未来を創るクリエイティブカンパニー。 ‐ 株式会社しくみデザイン 代表取締役 中村俊介

「みんなを笑顔にするしくみをデザインする」という企業理念の下、2005年に、現代表の中村俊介が設立。ユーザー参加型コンテンツのパイオニアとして、1,500件以上の実績数を誇る。 米インテル社主催の世界的コンテストでのグランプリ、第13回 日本e-ラーニング大賞 部門賞、EdTech Japan Global Pitch 2017など、国内外での受賞多数。 2020年度から文部科学省、総務省及び経済産業省による全国の小学校でプログラミング教育の充実化を図る取り組み「みらプロ」へ協力企業として参加し、プログラミングアプリSpringin’を通じて子ども達にプログラミングで創造する楽しさを体験してもらい、日本のモノづくり産業の未来を担う創造的人材を育成することに力をいれている。

株式会社しくみデザイン 代表取締役 中村俊介

経歴:

株式会社しくみデザイン代表取締役。名古屋大学建築学科を卒業後、九州芸術工科大学大学院(現・九州大学芸術工学研究院)にてメディアアートを制作しながら研究を続け、博士(芸術工学)を取得。2005年にしくみデザインを設立。参加型サイネージや、ライブコンサートのリアルタイム映像演出等、数々の日本初を手がける。AR技術を用いて体の動きで音楽を演奏できる新世代楽器「KAGURA」や創造的ビジュアルプログラミングツール「Springin’」を開発するなど、UX分野の先駆者として常に新しい分野を切り開いている。Intel Perceptual Computing Challengeグランプリ、Sónar+D Startup Competition グランプリなど、国内外での受賞多数。

 

◎創業の経緯を教えてください。

立ち上げは2005年になります。九州芸術工科大学の大学院で博士課程を卒業して博士号をとりました。卒業後はすぐに九州工業大学にて大学講師として勤務し、それと同時期に株式会社しくみデザインを立ち上げました。創業のきっかけは大学院の時にKAGURAという身体を動かして演奏する楽器をアート作品として学生の時に制作でした。これが特許を取得したり、ヤングベンチャー支援事業に採択され結果的に会社を作らざるを得ない状況になりました。大学の講師になった直後でもあり、当時はいま事業として行っているのをビジネスとして大きくするという思いもなかったんです。作ったものが思いのほか周囲の方に認められて支援事業にも採択された結果、起業することになったという形です。なので世の中のスタートアップ企業とは異なる形でスタートしました。

 

◎立ち上げ後は何をされたんですか?

いきなり何がビジネスになるのか分からない中で、当時は当然スマホもないし、パソコンにカメラも標準でついていなくて外部から取り付ける必要があるような時代に「カメラを使って身体を動かして演奏する楽器です」と言ったところで全く理解されなかったんです。なのでカメラを使ってリアルタイムで画像処理をして身体の動きを転送してそれを音と映像に変換するという技術を元に広告を作り始めたんです。また当時はデジタルサイネージという言葉もなかった時でしたが、絶対にこの先、世の中の看板はディスプレイ化すると思っていました。そこでその時にカメラを付けておいて前を通りがかった人に反応する広告があったらより効果が高いと考えました。ただこれも少し早すぎて、まだ世の中の看板がデジタル化されていない時点で話をしていたので、賞とかは頂いたんですけど、なかなか世の中の理解が追い付くところまではいきませんでした。

 

起業して商業化したからといって事業がいきなり大きくブレイクするわけではもなかったのですが、一部の面白いねと言っていただけた大手広告代理店と組んで甲子園球場の大きなスクリーンにカメラでお客さんを映して、見ているお客さんがみんな虎になるというサイネージの広告をやりました。これも賞を頂きまして、ここから他社も同じことをやり始めたので、こういう参加型のインタラクティブなコンテンツは、僕らが日本で最初にビジネス化をしたと言えると思います。

 

◎新たな市場を作った後は何をされたんですか?

いくつか知名度の高い賞を受賞した事によって東京にある会社もどんどん参入し始めて、市場が出来上がってから僕らの所にも仕事が多く入るようになりました。ただ、いつもやっていることが時代より早すぎて他社が同じことをやり始めた時にはちょっと飽きてる状況なんです。世の中は追い付いて来たものの僕らは数年前に既にやってて少しつまらなくなってしまってたんです。ビジネスとしてはそこまでブレイクもしないけれど、営業も全くいない中でも知らないうちに仕事がどんどん入ってきて自分たちがやりたい事だけをやる事が出来た状況でした。自分たちがやりたい事をやる分には楽しいですが、市場が出来たことで価格競争が始まったり、僕らの中では過去のモノが世の中では最新のモノとして出てきて、これはなんだと思うようになりました。 

 

ただ、もともと自社プロダクトで何かしたい思いはずっとあったので何個かプロダクトを作りました。

 

◎具体的にどのようなプロダクトを作られたんですか?

1つ目のプロダクトが、KAGURAです。intelが初めて3Dカメラを作って、その使ったソフトウェアを世界的に募集するPerceptual Computing チャレンジというコンテストが行われていたんです。学生の時に制作したKAGURAを改良して、新しい楽器として開発し直して応募したら世界1位になったんです。その当時世界中から約2700応募があった中での1位だったのでそこで知名度がグッと上がりました。ただジャンルが狭かったのと、せっかく世界一になったのに特になんのPRとかもしなかったので、ビジネス的にはそこまで大きな影響はなく業界内では知られる程度でした。最近になって、外向きのプロモーションを行うようになったので、今だったら賞を取ったらいろいろ打ち出せば良かった!と思えます。

 

受賞をしたのをきっかけに社内でKAGURAの商品化を行いました。ただ今思えば結果的には失敗しています。

 

◎何が失敗だったんですか?

結果的には儲からなかったことです。一部のマニアックな人に好かれる商品になってしまいました。もともと儲けようと思って作っていないんです。こんなモノがあったら面白いな!と思って作りました。僕らは楽器として作ったのでミュージシャンとかそういった方に使ってもらいたいと思っていました。でもここが失敗したポイントです。もともと自分が楽器を弾けなくて弾けない人でも弾ける楽器が欲しくて作ったところから始まっているのもあり、比較的だれでも弾ける楽器なんです。だけどカッコよくやるととてもカッコよくなるもので、基本的に僕が作るもの全般に言えるんですけど、敷居がとても低いけどやりこめば凄くなる。これがミュージシャンにはウケなかったんです。なぜならみんな何かしらの楽器を弾けるからです。いま教育機関から問い合わせが来てお取引することが多いので、今思えば教育にもっていけば良かったかもと思ったりします。

戦略を立てずプロモーションも行っていなかったのでビジネス化しなかった形ですね。

 

◎他にもSpringin’などのサービスはどうでしたか?

Springin’の前に、paintoneという絵をかいて描いた絵を触ったら音が鳴るモノを簡単に2歳からでも作れるアプリを作りました。これはiPadが出たときに、パソコンと異なるコンセプトで画面に触れるコンピューターがでて面白いと思ったんですけど、その当時iPadじゃなきゃ出来ないアプリみたいなものがなかったんです。そこでiPadだからこそできるものは何かを考えた時に、音のなる絵が作れることだと思ったんです。音と絵をリアルタイムで扱えて、且つそれに触れるというデバイスなので。。ここまでできたら、今度はその絵を動かしたいと思ったんです。動かしたいと思った時に急にコードを書くのは絶対違うと考えました。描いた絵に音と動きを付けた結果ゲームや楽器みたいなものになって欲しくて、どうやったらそれをプログラミングなしで感覚的に最短で作ることが出来るかを考えて開発したのがSpringin’です。これが2015年頃でそこからワークショップなどを行って使い勝手等を見ながらブラッシュアップをしてきました。

 

◎ブラッシュアップを重ねて中身にどのような変化がありましたか?

ブラッシュアップを重ねる中で僕らもクリエイターとして活動してきた中で思った事で、ただ作るだけだと面白くないなと感じたんです。作ったモノを誰かに遊んでもらってなんぼだなと思って、作ったものを売れる状態にしないといけないと考えました。最初の段階でコインという概念を入れて、自分の作品を売れるようにアプリの中にマーケットを作りました。これが2017年です。会社自体は受託開発で収益を得ていた状況で、自社プロダクトに関しては余力で作っていた程度でまだ利益につながっていませんでした。ただ2018年にKAGURAが事業として厳しい状態になったのは、受託メインで行っていた結果、プロダクトに集中出来なかった結果だと思いました。

 

◎ちょうどこの時期だとプログラミング教育が必修になりましたが、Springin’はどうでしたか?

学校教育でプログラミングの必修化が始まると言われるようになって2019年の夏にこれまで少しづつダウンロードされて1万ダウンロードだったのが夏の7月8月で8万ダウンロードに伸びたんです。面白いと思って作ったモノだったのがいきなり学校の先生たちの間で広まってダウンロード数が急激に伸びたみたいなんです。ここでもしかしたらいけるかもね!と感じ、これまで資金調達せずにいた会社でしたが、Springin’は収益化するまでに先にお金が必要なビジネスモデルなので、ここから半年くらいかけて初めて資金調達をしようと動きました。

 

そこから2020年の2月に最初の資金調達を行いました。このタイミングでは受託開発をじわじわ減らしてSpringin’の方に力を入れて、最終的にはSpringin’だけを行うように計画しました。

 

◎この時期だとコロナと重なる時期ですが、影響はありましたか?

この時期に学校が閉鎖されたりして、これまで行っていた受託案件は基本的に人が集まることが前提として動いていました。例えばライブの映像演出とかライブがないと何もできないし、街中のサイネージも街に人が出ないと成立しない。基本的に僕らが行っていたのは人を楽しませたり、人を集めるためのものなのでいきなり需要やマーケットが飛んだんです。一件だけ大型案件を受けていてそれが納品できたので売上としては助かりました。ただ新規案件はどうなるか分からない状況でしたが、ラッキーなことに半年前からSpringin’に注力する決断をして資金調達を行ったので、キャッシュはあるんです。受託案件ベースだったら仕事がなくなったらキャッシュアウトしてしまう状況でしたが、後から売上げを見込む自社サービスベースに切り替えたことで、新規案件がなくてもキャッシュアウトせずに事業を継続できたんです。

 

このコロナ状況はSpringin’だけで見ると凄くプラスに働きました。巣ごもり需要というのが働いて、どうせお家でタブレット触るなら何か作品を作ってほしい、丁度プログラミング教育も始まるし何か作品を作れるものはないかという人達に刺さってユーザーが大量に増えたんです。

 

どうしたらこれが大きなビジネスになるか、というのが次の課題です。

 

現状、結果的にユーザーの8割が小中学生です。しかも教育トレンドもあり教室とかも倍々で増えている。そこで、Springin’を使った教材や学校向けのサービスを作成して販売しようと考えました。一般向けの無料アプリと切り分けて、学校向け、先生や教室向け細かい機能なども入れながら別サービスを開発してローンチしました。それがSpringin’ Classroomです。

 

◎今後はどのようなサービスを展開していきたいですか?

いまSpringin’をどうやって世界に広げていくかに注力しています。Springin’は文字を全く使わないので国も関係なく使えますし、年齢、性別に関わらず利用できます。言い換えればこれらに関わらず誰でも作る人になれるポテンシャルがあるんです。どうやったら世界中の人たちが最初に手にするクリエイティブなツールになるかというのを考えています。みんなをクリエイターにする為にSpringin’を世界中に広めたいんです。

 

‐本日インタビューした株式会社しくみデザイン様の情報‐

会社HP:https://www.shikumi.co.jp/

Springin’ Classroom:https://springinclass.org/

<スプリンギン ダウンロードURL>

 iOS:https://apps.apple.com/jp/app/springin/id1184243692

Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.shikumi.springin