc.co.jp/

せとうちDMO:https://setouchitourism.or.jp/ja/setouchidmo/

SETOUCHI Finder:https://setouchifinder.com/ja/

SETOUCHI REFLECTION TRIP:https://setouchitrip.com/