今回は、一人ひとりの足に合わせて木型(靴型)から作るオーダーメイドのシューズを提供する株式会社crossDs japan 諏訪部様にサービス創業の想いをインタビューを行いました。
株式会社crossDs japanは、世界で初めてオーダーシューズをサブスクで提供すると言うモデルでサービスを提供しています。このサービスは従来の製品よりも3Dで精度高く納期を短く、安価に届けることでオーダーメイドシューズを手に入りやすくしたという強みがあります。
サブスクにした理由としては、「靴を売って終わり」ではなく、「靴を履いてもらうきっかけと、お客様と共に長い時間、靴をお手入れして大切に履いて頂きたい」という想いからでした。
諏訪部梓 ー株式会社crossDs japan 代表取締役・創業者ー
経歴:ITコンサルに従事。2019年12月に株式会社cross Ds japanを創業。
・どのようなきっかけでこのアイデアを思いついたのですか?
初めは靴業界と全然違うITコンサルを10年ぐらいやってました。当時、インダストリー4.0やIoTなどのキーワードが出てきて時代の変化を感じていました。新しい技術の発達により、今まで難しかった「一人ひとりの仕様に合わせて違うものを大量に作る」ことを目指そうという雰囲気がありました。
その当時ちょうど3Dプリンターの特許が切れて安く手軽に買えるようになってきて、実際に購入して使用してみました。しかし、使ってみると出来上がりの表面がざらついていたり、印刷も難しかったりすることがわかり、すぐ普及するようなものでもないだろうなと予測しました。
そこで、最終製品の手前、中間部材を作るために使えないかと考えていた際にオーダーシューズ、女性向けのパンプスにいたりました。パンプスが足に合わない、でもオーダーシューズは高すぎて手が届かないという女性の悩みや、職人さんたちの経験と勘に頼ってしまっているというオーダーシューズの課題感があることは知っていました。
この課題に対して3Dの技術を取り入れて靴型を作ることで、正確に、早く、安くオーダーシューズの製作ができるようになるのではないかと考えたことがきっかけです。
世界的には人口は増えていくので、必要になる靴の数は増えるのですが、日本国内の靴市場は斜陽産業で、衰退の一途と辿っています。それは安価な量産の靴が海外から輸入されてしまっているからです。国内は人口減少もあるので靴の需要は下がる一方です。じり貧となってしまっている産業は魅力的には見えず、イノベーションも起きにくい状態でした。私が元々ITをやっていたので、「ものづくりの情報化」に対して知見や興味があったため、国内だけ見れば先はないように見えますが「日本から世界にひろがっていく靴作り」を目指して新しい技術を靴業界に持って来て、日本発の世界的な靴のイノベーションを起こせるのではかなというワクワク感の大きい想いで始めてます。
・2019年12月設立でコロナが重なってしまったかと思うのですが、何か影響はありましたか?
初めの頃は先行きが見えなくて不安で仕方なかったのですが、そのような状況下でも需要が全くゼロにはなりませんでした。この状況下でも一定の需要があるということによって、コロナが終わればすぐ伸びるだろうと思えています。少しずつお客様から必要とされていることを感じる機会も増えてきて、今辞めるわけにはいかないという想いで続けてますね。
パンプスで悩んでいる女性って多いと思います。今まで足に合うパンプスを履いたことがないお客様が多いので、「足に合うってこういうことなんですね!」という驚きの感想をよくいただきます。その言葉をいただいた時が励みになる言葉でもありますし、実際に靴をたくさん履かれて修理で戻ってくると、それがより嬉しいです。
今のコロナの状況で、8月はだいぶお客さんが少なかったです。9月になって感染者数が減ったことで予約が入るようになっているので、コロナに左右されているのは肌で感じています。日本のワクチン接種はさらに進んでいくと思われるので、今後に期待というところではありますね。
・コロナの影響下でも需要があるということで、設立にあたり準備もしっかりされたのではと思います。準備期間でどのように会社を作っていったのでしょうか。
会社設立からサービス開始までの数ヶ月で全て準備したわけではなくて、業界の知識を取り入れたり、働く仲間を探したり、準備期間は長かったです。
私自身は靴の業界にいたわけではないので、靴に関してど素人な状態でした。そこで靴教室で先生をしている方に色々相談をして、その教室の先生を巻き込んでメンバーにもなっていただいきました。そうすることで作り方だけでなく、材料の仕入れ先を知ることや業界の人脈なども広げることができ、「靴屋」として創業できた形になります。
当社は直接のBtoCだけでなく、BtoBtoCのサービスも展開しております。そしてありがたいことに、周囲の皆様の協力もありBtoBtoCのサービスに取り組んで頂ける企業様ををご紹介いただく機会などもあります。そのため、紹介したいと思われる企業を作っていくという自覚を持つように気を付けています。
・経営の際に、周囲の協力が得られるように意識されているようなことは何かありますか。
ビジネスプランをしっかり持つことが1番重要だと考えます。直接お客様に販売するだけでなく、BtoBtoCとしてパートナー企業様を増やしていき、そこを経由して広く提供していくことが成長戦略としては重要になってきます。そういった展開に向けた中長期的なビジネスプランが準備できていることは弊社の強みだと考えています。用意周到に準備をすることで、周りにも理解をしていただきやすいし、魅力を伝えやすくなると考えています。
・コロナ以外でご苦労された経験はあるのでしょうか。
いいタイミングでいい人たちとか、いいきっかけがあったりしたのでうまく進んでいる感じがします。でも、始めた頃は人数が少ない中でPRとかどうすれば良いのかわからず、とりあえず以前から気になっていたPRのプラットフォームサービスを利用して見たのですが、結果あまり成果がでなくて、やはり必要なコストをかけて直接メディアにアプローチするようにしなければいけないと反省したことがあります。
他には、靴のバリエーションですね。最初はパンプスだけで十分できるだろうと思っていました。ただそれだけだと、コロナの影響もあって客数が伸びなかったので、現在はショートブーツ、紳士靴、スニーカー等、色々な種類の靴を増やしていくという対応を取りました。
・今後のさらなる展望はありますか?
最終的には既存の大量生産の靴作りっていうのを全部無くして、全てオーダーメイド3Dシューズにしたいなって思っています。足に合わないものを大量に作ることは無駄な生産をしているわけです。買った方のお財布に優しくないし、売る側としても売れないサイズを作る必要が出てきてしまうし、地球にも優しくないので、みんな不幸になってしまいます。
当社のオーダーメイド3Dシューズであれば必要なものしか作らない、絶対足に合う、廃棄も減るのでみんなハッピーになります。3D技術により低価格化を実現しましたが、まだ気軽に買えるほどの価格でないという障壁が残っていると思っています。しかし、ここも技術を磨いていくことにより、人間と機械、コンピュータの良い所をさらに引き出して新しいカタチの靴を作れないか試行錯誤しています。
・「世界をこうしていきたい」のような予測は起業する上で大切なのでしょうか。
そうですね、今ある物と同じものを作っていても差別化が難しいですよね。「良い素材を使いました」、「この材料は地球に優しいです」ってそれはそれでわかりやすくて良いのですが、それだけでは埋もれてしまうと考えています。
なので、もっと強いメッセージを纏っていく必要があるのではないかと、すごく感じています。
特にファッション業界は長年各ブランドが見た目、デザインで売っていたところがあると思います。そこにプラスして「新しい地球や未来を考えるとこうですよね」っていうのが謳えないと、環境に負荷ばかり与えてきた産業なので、今の社会的なニーズに合わなくなってきているのだと考えています。
-本日インタビューした株式会社crossDs japan様の情報-
AYAMEパンプスの特徴 https://www.hana-ayame.info/
・一人一人専用の靴型(木型)を3D製作
・選べる靴のデザイン:8900万通り以上
つま先の形:ポインテッド、ラウンド、スクエア
ヒールの高さ:フラット、3cm、5cm、7cm
ヒールの形:フレンチ、チャンキー
靴底:レッド、ブラック、ベージュ
革の色、配色など
・メンテナンス付きのサブスクで、たくさん履いても長く履き続けられるように