ブロックチェーンで食産業の可能性を追求する。 – エバーコネクト株式会社 代表取締役 吉田 敬一

今回は、「ブロックチェーン×食」を主軸に、BtoBのプラットフォームを提供している、エバーコネクト株式会社代表取締役の吉田敬一様にインタビューを行いました。

 

エバーコネクト株式会社は2021年3月から飲食店がスマホで簡単にギフトチケットを発行できる「Gotch」というサービスを提供しています。そして、この裏側でブロックチェーンを使用しているという新規性を持っています。

吉田敬一 ーエバーコネクト株式会社 代表取締役/創業者ー

経歴:米国の大学を卒業後、「デザイン」×「エンジニア」の道を歩み始め、その後ソニー、ボーダフォン、ソフトバンク、GREEなど通信・IT分野に転職。2014年にエバーコネクト株式会社を創業し、2017年から新規事業を立ち上げる。

 

・独立に至ったきっかけは何ですか?

心の中で描いてきたプロダクトを世の中に出したいという自己実現ですね。ずっとプロダクトをゼロベースで立ち上げるような技術職をやっていました。大手でそれなりに実績を残してきたんですけど、結局会社の中だと100%自分でコントロールできない。上の人に承認を取ったり、予算を取ったり…。そう考えた時に、次のステップとして全て自己責任でやりたいなと。

 

・食にこだわった理由はありますか?

私はずっとサラリーマンをしていたので、1日のうち2/3くらいが外食でした。働けば働くほど外食は増えていくので、年間で400食、働いていた15年間で6000食くらい外食した計算になります。でも、仕事帰りに「ここでいいかー。」って妥協して食べてしまうことも多かったので、意外に満足していないことに気が付きました。

 

もっと身体に良いものを食べれば次の日のパフォーマンスも変わるなと思い始めたのが、私の食に対する出発点でした。そのタイミングで飲食店経営者や食ビジネスのコンサルティングをしている方とざっくばらんに話した時に現在のアイデアに至りました。ずっと興味があったブロックチェーンとの組合せを考えた時に、これをやれるような企業は当時なかったので、自分で立ち上げ世の中をアップデートするしかないと思い、独立したという形になります。

 

・大手から独立するときには勇気が必要だったのでは?

それよく聞かれます笑。でもそんなことはなかったです。そのタイミングでたまたまた知り合いから仕事の話がいくつか来て、それを合計すると大体年収くらいだったんですよね。であれば、1年くらいは生活できるので、ここでアクセルを踏んでみようかなって。タイミングというか判断はこんな感じでした。

 

・独立にあたってまずしたことは何ですか?

実はですね、2017年の独立したばかりの頃から1年半ほどはPoCをやっていました。当時、ブロックチェーンは暗号資産分野でしか注目されていませんでした。しかし我々は非暗号資産分野で使えると考えていたんです。そこで、自社で研究開発のようなことに取り組んでいました。そこから技術を絞り込んで、自分たちがやりたいビジネスモデルに合致するかの確認をしていました。

 

・PoCの後はすぐ現在のサービスの形にしたのでしょうか?

その時にメンバーと方向性で悩みました。具体的にはプラットフォームビジネスで行くのか、それとも食産業に特化した垂直統合型のビジネスにするかです。

 

PoCをしている中で、エンタープライズ向けにブロックチェーンを使用したプラットフォームビジネスができるのではないかという考えが出てきました。プラットフォーム上に色んなサービスを作っておいて、外部の会社さんがAPI通してそれを使うイメージです。

 

でも、そんなブロックチェーンプラットフォームは前例がないし、プラットフォーム上に動く商用のサービスが無ければ企業さん乗ってこないじゃないですか。実証実験ベースで終わってしまうなと。

 

であれば、フェーズドアプローチで、一度最初に立ち返って、まずは垂直統合で食ビジネスに特化。2〜3年後に弊社のサービスや機能を使いたいという企業が出てきたら、それをプラットフォーム化するというアプローチでいくというビジネス戦略に落ち着きました。

 

・食ビジネスを垂直統合型でやっていく際に一番大変だったことは何ですか?

前例がないブロックチェーンの活用をしていくと決めたので使い物になるのか不安だったことと、メンバーの方向性を揃えることですかね。

 

エンジニアな人ほど新しい技術を使ったプラットフォームビジネスに興味があります。しかし、BtoBとかBtoBtoCのビジネスに戦略を倒したので、あれが僕らのノーススター (North Star) だという目標を浸透させてチーム体制を整えるという面で割と力が必要でした。

 

・垂直統合型のサービスに決めてから取った行動は何かありますか?

まずはβ版のリリースを2020年の6月にしました。とはいえ、最初の計画にβ版はありませんでした。元々、2020年12月にver.1.0のリリースをすることを目標に大体2年くらいのロードマップを敷いていました。

 

しかし、飲食店支援のクラウドファンディングをしている方から、クラウドファンディングのリターンに、飲食店の紙チケットを手作りして配布しているのでコストがかかるという話があり、であればうちのデジタルチケットの仕組みを使いますかという話になって。そこで商用の第一弾としてβ版をリリースしました。

 

・半年前倒しになったんですね。

そうですね。なのでマネジメントする立場の私と実際にコードを書くエンジニアとの間で熱い戦いがありましたよ笑。経営者としてはβ版でもα版でも商用で試すのが製品の完成度を上げるという意味で非常に大切なんですが、でもエンジニアからしたら、ロードマップがいきなり半年前倒しにされるわけで。

 

結局、機能を削ってミニマムでやろうという話で着地したのですが、実際は開発する順番を入れ替えたり、ロードマップを見直したりと、色々と工夫を凝らしてリリースしました。

 

・リリース後は順調でしたか?

β版なので問題はいくつかありました。当たり前のことですが商用サービスと開発環境で回すプロダクトってサポート体制も含めて違うのですが、お客様からしたらβ版とか関係ないじゃないですか。そこでこちら側の詰めや仕組みの甘さで問題が発生して、何度か怒られました。

 

・β版のリリースの経験から得られたことはありますか?

β版を通して商用サービスならではの課題に気が付くことができたことと、エラーの対応が弊社エンジニアのトレーニングにもなったというのが一番大きかったです。

 

弊社のエンジニアは外国籍メンバーがほとんどなので、日本ならではのプロダクトクオリティーについて認識を合わせることが難しい、時間がかかるという課題がありました。しかし、お客様から実際にクレームをいただくことで、市場が要求している品質や付加機能を瞬時に理解できるようになったことが弊社としてはいい経験だったと思います。

 

・本リリースにあたって直面した困難はありますか?

お店開拓・獲得が次の大きなタスクでした。弊社は営業体制を持たないという方針で、メンバーの人脈とパートナー企業とでお店開拓をしていたので結構順調に進んでいました。

 

その後、実際にアプリを使ってもらったら、我々が始めて気が付くことがいくつか出てきました。例えば、お店の登録までできても、その後のチケット発行まで至らないというケースがありました。

 

・その困難をどう乗り越えたんでしょうか?

2月にプロダクトをクローズドでリリースし飲食店数店舗に導入していただきました。お店で実際に使ってもらいながら日々の業務の中で気が付いた点を都度フィードバックをもらうということを繰り返し、プロダクトの完成度上げていきました。その後2021年3月に本格的に始動し始めました。しかしご存じの通り、コロナ禍真っ只中でして。飲食店の営業時間がちょこちょこ変わったり、お酒が出せなかったりと、飲食店経営者の方々もどういう料理のチケットを発行したらいいのか悩まれているお店が多かったです。

 

そこで、今はプロダクトを使用してくれている飲食店の方にプロフェッショナルサービスという形で弊社のメンバーが飲食店に出向いています。実際に料理を食べながら、オーナーさんや店長さんと向き合い、ギフト利用なのでこのような組合せなら喜ばれると思いますということをお客さんの立場からお伝えし、メニュー構成をご提案したり、その場でディスカッションしています。

 

そうすることで、一人で悩んでチケット発行まで進まなかったお店がチケットを発行できるようになってきています。結果として飲食店の方が通常メニューにない、Gotch限定のメニューを出してくれるので嬉しいですね。

 

・2017年から現在に至るまでで最も難しかったこと、事業開発に共通する難しさはどんなところでしょうか。

周りの方に説明し理解してもらうということが一番難しいというか力を使ったところでしょうか。新しいものを作るとなると聞く側は全く新しいと想像できない場合も多いです。そういった中で賛同者をどんどん巻き込むというフェーズは一番パワーを使ったと思います。

 

10人に説明すると10通りのフィードバックが返ってくると思うのですが、いい話もあればやっぱりネガティブな話もあるわけです。そういう時に自分のやりたいことがぶれないことが重要かなって感じています。もちろんそれぞれの意見やアドバイスに耳を傾けて聞いて、自分たちの考えやアプローチ内容と照らし合わせ考察しますが、それをやりすぎてしまうと結局自分がやりたいことができなかったり、後悔したりするなとも感じています。一番難しいのですが、一番踏ん張りどころでもあるなとこの2年で感じました。

 

・それでいくと、吉田さんのぶらさなかった「やりたいこと」は何ですか?

一番言われたのがそもそもブロックチェーン使う意味はありますかってことでした。ギフトチケット発行だけを見ると、もちろんブロックチェーンを使わなくてもできるんですね、同じようなことって。でもやっぱり僕らが目指すのはプラットフォームであって、そのためにはブロックチェーンが必須だと考えています。

 

少し話が変わりますが。レシピは日本が誇るコンテンツビジネスだと思っているんです。海外行くとわかるのですが、海外のレストランとかシェフは日本のレシピにすごい興味を持っていて、評価が高いんです。

 

将来2030年ごろにキッチンOSという世界が来ます。調理器の火力調節がミリ単位で可能になってそれがプログラムされてるとか。そうすると例えば一流シェフのレシピを自宅で完全再現できてしまう。当然そこまで自動化したいって人もいれば、自分で作りたいって方もいると思うので、色々分かれるとは思うのですが、確実にそういう世界は来ます。

 

そのうちインターネットによってレシピの民主化みたいなことも起きるんじゃないのかなと。中学生の女の子が夏休みにレシピを作ったらものすごい評価を受けて世界中で配信されるみたいな。「夏休みで3億円稼ぎました」みたいなそんな世界になるんですね。

 

そうすると権利の2次流通や、レシピの原版の保有者は誰でなど、要は音楽コンテンツと一緒でこれ私が作りましたというところにNFTなどの技術で権利をつけるようになると思います。それを世界中の人が使っていくと使ったぶんだけお金がフィードバックされるようになるイメージです。

 

・その時にブロックチェーンが…ってことでしょうか?

その時には確実にブロックチェーンが活用されます。トレーサビリティや原版の管理、2次流通化というのはブロックチェーンが最適な選択肢だと思っています。なのでそういう世界が来るので、まずは地味なんですけどギフトという形で価値の移転やモノのトレースを実装して進めています。

 

・そういう将来のことを考える視野ってどのように獲得できるものなんですかね。

クリエイティビティとフレキシビリティが必要だと思っています。要は拒絶しないことですかね、色んな情報、アイデア、意見とか。もちろんブロックチェーンはいらないでしょって言われるのは嫌なのでスルーしますけど笑。

 

では、これをどう育てたのかと考えると芸術系の学部に通っていた大学時代の経験かなと思います。ずっとゼロからデッサンとかアクリル画とかを描いていたので、そういう白いところから書く経験が今役に立ってるなってこの4,5年感じるようになりました。

 

・最後になりますが、直近の目標はありますか?

今は15店舗加盟店があるのですが、年内で50店舗を目標に獲得していこうと思っています。そのタイミングでMAUを7割くらいにして、チケット発行してもらえればこの市場も盛り上がってくると思っています。

 

-本日インタビューしたエバーコネクト株式会社様の情報-

会社ホームページ

https://everconnect.co.jp/

Gotch

https://gotch.jp/

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