「仕組み」で事業を拡大する。 – 株式会社ビズリンク 代表取締役 姜 大成(かん てそん)

株式会社ビズリンクは登録者数4,000名近いフリーランスの登録のあるITプロ人材のマッチングプラットフォーム「Bizlink(ビズリンク)」を運営するIT企業です。

そして、この仕組みを活用して「Bizlinkエージェント」と「Bizlinkコンサルティング」というエージェント機能と、コンサルティング機能をクライアント企業に提供し新しい働き方を世の中に創り出しています。

2021年には前年比約2.45倍の売上高成長率を実現し、2022年に向けて急成長を続けている株式会社ビズリンクの代表、姜 大成様に「急成長の秘訣と起業までの流れ」ついて伺いました。

姜 大成(かん てそん)- 株式会社ビズリンク 代表取締役/創業者-

経歴:

2009年4月に金融機関に入社。預金融資の渉外担当を経験後、2012年4月に株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア)に転職。社内ベンチャーとして事業の立ち上げを経験し、トップセールスとなり最年少でリーダーに昇格。チームマネージメントやマーケティングを経験後、独立を決意し2015年株式会社ビズリンク(旧 株式会社Growther)を設立。代表取締役に就任。

 

どん底から起業を志した。

 

-起業するまでの経緯を教えてください。

元々父が会社を経営していたので、何かで起業したいという考えは大学時代からありました。実際に友達と大学内で今でいうベンチャー通信や、Facebookのような物を一緒に作る「起業家ごっこ」のような事をしていました。

大学卒業後すぐに起業をしようかと思ったのですが、経営する上で会社の組織を知る必要性を感じたので新卒で銀行に入りました。

 

ただ、その頃にリーマンショックが起きた影響で父が経営していた会社も倒産してしまい借金を6億円ほど抱えてしまいました。電話もなり続けますし、脅迫状も届くドラマの様な生活をしていました。

 

そのような生活をしている時でも私は銀行に勤めているサラリーマンだったので毎日会社に行き、父と同じような年齢の社長に「お金を返してください」と家で受けていた言葉を言っていました。

 

ある日「来月から家が無くなるがどうするか」と家族会議が開かれたのですが、その時に自分が何も出来ないもどかしさ、悔しさを強く感じました。

 

ノウハウもスキルもお金もネットワークもアイデアも無い。

 

口だけで何も行動をしていない頭でっかちな状態になっていた事が物凄く悔しかったです。加えて、お金が無い会社からお金を回収し、お金が有り余っている会社に頭を下げてお金を借りてもらうという「本当に必要としている所にお金が回っていない、資本主義の社会」はおかしいと思いました。

 

「家族を守るために起業しなければ」という気持ちと、「起業するのであればこの資本主義の構造を変革するような社会的意義のある仕事で起業したい」という気持ちが22、23歳頃に組み合わさりました。

 

そこから、インテリジェンスという起業家を多く輩出している会社にまずは転職し、トップ営業や社内ベンチャーでリーダーやマネージャーを経験し、ある程度準備が出来たと思った28歳のタイミングで起業しました。

 

-準備とは具体的には何でしょうか?

スキル的な準備です。

ビジネスを理解出来た事、「何でも売れる」と営業的なスキルが身についた事、組織が拡大していくフェーズごとに必要なノウハウ・スキルが備わった事の3つが大きかったです。

 

営業的なスキルに関しては、1番売ることが難しい商材を営業して売っていたのでどんな商材でも売れると自信を持てるようになりました。

 

また、フェーズごとに必要なノウハウ・スキルに関しては、社内ベンチャーで1桁人数の組織から50人程の組織に成長するまでを組織の中核として実際に体験していく中でフェーズごとの課題や対処法、人事制度や研修制度の必要性といった部分が備わりました。

 

ただスキルの準備が出来たと言ってもお金的な準備は全く出来ていませんでした。

現金は持っておらず、預金は0、カードローンもマイナスの状態で、持っているのはパソコンと電話だけでした。

 

-お金が無い状態から一歩踏み出せた理由はありますか?

どこの企業に行っても1000万円以上で雇ってもらえる自信があった事が大きいと思います。

前職で中小、中堅、ベンチャー企業の社長を相手に営業をしている際に「うちに来ないか」と誘われる事が多々あり、中には具体的な年収の提示をされた事もあります。

 

そういった勧誘を受けた企業をリスト化することである種のセーフティーネットとして捉えていました。

 

もし資金調達の為に1000万円の借金を負ったとしても、勧誘してくれた会社に入り、営業をしてインセンティブを含めれば1年程度で返せると考えていました。

 

-企業の誘いをリスト化していた理由を教えてください。

自分の社会的価値の基準が欲しかったからです。社内でトップ営業になったとしても会社の外に出れば自分の評価がどのレベルにあるかは分からないですよね。物差しがあるわけでは無いですし、センター試験のような物も無いので。

 

では何が評価になるのかとなった際に、採用したいと思ってもらえる事と、採用に対する年収の提示金額が成績表のような評価の1つになると考えていました。

なので私は自分の今の社会的価値がどれぐらい上がっているのかとチェックしていました。

 

-自分がどれぐらいのレベルにいるのかと客観視されていたのですね。

普通はしなくてもいいと思うのですが、私の場合は臆病だったことが理由です。

最底辺の経験を既に過去している事に加え、万が一起業が失敗してしまうと私の家族が路頭に迷ってしまう悲惨な未来が待っていると思っていました。

なので絶対に失敗しないように成功確率を上げなければいけませんでした。

 

失敗する例として圧倒的に多いのは自分の能力が分からず起業して失敗するケースと、計画性が無くて失敗するケースです。

ただこの失敗ケースに関してはセーフティーネットを自分で作る事で成功確率をある程度高められると思っています。

 

計画的に確率を上げる手段や方法を考え実行するという能力は、経営者と起業家にとって必要になってくるのではないでしょうか。

 

-事業を起こすとなった際に成功確率は姜様の中で何%でしたか?

100%です。

勿論恐怖はありました。

実家が潰れてしまい誰も支えてくれる人がいない状態で、毎月入ってきていた給料が突然無くなるのはとても怖いです。

ただ100%出来ると思っていました。

 

-何故でしょうか?

自分の営業能力を信じていたからです。

 

事業を起こして最初の1,2ヶ月はライスワークと言われる、ご飯を食べる為の仕事をとにかくしなければいけません。この時期には営業のアポを10件こなして深夜1時から資料を作り朝7時からアポを組むという生活をしていました。

 

アポイント先の会社にある課題をヒアリングしながら解決策を提案をする0→1の仕事だったのですが、そこで必要になる営業能力に関しては自信を持っていたので事業を起こせたのだと考えています。

 

-実際に営業は上手くいきましたか?

非常に上手くいきました。2ヶ月目で利益で50万円を確保出来ましたし、3ヶ月目4ヶ月目には100万円ほど月に入るようになりました。

 

またその際ライスワークからライフワークに移行する為に課していたステップの1つ目である「100万円程の利益を作る」ことに成功したので、作成していた事業構想をPowerPointに落とし込んで投資家を回り始めたり、テックファンドというファンドが経営しているモデルに応募したりといった活動をし始めました。

 

その後テックファンドに応募した事業構想が通過し、結果的に今ある「ビズリンク」のβ版のシステムが作られ、エンジェル投資家の方々にお金を投資してもらえるようになりました。

 

-構想を出された時やβ版を作られた際はお一人で働かれていたのですか?

一応1名スタッフが入ってくれたのですが3ヶ月で辞めてしまいました。

ベンチャーイベントの前日に準備を行っていた際にメールで退職する旨を告げられました。

 

その後3ヶ月程は「計画的に人を入れなきゃな」と思いながらも1人で活動していましたね。

 

-事業としては順調でしたか?

1期目は自分1人で営業していたようなものでしたし、売上も3000万円強まで到達していたので1番楽な時期でした。

 

その後、投資フェーズへと移ったことで赤字を出し続ける状態になりました。酷い時は月に500万円の赤字が出ることもありました。

 

-自分を臆病だと評されていましたが、この時期恐怖は感じていましたか?

非常に感じていました。

資金が3000万円程しか無くて赤字が月500万円だと時間の余裕は半年しかありません。

 

コスト削減をするか売上を上げるかしか選択が無いのですが、コスト削減として人や広告や開発を削減してしまうと売上の伸びも下がってしまうということもあり色々と辛かったです。

 

結果的には追加で資金調達をする方向で行動しました。

 

-赤字は何故生まれたのでしょうか?

実は赤字は計画していたといえば、計画していた通りでした。

 

ベンチャーには「労働集約型で順々に伸びていくタイプ」と「労働集約× ITサービスを絡め、成長率が最終的に上がっていく形を描くタイプ」と「いわゆるITサービスでJカーブを描いていくタイプ」の3つ種類があると私は思っています。

 

その中で、私達はどちらかというと2つ目のタイプでした。

最初は労働集約なので1期目は利益も出て黒字決算ですが、2期目からはビズリンクのシステム開発やフリーランスを集める為のマーケティング広告を打つなどの目先の売上を上げる投資ではなく、数年後に伸びてくるような投資を行っていたのでどうしても赤字になってしまいました。

 

ただ、将来的に伸びる計画だという事を銀行や投資家に理解してもらう事で、前述したように追加の資金調達をすることが出来ました。

 

-恐怖心は勿論あったと思いますが、必要な赤字だと覚悟を決めていたのですね。

そうですね。

ただ計画の内だと思っていても、計画通りに全てが進むことはありません。

計画がズレる1番大きい理由に、人が辞めてしまうという事があります。人がこの月に辞めるという前提で予想して計画を書いている人は最初のベンチャーでほとんどいないと思います。

 

私は「ある一定期間通じて平均何人ぐらいは社員のうち辞めるかも」というのは退職率などを鑑みて考えていましたが、実際には3ヶ月の間に一気に5人抜けるみたいな事が起きます。

 

その様な事態が起きれば、辞めてしまった分の仕事が止まりますし、売上は下がります。教育のコストも勿論全てマイナスになるわけです。

計画に対して実際に起きてる事象のギャップがある事は非常に怖かったです。

 

「仕組み」に気づき、大きく成長した時期

-実際に人が辞めてしまった事をきっかけに「組織」に着目されたと他メディアで拝見しました。詳しく教えてください。

2019年頃に「会社は仕組み」という大事な事にようやく気づきました。

 

例えば1つの営業をとってみても、「リストを作り、テレアポし契約書を書いて、最終的に入金されて、入金のチェックを誰がして」というような業務フローが全て繋がってなければいけませんし、どこかで属人的やブラックボックス化していてはいけないのがフローとしての仕組みです。

 

会社の業務フローが全部繋がっている「仕組み」を作らなければいけない事にようやく気づけました。

 

そこからは私の仕事は「仕組みを作る仕事」になり、今では「仕組みを作れる人を雇う仕事」に変わってきています。

 

-仕組みを意識することで業績は伸びましたか?

2019年の前まで売上が1億を超えてから伸び悩んでいたのですが、2019年に仕組みの重要さに気づいてからは会社にも沢山人が入ってきてくれましたし、売上も2倍3倍と伸びていきました。

 

利益を出す上での本質だと思います。全ては仕組みです。

 

-実際にどのように仕組みは学びましたか?

最初は事業を行いながらひたすらPDCAを回していました。

仕組みが上手くいっている社長にヒアリングは数多くしましたが、私達の会社に当てはまらない事もあるので、社長が「どのような考え方を持っているか」ということを学ぶようにしていました。

 

そして学んだ事を私達流のフローに落とし込みPDCA、トライアンドエラーをひたすら回し毎週土曜日に経営会議をする事で仕組みの勝ちパターンが各所で出来てきました。

-大きく業績を伸ばしている裏には会社内部が整っている事が大きいんですね。

to C向けのサービスはある程度商品力が大事になってくると思いますが、to B向けのサービスはサービスの良さよりも、営業や採用のオペレーションが強い事が大事だと思っています。

 

仕組みが基盤にあり、その仕組みが文化として成り立つ事でSoftBankや楽天、サイバーエージェントや光通信といった強い会社になると考えています。

 

私たちが行う新規事業は高い確率で成功します。

伸びていて且つ参入障壁がそこまで高くない市場の中で、1番成長している会社の良さを全て整えプラスαの価値を作り私達の独自に科学させた仕組みに乗せているので当たらない訳がありません。

 

仕組みが自分達の形に合うまでは時間がかかりますが、合ってしまえば仕組みに再現性ある状態で事業を乗せていく事を繰り返していくので失敗の確率を減らしていけると思います。

 

-本日インタビューした株式会社ビズリンク様の情報-


会社HP

https://corp.bizlink.io/