マーケティングとテクノロジーで問題解決する。 ‐ 株式会社ベーシック 取締役COO 林 宏昌

「問題解決の集団として、情熱を妨げる世の中のあらゆる問題解決をやり抜き、多種多様な企業が強みに集中できる世界を創造する」をミッションに掲げ事業を展開するテクノロジーカンパニー。企業がWebマーケティングを推進する上で直面する”知識・環境・人”不足の問題を解決するため、オールインワン型BtoBマーケティングツール「ferret One」、フォーム作成管理ツール「formrun」、Webマーケティングメディア「ferret」の3つの事業を展開。     

株式会社ベーシック 取締役COO 林 宏昌

 

経歴:

2005年株式会社リクルートに入社後、新築マンション首都圏営業部に所属。 優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを2年連続で受賞。 社長秘書経験後、経営企画室室長を担い株式公開を経験。 広報ブランド推進室室長、働き方変革推進室室長を歴任。 2017年リデザインワーク株式会社を副業にて創業。 2018年ベーシックに入社しCHROとして人事制度を刷新、現在はCOOとしてferret One事業を中心に事業全体を管掌する。

 

◎ベーシック株式会社にご入社されてからはどういったことをされましたか?

まずは人事制度を大きく変えました。

 

私が当初やりたかったことは、大企業のコンサルティングによって働き方改革や人事改革を行い大きなインパクトを残すことと、副業のプラットフォームを作ることでした。前職のリクルートでは働き方変革推進室室長などを歴任していたのですが、その過程で「多様な働き方を進める中で1社に100%コミットするのは価値観としては古い」と感じていたためです。

 

入社前にベーシックの代表秋山と会った際には、その副業プラットフォームの事業をベーシックでやらないかとお声がけいただいていたのですが、しっかりと整っていた組織から初めてスタートアップ界隈にいったので、そもそもの組織体制が整っていないことにとても驚きました。そこで入社して1週間で代表の秋山に新規事業の立ち上げではなく人事に専念するといって人事責任者を務め、まずは組織体制とその根幹をなす人事制度を変革することにしたのです。

 

当時のベーシックは人事制度がある意味年功序列型になっていたんです。代表の秋山自身が人を信じるタイプで、みんな頑張っているんだから例え未達成だとしてもマイナスの評価はないという思想が根本にあったためです。その思想自体は私も一定理解はできますが、達成が見えない状況の中でどうPDCAを回すのか聞いたときにただ「頑張ります!」という返答が出てしまうので、私には違和感があったんです。成果や行動が評価や給与に反映されない人事制度では、若手の向上心が育たず、結果的には組織や事業の成長も見込めなくなると感じました。

 

そこで私から「もし強い組織をつくるのであれば、達成・未達成の評価を正しくした上で、成果を出した人に対してはしっかりと抜擢するような形で変えていきましょう」と提案しました。合わせてその評価を行うマネージャー層のマネジメント力強化も行うため、マネジメント教育や、メンバーとの1on1の仕組みなども含め、約1年かけて理想とする組織の輪郭を作りました。

 

そのような組織の体制が概ね整ってきたタイミングで、次は既存事業であるferret One事業についてチャーン(解約)が悪化するなど、早急に立て直しが必要な状況になりました。そこで次はferret One事業も私が見始めることになったのです。

 

◎実際にferret Oneに行ってからは何をされましたか?

既存のお客様のチャーンを減らすためハイタッチのカスタマーサクセス部隊の体制を増強することに加え、そもそもの顧客ターゲットを見直すということを行いました。当初はBtoC企業や個人事業主の方も含め、多くの方にご利用いただき導入を拡大していきましたが、実際にはferret Oneの機能を十分に使いこなしていただくことが出来ないお客様も多かったんです。つまりまだ完全にPMF(Product Market Fit)していない状況下で導入の拡大を進めていることがチャーンの大きな要因となっていました。一方で、BtoB領域のお客様はしっかりとferret Oneを使いこなし、そして成果を出していることが見えてきたので、2年前くらいからBtoB企業に改めて特化しています。その結果チャーンは大幅に改善し、MRR(月次経常収益)は年率200%で成長を続けるようになりました。

 

◎今回コロナウイルスで影響を受ける企業が多い中でSaaS事業では恩恵もあったと思いますがどうでしたか?

そうですね。コロナ禍によるデジタルシフト化の後押しもあり、ferret Oneにも確実に追い風になっています。日本のBtoB領域ではまだまだマーケティング部を持っている企業が少なく、ほとんどはセールス部がリストを作成して架電するというアウトバンド施策や、大規模な展示会に行って周りを通りがかった人と名刺交換をする、といった営業手法を取っています。ただご存知の通り、今のリモートワーク中心の働き方では例え架電しても繋がりにくくなっていますし、展示会に関してはそもそも開催が難しくなっています。いわゆるBtoB企業の旧来のアナログな顧客獲得手法が立ち行かなくなり、困っている企業様が本当に増えています。今後はWebマーケティングもやった方がいいのかもしれないがやり方が分からない、社内にも分かる人材がいないという状況の企業様から多くのお問い合わせを受けています。

 

◎こういったツール系だと導入時にCS(カスタマーサクセス)が深くはいらないケースもありますが、御社の場合だとかなり深く入るんですね。

はい、CSが入ってお客様に伴走し、お客様自身で自律的に成果が出せる状態になることを目指しています。伴走する際には当然知識がなければなりません。そのためこれまで1,000社を超える企業のマーケティング支援してきたノウハウを「BtoBグロースステップ」という数百枚のスライドに体系立ててまとめています。これを熟知することで、CSメンバー間での知識差も無くし、どのような業界のお客様であっても、成果を出すための支援が誰でも対応できるようにしています。

 

世の中のSaaSの多くは業務を効率化するものが主流だと思っています。例えば、SmartHRさんだと労務の方は「労務手続きを紙で行っている」「年末調整をこのフローで行っている」という通常業務の部分をツールを使うことで効率化できたり、データを蓄積できたりという文脈です。

 

しかし、ferret Oneの領域である「BtoBマーケティング」は本当は必要だけれどそもそも取り組んでいないケースが多く、既存の業務プロセスがあってそれを効率化する手前の問題。だからferret Oneの場合は、まずはBtoBマーケティングをこういう手順でやりましょうということを前述の「BtoBグロースステップ」を軸に型としてこちらから提示し、その上でその型を実行するための最適なツールとしてオールインワン型のferret Oneをセットで提供しています。

 

繰り返しになりますが、ただツールを渡して効率化してくださいという事だと我々の取り組んでいる領域においてはそもそもやり方がわからないのでPDCAが回せません。プロセスが各社それぞれで固まり切っていないマーケティングやセールスの領域において、我々が型となるものを提示し、その上で誰もがノーコードで簡単に使えるSaaSを提供しお客様が自走して施策を講じることができる状態を作っていいくことで、我々のミッションである「Webマーケティングの大衆化」の世界を実現してきたいと思っています。

 

◎資金調達に至るまでの経緯を教えてください。

ベーシックは創業当初から比較メディア事業を運営していたのですが、メディア事業側で十分な売上と利益が出ていたので、新規事業であるSaaS事業に対しては、その利益から投資を行っていました。これはポートフォリオ経営としてはある意味正しい一つの姿なのですが、結果的に比較メディア事業側には人や予算の投資を行うことが出来ず、もっとサービスを磨いたり、お客様に新しいサービスを提供したいという思いを叶えてあげられない状況でもありました。

 

そこで今回の資金調達に先立ち、どの会社なら比較メディア事業を伸ばしてくれるのか、中にいるメンバーも成長実感を持ちながらも事業として伸びていくのかを踏まえて事業譲渡を検討しました。結果的に僕のリクルート時代の同期である平尾さんが代表を務めている株式会社じげん様に2020年に事業を譲渡しています。

 

この事業譲渡のキャッシュも用いながら順調にSaaS事業を伸ばしてきましたが、比較メディア事業の譲渡に伴うSaaS領域への一本化の結果、想定を上まるペースで事業が拡大し、今回改めて資金調達を行い、より投資を加速させるという判断を行いました。

参考:創業事業からのピボットでデジタルセールスSaaSへ舵を切ったベーシックが総額11億円の資金調達を実施

 

◎今後の事業の展開に関して教えてください。

世の中には人の情熱や創造性を妨げる問題が世の中の様々な業務プロセスにおいて多く発生していると思っています。それをマーケティングとテクノロジーの力で一つ一つ解決していくのがベーシックとしての使命です。今回お伝えしたように、目下は特にBtoB取引の領域における負の解消に取り組んでいきます。様々な業種・業態のBtoBの企業と日々お話させていただく中で、日本には、多くの人がまだ知らない、素晴らしい会社・事業・サービスがあることを本当に実感しています。素晴らしい会社やサービスがあるのに、見つからない情報、出会えない機会、非効率な活動。それらをferret Oneにより解決していき、350兆円あると言われるこの巨大な産業の可能性を解放することで、この国とこの国の産業を強くしていきたいと本気で思っています。その実現のために行うのが我々がミッションとして掲げている「Webマーケティングの大衆化」です。

 

ferret Oneはローンチして数年が経過し、累計導入企業数は1,000社を突破しています。しかし、大衆化というのであれば、1万社をどれだけ短い期間で出来るかが次の挑戦になってくると思っていますし、350兆円という市場の開放のためにはさらに上を目指さなければいけません。

 

BtoBマーケティングが広がっていくと、BtoBにおいては現状まだ多くはないマーケティング部を持つ企業が増えていき、そうすると今ですら足りないBtoBのマーケターをどうやって充足させるのかという問題が出てきます。将来的には、BtoBマーケティングをきちんと教えるアカデミーや資格制度を作り、その資格を取れた人たちが色んな企業様に副業みたいな形で入り成果をだしていく仕組みも作っていきたいと考えています。例えば、ferret One上からクリック一つで優秀なマーケターのシェアリングを実現するようなサービスをゆくゆくは作っていきたいですね。そのような働き方の自由度が高い世界の実現こそ、ベーシックへのジョイン当初思い描いていた副業プラットフォームの事業構想ともいよいよ繋がっていくと考えています。

 

これらの目指す世界に共感いただいた方はぜひお声がけいただけると嬉しいです!

 

-本日インタビューした株式会社ベーシック様の情報‐

会社HP:https://basicinc.jp/

採用HP:https://recruit.basicinc.jp/

ferret One:https://ferret-one.com/

formrun:https://form.run/home

ferret:https://ferret-plus.com/