中国の経験を日本の決済サービスに活かす。 – リンクトラスト・ペイ株式会社 代表取締役 林 挺然(りん ていらん)

リンクトラストペイ株式会社は国内外のQRコード決済を一括で処理できる「グローバルマルチ決済」。自動販売機やコインロッカーといった様々なサービスをQRコード決済に安価で対応させることができる「決済+(プラス)」。顔認証決済とEV自動車のシェアリング事業を行う「決済活性化支援」の3つの事業を行っている会社です。

 

日本ではスマホ決済サービスが注目されていない時期からサービスを開発し、より電子マネーが普及し便利になる社会を作る事に尽力されているリンクトラスト・ペイ株式会社の代表 林 挺然(りん ていらん)様に「会社を設立されるまでの流れと、新しいサービスを普及させる為に意識した事」について伺いました。

林 挺然 - リンクトラスト・ペイ株式会社 代表取締役/創業者-

経歴:

2004~2006年 中国家電メーカ(Haier)製品日本国内販売のため、現地化開発統括業務に従事する。

2007~2008年 ヤマハ商事株式会社にてシステム事業部営業、開発統括管理に従事する。

2008年~現在 リンクトラスト株式会社 代表取締役社長

主にコンピューターシステム開発を中心に活動しながら、中国最大家電メーカ(Haier)とのネットワークを活かした日中市場進出支援の分野にも注力。

2016年~現在 リンクトラスト・ペイ 株式会社 代表取締役社長

現在、スマホQR決済システムサービス提供。決済以外、国際物流、多言語コールセンター、中国市場宣伝ワンストップサービスも展開中で、日本企業の中国直接進出を支援している。

 

QR決済が日本で普及してないのは勿体無い。

-起業するに至った経緯を教えてください。

リンクトラストペイの設立は2009年頃ですが、最初は別の目的で設立していました。そこから第二創業のような形で2016年にスマホの決済等を行う会社としてスタートしました。

 

きっかけとしては、夏に友人家族を迎えるために成田空港に行き、子供に自販機でジュースを買おうとした時に、小銭が無ければ買えないという事実に大きな衝撃を受けたことがきっかけです。

当時、中国ではすでにスマホ決済QR決済は街中で使われていました。

 

QRコードの発明者は日本人にも関わらず、日本国内で全然使われていない事がおかしいと思いましたし、勿体無いという気持ちが沸きました。

 

そこでまず私達がインバウンド外国人観光客向けにスマホ決済サービスを始めることにしました。

 

-開発にかけた人数を教えてください。

5人程度です。

システム開発に強い2人のメンバーを私が引っ張ってきました。1人は北京大学の卒業生、もう1人はスマホ決済の開発経験がある方です。

 

システム開発には大体半年ほどかかりました。

 

-林様は営業とかもされていましたか?

当然行っていました。当時の会社は小さいベンチャーなので基本的には何でもやらなければいけませんでした。

 

-開発する前に「スマホ決済が日本に根付くのか」というヒアリングはしましたか?

ヒアリングはしていませんでしたが、流行る自信はありました。

中国や韓国では既にスマホ決済が流行っていたので、日本でも時間が経てば流行る時期がくると考えていました。

 

-困難だったことを教えてください。

営業です。開発や技術面に関してはなんとかなりましたが、新しいサービスとして我々のサービスを日本国内で広げるのは最初はとても困難でした。

 

当時日本ではスマホ決済が使われていないので、スマホ決済、QR決済とは何かと説明しなければいけません。しかし説明しても「本当に安全ですか?」「本当にやっているサービスですか?」と信じてもらえませんでした。

 

この新しい物に対して抵抗感や拒否感を持つ考え方は中国、アメリカとは違うと思いましたね。

中国やアメリカでは新しい物はまず導入してテストを行い、改善した方がいいポイントを見つけて修正していくやり方をしますが、日本では違いました。

私が外国人という事も、最初受け入れてくれない方が多かった理由かもしれません。

 

新しいサービスは市場に受け入れてもらえないと始まらなので営業という部分は1番大変な所だったと思います。

 

-日本人の性格と言われる部分ですね。

日本のベンチャー企業は難しいところがあると思います。

世の中に広げようとしている新しい商品・サービスに対して、世間はまず疑問から入るので。

ベンチャー企業は自分達が持つ商品・サービスを広げる所に苦労すると思います。

 

新しい物は使ってみないと成功しません。最初から100%の出来のシステムを作るような天才はいません。

まず使ってみて少しずつ改善していくという環境が、ベンチャー企業にとってお金よりも必要になる環境かもしれません。

 

-その困難はどのように解決しましたか?

世界ではスマホの決済サービスが使われ始めており安心・安全だという事、観光客が外国から多く来た時に自国の通貨でそのまま決済出来るシステムがあることで観光客を獲得出来るという事の2つを伝えました。

 

タイミングが良いことにその頃日本ではインバウンドで多くの観光客の方が来日されていました。なのでお店の方々は日本円をチャージしていないから支払いが出来ない観光客がいる事を実際に経験されていました。

そういった実感があったからこそ、お店でスマホ決済が出来れば、逃してしまっていた観光客を獲得出来る事を伝えれば皆さん理解してくれました。

 

日本人も海外に旅行した際にお店にJTBが使えると書かれていれば親近感がありますし、お店に入りやすいですよね。それと同じ原理です。

 

-営業されてから現在まで加盟店は何店舗まで増えられましたか?

現在大体2000店舗程です。外国人が多く来店される飲食関係、ホテル関係、化粧品関係の店舗様がいち早くシステムを導入されていますね。

 

日本の良い所として、最初は門前払いですが、信頼関係を作る事が出来れば皆さんが情報や依頼など多くの面で協力してくれます。

 

「この店舗では実装出来ませんが、この業態では使えると思います。」という様に協力してくれる事も多かったです。実際にお店のコインパーキングやコインランドリーにスマホの決済を使えれば便利だというのはお客さんからアドバイスいただいた形です。

調べてみると中国の方では既に実装されているので私達もやってみるかという様に進んでいきました。

 

サービスはお客様と一緒に成長していくと思っています。

中国のノウハウを活かす。

-提供していた決済サービスに大きなトラブルなどはありましたか?

中国の経験やノウハウを糧に開発しているので、今に至るまで大きなトラブルはありません。

 

私達が作っているシステムは、中国で最初に運営していた会社が起こしたトラブルを回避し3年~5年かけて改善されてきたシステムを受け入れて日本に合わせてカスタマイズと開発を行っているので今まで大きなトラブルはありませんでした。

 

日本でも最近スマホ決済のトラブルが起きましたが、スマホ決済サービスのノウハウがほとんど無かったことが原因だと思います。

スマホ決済は日本の方々がよく知っているクレジットカードのシステムとはセキュリティの観点で違う所が多々あります。

 

例えば決済を使用した地域を追跡し、明らかに離れた地域で決済された瞬間に決済を止めるという様なシステムはクレジットカードには難しくて出来ません。

(Risk Management System)。

※RMS は、リアルタイムで取引を分析するシステム で、不法決済・利用と滞納を発生させることが出来る決済はブロックし、疑わしい取引は承認遅延を介して詳細な分析のあと、通常の取引のみ強化 するようにすることです。

 

中国では実際にスマホ決済で多くの事件があったので改善されてきましたが、日本ではそのノウハウが無いので1から作ろうとしたためにトラブルが起きてしまったのだと思います。

 

-中国の情報や経験を活かしているのですね。実際に情報収集で中国に行かれますか?

会社を作った後も毎月2,3回は中国に行っていました。

理由としては仕事関係で行っている事もありますが、情報収集という面も勿論ありました。

 

中国国内で日本よりも先に流行っている物は多いと思います。現在当社で行っている事業のEV自動車や顔認証といったサービスも、中国の情報をいち早くキャッチし、良いソリューションを日本に持ってきてカスタマイズして提供した結果です。

 

-新たに事業を立ち上げる方に向けてアドバイスをお願いします。

ベンチャーはまずチャレンジする事が必要だと思います。

大きな取引先から受け入れるのが難しいと言われても何回も何回もチャレンジしなければいけません。チャレンジした際に1回門前払いされたからといって2回目のチャレンジを恐れてしまえば、商売として成り立たせる事は難しいと思います。

 

日本の社会は今まで大きなトラブルが無い環境なので新しい物に対して自然と距離感が出てくるのですがそこをどう解決するかが重要になってきます。

一旦受け入れてもらい信頼関係を築ければ多くのアドバイスや情報を集められると思います。

 

-本日インタビューしたリンクトラスト・ペイ株式会社様の情報-

会社HP

https://linktrust-pay.com/