貧困を無くし、人や国の不平等を無くし、教育をすべての人へ。 ‐ 株式会社Frank PR 代表取締役 松尾真希

「お客様とともにSDGs達成を目指す」をテーマに活動する。SDGs推進の革製品ブランドRaffaelloや健康雑貨ブランド、アトテックを運営。Raffaelloでは大手ECモールでランキング上位を独占するなど人気商品を輩出。革製品や雑貨の提供を通して「1.貧困を無くそう」「4.教育をみんなに」「5.ジェンダー平等」「8.働きがいも経済成長も」「10.人や国の不平等を無くそう」の5つのゴール達成に取り組む。

株式会社Frank PR 代表取締役 松尾 真希

 

経歴:

早稲田大学卒業後、ハワイ大学大学院都市地域計画に留学。環境や歴史、文化を保護しながらサステイナブルな発展、ホリスティックな心身の健康づくりについて研究。帰国後は途上国支援、女性支援を実践するレザーブランドRaffaelloを2015年より運営。 バングラデシュのシングルマザーに雇用機会を創出する事でストリートチルドレンの減少に貢献。SDGsの達成を目指す中で第9回環境省グッドライフアワード、2021年サステイナブルコスメアワードなどを授賞し、多分野において功績を認められている。

 

◎創業のきっかけを教えてください。

もともと私がハワイ大学の大学院でMDGSというミレニアム開発目標という国連で採択された目標が当時ありまして、その考え方を使いながらハワイのコミュニティーを再興させたり、ナショナルパークサービスというアメリカの国立公園にインターンという形で関わらせて頂きました。

その時にこのような考えが日本にはその当時なかったんです。そこでそれをもっと日本で広めたいなと思いました。日本に帰国した際、ちょうど2011年の東日本大震災があり、私はアメリカのボランティアを日本に招聘するというNGOのサポートを行っていました。その時に被災地の偉い方にお会いして私の考え等もお伝えしましたが、何で今なの?と言われました。私としては既存のものが無くなったいまだからこそ取り入れるべきだと考えていました。

 

そこでどんなにいい考えがあっても、そこで頑なに行ってしまってはダメだと学んだんです。そこでなにか商品やサービスを通して理解していただく、そんな事業を作ろうとした時に夫が元々レザーブランドをやりたいと思っていたのでレザーブランドを立ちあげました。

 

立ち上げようと決意する前にバングラデシュに行きました。私も海外にいた経験からバングラデシュ出身の友人がいましたが、友人が国費留学生として海外に留学に来ているので国に帰国しなければならないんです。ただ、国に帰れば安心して飲める水もなければ、電気も通っていない状況で帰りたくないという声を聞いたんです。実際に行ってみないとリアルな状況が分からないので現地に行きました。

 

現地に行ってみると友人の言う通り本当にストリートチルドレンも多く、水にもヒ素が混入していたりするんです。日本でしている普通の暮らしをするためにはまだ貧しい上にインフラも整っていないのでこれから発展しながら、という状況でした。

 

実際に視察に行っただけですが、その時のストリートチルドレンの子供たちの顔が暗く、凄く印象に残ったんです。バングラデシュはもともとレザービジネスが凄く盛んなので、そこでやろうと決めましたが、ただそれをやるのではなく、ストリートチルドレンや社会が救われるような事もビジネスを通じてサステナブルな貢献が出来るのではないかと考えていました。

 

バングラデシュは女性の地位が凄く低く、DVなども多いんです。さらにその低い地位の為に女性が職に就きにくいんです。夫が急に無くなる事もあるので、もしそのようなことがあれば、子供がやむを得ず物乞いをしたり働きに出るケースも多い。そこでそのお母さんを豊かにすることがストリートチルドレンを減らすお手伝いになるのではないかと考えました。

 

そこで工場にお願いして女性を積極的に雇用してもらうように交渉をしました。実際にお話した職人も海外帰りの方がいて国に対する問題を把握していた方でした。そこでそういう貢献を一緒にやろうとしてくれました。ここがきっかけで社会課題を解決するような事業を始めることができました。

 

◎発展途上国というのもあり、治安が良くない中で不安はありませんでしたか?

現場に行ってみないと分からないと思っていて、机上の空論が私は嫌いなんです。行かないで自分が五感を体験しないで判断するのは好きじゃないし苦手なんです。やっぱり自分の目で見てみないと判断が出来ないと思うんです。なので私は現場主義です。逆に行かないで決める事の方が怖いと思っています。実際に自分の目で確認して決めないことは自分が頭の中で思っている事と、事実が異なる可能性もあるので正確ではないですよね。もちろんデータも大切なので情報をもらう事も重要ですが、その情報がその通り正しいのか現場に足を運ぶことがさらに重要だと思います。

 

◎ダッカに行かれてどのようなことがありましたか?

イタリアから帰ってきた職人に出会いました。彼との出会いが本当に大きくて、私が考えていることや思いをお伝えしたところ彼も共感してくれたんです。実際にバングラデシュの方は凄く働き者なんです。本当に日本の高度経済成長期を彷彿させる様な働き方をして凄く熱心なんです。そこで何でそんなに働くのか聞いたところ、「未来のために国を豊かにしたい」と言っていたんです。バングラデシュは隣国のインドから独立していて、インドとバングラデシュを比べるとやっぱりインドは豊かな国なんです。バングラデシュはアジア最貧国と言われていてそれが嫌だと言っていたんです。これはいろいろな工房を回りましたが、皆さん共通して同じことを言われるんです。そこで共通の考えを持っている現地の仲間を持てたことは大きかったと思います。

 

◎実際にここからお母さんに働く場所を提供することをされましたが、現地ではそれに対する反発はありませんでしたか?

最初はやはり反発がありました。その上、私も女性なのでさらに反発がありました。そこは悔しかったですが、とにかく日本の市場でたくさん売って影響力を出せば良いと思ったんです。商品を沢山売ることによって流通を増やして工房へのオーダーを増やせば私たちの方が立場が強くなると考えたんです。そこでまずは日本で沢山売ろうと考えました。当時は搾取しようとしているとか、様々なきついお言葉を頂きました。

 

ですが、2年目の2016年のAmazonプライムデーで1日4000個近くお財布を販売できたんです。その頃から少し変化がありました。継続的に安定した数を発注できるようになってきたんです。多くの企業はクリスマス前とかサマーセール前にまとめて何万個と発注しますが、うちの場合はベンチャー企業なのでキャッシュフロー的にそういったことが出来ないんです。なので少しずつ頻繁にオーダーをする形をとりました。そうすると雇用主の方からも安定した仕事の供給ができるので喜ばれるんです。そうすると私達の立場も少しずつ強くなってきたんです。そこで私達のやりたい事やビジョンをもう一度お伝えしたんです。ストリートチルドレンと児童労働をなくしたいということをお伝えしました。私たちがお取引させて頂いている工場では児童労働をもともと行っていない工場とお取引させて頂いていますが、やっぱりそこに対しては皆さん思うところがあるみたいでした。こういう社会を変えていくには雇用のない女性に対して仕事を与えなきゃいけないと認識していたんです。私たちの財布はそういう人たちに作ってもらいたいと考えていますし、お客様もそのような考えに賛同してくださっています。目の肥えた日本のお客様が満足するレベルの技術を与えることで弱者の女性の方に対しても持続的にちゃんと生活ができるような未来を見つけて欲しいと思いました。

 

そういう行動をしているとバングラデシュでの工場さんの中でも私たちのプレゼンスが上がっていきました。それでようやく交渉ができるようになりました。

 

◎Amazonプライムデーで1日4000個売り上げたとおっしゃっていましたが、何かありましたか?

当時は他に革財布をオリジナルで作って世界観も作り込んでいる企業がなかったので、じわじわと売れてはいました。そこでAmazonの方から注目して頂いてAmazonとかで特撰セールみたいなところに取り上げて頂けたんです。恐らくそれで一気に売れたのかなと思います。

 

◎売れるための仕組みづくりとしてはどのようなことをされましたか?

結局、人が集まる場所で売らなければ意味がないと考えて、あえてモールだけに絞りました。私たちはメンズブランドを扱っていて、モールの特徴として男性が購入しやすい場所が比較的Amazonに多かったのと、Amazonをご利用頂く方はもともと読書家だったり、意識の高い方が多いと思いました。そのような方にサステイナブルの概念を知って頂きたかったんです。そういう方は比較的決定権があり、会社でのポジションが上位の方も多いので、そのような方に対してご購入頂いた後に、消費によってこういう人道支援をしていたんだなと気づいて頂きたいと思い敢えてAmazonというモールを選択しました。

 

◎実際に2016年の夏に大量のオーダーが入りましたが、この状況ならではの大変だったことはありましたか?

やはりベンチャー企業ではあるので在庫をそろえるにも資金調達をしなければならなかったのもあったのでその時はここが一番の悩みでした。資金調達をして在庫を確保しても売れない可能性もあったので、結果的には売れたので良かったですが、資金がショートするかもしれないという不安もありつつ、きっと大丈夫という気持ちもありつつでした。が白髪は増えました(笑)

 

◎2016年の夏以降はどのようなことをされましたか?

夏以降はいかに供給を安定させるかというのが課題としてあったので工房を変更していく必要がありました。後は職人とも話して、品質もより向上させたいと思っていました。我々はイギリスで有名なブライドルレザーをバングラデシュで開発して商品を作っていました。このブライドルレザーの品質をもっと向上させたいと思い、それが出来る工房を探すために頻繁にバングラデシュに通っていました。その間に一度外国人を狙ったテロがあったんです。そこから自分で現地に行きづらくなりました。現地にいるスタッフにも頻繁に来ることは避けた方がいいと言われ、それで少し開発が遅れてしまいました。バングラデシュの中でも治安が良い場所で起こったテロで、日本の場所で例えるなら虎ノ門とか六本木で起こったイメージです。被害者の中にも日本人がいたりと衝撃的でした。実際に開発ができたのは2018年頃でした。

 

◎実際に開発に着手された2018年はなにをされましたか?

そこからより商品の品質をアップグレードすることが出来て、その時にQC(品質テスト)の会社が耳の聴こえない人を雇用している会社を見つけることができ、その会社と契約することが出来ました。そこでよりダイバーシティ&インクルージョンを進めることが出来ました。バングラデシュは日本のように社会保障が手厚くないので自分で雇用を探す必要があります。ですが、なかなか働き口がないのが実情で、手がない方がリキシャという自転車で人を運ぶタクシーみたいな物があるのですが、実際にそういう所で働いているのを目の当たりにして障がい者の方の生活が凄く気になったんです。このような障がいがあっても普通に働かなければいけないのかと感じたんです。現地の人に聞いたところ「日本のように社会福祉が充実していない為、みんな平等に働かなければいけない」とのことでした。

そこでこのような方にも何か仕事を与えることは出来ないかと考えていた矢先の2018年後半に品質チェックの会社を変更する際、その会社では日本向けの品質管理ができて耳の聞こえない方も雇用していると聞いてすぐにその会社を選びました。

 

※ダイバーシティ&インクルージョンとは、性別、年齢、障がい、国籍などの外面の属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などの内面の属性にかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合い、良いところを活かすこと。

 

◎2018年に正式に法人格として活動されましたが、そこから2019年までは順調に事業が進んでいましたか?

そうですね。Raffaelloは別法人で運営していましたが、Frank PRへ法人分割したのを機に一度スタッフに任せていた業務をアウトソースすることにしました。実際にスタッフを雇用して行う上で課題となったのが、事業の方向とスタッフが進みたい方向が一致しづらい部分でそこにかなりリソースを費やすことになっていました。そこで任せていた業務を可能な限りアウトソースすることで業務効率を高めるようにしました。そこの仕組み改善を徹底的に行いました。今までスタッフで行っていた仕事をオートメーション化することでいかに業務効率を高めて簡単に巻き取るかを考えて委託できることは委託して、私はクリエイティブに集中できるように内部の変革を行いました。

 

◎2020年に入ってからはどうでしたか?

実は年始にアメリカで謎のインフルエンザとしてコロナウイルスのことが騒がれていた状況をみて、2020年の国交がとまるギリギリの2020年の2月末にバングラデシュに新商品開発の打ち合わせに行ってきたんです。その時に経由地がシンガポールかタイでしたが、物資のロックダウンまであったんです。物資は止まらないと考えていたので、発注していた物が届かない状況になりました。ここが一番大変でした。

しばらく国交がないと予想していたので、訪問した時に新しい商品の開発を急ピッチで進めて、後はリリースするだけという状況まで整えました。ですが、まさか物資まで止まるとは考えていませんでした。その時は2週間程シンガポールかタイに発注した商品が滞在していて動かせないと。品切れを起こしたらどうしようと不安でした。

 

◎そこから今日にかけてどういったことをされましたか?

緊急事態宣言が2021年は長かったので、お財布の購買ニーズが下がって意外と今まででも一番市場としては動きが鈍かったです。Amazonで競合が増えて、大手企業の参入もありました。ですが、Raffaelloの一番大切なところは「エシカルな商品でありながらも、カッコいい」商品であることなんです。かつリーズナブルな価格設定にしているので、競合他社の商品と違う部分としてはただカッコいい商品なのではなく、カッコいい商品でありながらもエシカルで社会課題に貢献できてその上で誰もが手に取りやすい価格の商品であることなんです。なので「カッコよくて、エシカル」な事が重要であって、「カッコいい」だけが大切ではないんです。なので「カッコいいところ」だけコピーした競合他社が出てきて悔しい部分もあったので、2021年はブランドがこれまで行ってきた取り組みをオープンにして、SDGsのアワードにも商品を出すと決めていました。先進国で消費者がお買い物をすることで誰を助けているのかという部分も知って欲しいのでこれをちゃんとオフィシャルな形に残してみようと考え、2021年はトリプル受賞できました。特に環境省グッドライフアワードで評価いただけたことが嬉しかったです。このような活動を通じて誰かを助けられる事は素敵な事だと思っています。エシカル商品を購入することで目に見えない誰かが救われるんです。どなたかのご家庭でお子さんが学校に行けたり、工場の中に託児所完備したり社会を良くする方向への道づくりとしてご購入して頂くお客様に誇りを持ってもらいたいと思います。

 

◎今後の展開やビジョンを教えてください。

1つは我々の会社から出していく商品は全て社会を良くしていくものにしたいと思っています。後はフェアトレードなどが全て先進国の基準になっているので、そうすると先進国しか選択肢が無くなってしまうんです。なので発展途上国でもフェアトレードが出来る仕組みを作っていきたいと思っています。

 

‐本日インタビューした株式会社Frank PR様‐

会社HP:https://www.frank-pr.jp/

Raffaelloブランドサイト:https://n-raffaello.com/

Raffaello Amazonサイト:https://www.amazon.co.jp/stores/Raffaello/page/BBA6083E-3E6B-4551-81DB-FB1B4D75E9FE?store_ref=BLP_HW_31FEA922-FCCD-4618-B874-2E5F76DBA829

Raffaello Yahooサイト:https://shopping.geocities.jp/frankpr/