介護業界における業務効率化の方法とは?アイデアや事例も解説!

介護職員の人手不足は、介護業界が抱える深刻な問題です。今後も要介護者が増えることをを考えると、対策が必要なのは言うまでもありません。

そこで介護業界では、業務の効率化を図るため各事業所でさまざまな工夫を施しています。この記事では、人手不足を抱える事業者の方たちのために、介護業務を効率化する方法と実例をいくつか紹介します。

業務効率化のために何をすればわからない方や、自分たちから事業者へ具体的な提案をしたい介護職の方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

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介護業務の効率化は可能?

介護業務の効率化は十分可能です。

介護業務は利用者たちの介護のほか、膨大な量の事務作業もあります。事務作業にかかる時間と手間が多い分、簡略化できれば介護職員の負担を大幅に軽減できます。

ここからは、以下に沿って介護業務の効率化について説明します。

  • そもそも介護業務の効率化とは?
  • 介護業界の抱える問題
  • 介護業務の効率化を目指す理由

 

そもそも介護業務の効率化とは?

介護業務の効率化とは、「介護業務にかかる負担を軽減すること」で、介護サービスの質の向上や労務環境の改善、介護人材の確保を目的とした取り組みです。

具体的に各事業所でおこなわれている介護業務効率化には、以下のものがあります。

  • 職員全員が情報を共有し、チームプレイを強化する
  • 職員1人ひとりの士気を上げる取り組み(マニュアル作成など)
  • 事務作業(介護記録業務やシフト作成など)をICT化する

特に介護職員が負担に感じがちな事務作業はICTによってペーパーレス化すると作業工程を大幅にカットできるので、ICTを導入する事業所が増えています。

ここまで本格的な効率化を図るのには、介護業界が抱える深刻な問題があるからです。

 

介護業界の抱える問題

介護業界では、要介護者の増加と介護職員の不足の問題を抱えています。

職員を対象とした調査では「介護職員の過不足の状況」について質問したところ、不足と感じている方は60%以上。また「労働条件の悩み・不安」については、人手が足りないと答えた方が50%以上を占める結果となりました。

厚生労働省によると、団塊の世代が75歳に達し後期高齢者となる2025年には、介護職員が約38万人不足する見通しです。

職員の人手不足は介護の質の低下にもつながります。人手を増やせないのであれば、早急な業務効率化が求められます。

介護業務の効率化を目指す理由

介護業務の効率化は職員の負担を軽減し、利用者に対する介護の時間を増やしてよりサポート体制を強化することを目的としています。

職員は目が届きやすくなり、利用者の変化にいち早く気付けたり予期せぬ事態にもすぐに対応できます。

 

介護業務効率化の目標設定

介護業務効率化を図る前に、どこまでの効率アップを目標にするか決めておきましょう。目標のないまま実践すると「業務効率化の達成度」が分からなくなる恐れがあるからです。

特にICT化をサポートするツールを利用する場合は、必要な機能・サービスによってプランが選べるので、目標を立てておいたほうがスムーズに作業へと移れます。

目標を掲げることは介護サービスの質と利用者の満足度を高めるだけでなく、職員の就労意欲の向上にもつながります。

そのため、目標を設定する際は、事業者が独断で決めるのではなく、職員1人ひとりの意見を参考にすると良いです。

利用者に対する接遇や職員同士の連携方法、事故防止策、業務効率化などさまざまな意見が出てくるとはずなので、それらの意見をもとに適切な目標を設定しましょう。

 

介護業務改善のためのアイデア5選

介護業務を改善するために現場で行っている取り組みを5つ紹介します。

  1. 介護記録業務のICT化
  2. 介護職員のスキルアップ
  3. 介護職員の意識向上
  4. チームプレイの強化
  5. 隙間時間の有効活用

 

1.介護記録業務のICT化

介護施設では、介護保険法により介護記録などが義務付けられています。

介護記録は利用者の体調管理だけでなく、職員同士の情報を共有する際にも活用されるので、チーム連携が重要な介護の現場では介護記録の作成は欠かせない業務の1つです。

しかし、紙媒体での記録作成は時間と手間がかかるため、多くの職員は負担に感じています。実際、このような事務作業の負担が大きく、介護職から離れる方も少なくありません。

そこで、介護記録業務をICT活用することで、職員の負担軽減を図っています

例えば、血圧や体温の記録は紙媒体の場合はメモ書きした後に、介護記録に記すといったように二度手間でしたが、ICT化にすると測定と同時に記録システムにデータを飛ばすだけで完了できます。

介護記録業務にかかる時間を短縮できれば、介護に専念しやすくなります。

 

2.介護職員のスキルアップ

介護職員は1日のなかで食事や入浴、排泄の介助、清拭、おむつ交換、ベッドから車椅子に移動などさまざまな業務をこなしています。

職員全員がテキパキ行動できれば良いですが、できる人とできない人がいて現実はそう甘くはありません。そこで介護職員1人ひとりのスキルアップが、介護業務効率化につながると考えられました。

大分県の公益財団法人 介護労働安定センターでは、介護業務効率化について話し合ったところ介護技術の統一が図れていないことが分かりました。

原因として考えられたのは、介護マニュアルの分かりづらさです。マニュアルは初めて介護に携わる職員には理解しづらい部分が多く、あまり活用されていませんでした。

介護技術の統一化やスキルアップを目指すため、マニュアルを改訂したり、定期的に研修が開かれたりしています。

 

3.介護職員の意識向上

介護職員が意識を高く持つことで利用者の変化に気付きやすくなり、不測の事態に備えられるようになります。

ここで重要なのは今後起きるかもしれない事態を先読みすることです。

例えば、下剤を服用した利用者の入浴介助をする際、「もしかしたら粗相をするかもしれない…」と予測しておけば、湯船には入らずシャワー浴に変えるでしょう。

万が一、粗相をしたとしても焦らず対応できますし、事前に予測しておけば時間をかけずに対処可能です。

常に先読みすることを意識すれば、作業の負担減につながります。

 

4.チームプレイの強化

介護業界では早番・遅番・夜勤など、交代制度を導入して24時間利用者を見守っている施設がほとんどです。そのため、1日に何度も引き継ぎが行われます。

業務効率化を図るためには、引き継ぎされる人にどのような情報を共有すると良いのか、引き継ぎする人は考えなければいけません。

例えば、トイレ介助が必要な利用者がいる場合「いつもより多く水を飲んだから、トイレの声掛けは早めが良い」といったように、その場にいなければ分からない情報を共有することで、後工程がスムーズになります。

こまめな情報共有は職員同士の会話も増えるので、職場の雰囲気も良くなるでしょう。

 

5.すきま時間の有効活用

次の仕事に取り掛かるまでにできる5分ほどのすきま時間。たった5分でも石けんの補充や在庫確認、簡単な書類作成など、さまざまな作業ができます

また、すきま時間を作ることを意識し始めると、他の作業も早くなり、介護業務の効率アップにつながります。

 

介護業務効率化による改善事例3選

介護業務効率化をしたことで改善された事例を3つ紹介します。

  1. デイサービス業務の改善事例
  2. 介護記録業務のICT活用
  3. Carepaletteの活用による効率化

具体的にどのような問題点が解決できたのでしょうか。

 

1.デイサービス業務の改善事例

デイサービス業務には利用者の送迎もあり、目が届かない分、急なトラブルが発生しても早急に対応できないことがほとんどです。

万が一トラブルが発生した時、管理者に伝わるまで早くても30分以上かかっていました

そこで業務効率化のために導入したのが、職員同士のやり取りをPC上でリアルタイムにテキスト化できるツールです。

このツールを導入することで、自宅で利用者が倒れていた、送迎の途中で交通事故に遭った、という時に現場で何が起こっているのかリアルタイムに把握できます。

すると、早急かつ適切な対応が可能となり、職員や利用者がより安心して過ごせるようになりました。

 

2.介護記録業務のICT活用

介護現場では事務作業の効率の悪さが課題となっています。

特に毎日の介護記録は転記作業が多く、勤務時間内に終わらず大きな負担に感じている職員は少なくないはずです。

そこで介護記録業務をICT活用することで、作業時間の大幅な削減が実現されています。

例えば、紙媒体で介護記録をつけると看護記録やデイサービス日誌など、複数の記録作成が必要ですが、ICT活用すると重複した作業がなくなります。

また請求業務では、記録データと連動すると単純入力の作業がなくなり、記録業務にかかる時間を大幅にカット。

実際にICT活用した事業所では、法人全体で月あたり約179時間の業務時間の削減に成功しています。

 

3.Carepaletteの活用による効率化

訪問介護と障害福祉サービスを行う事業者がCarepaletteを活用したことで、事務作業の負担が軽減した事例です。

従来は、訪問介護のみシステムで管理しており、システムに対応していない障がい福祉サービスはExcelで別々に管理していました。

Carepaletteを導入したことで、介護と障がいのスケジュール管理を一体化することができ、見やすくなりました。

また、老人ホームの業務記録については一括入力をベースにしており、感覚的ですが事務作業は従来の5割減といったところです。

システム化したことで事務負担が軽減され、以前よりも利用者に対応する時間を確保できるようになりました。

 

まとめ:介護業務効率化は介護職員と利用者どちらにもメリットがある!

介護業務効率化は、職員の負担を減らすことのみを目的にしているわけではありません。業務を効率よく回すことで介護の質の向上も見込むことができます。

介護の現場では、利用者が急に体調を崩したり徘徊したり、予期せぬことが起こりがちです。職員同士の連携がうまく取れず対応が遅れてしまうと、命に関わる恐れもあります。

業務効率化によって、介護の現場で抱えるさまざまな問題が解決されれば、利用者もより安心して介護サービスを受けられるようになります。

すると、職員自身も仕事の負担が減り、気持ちに余裕が生まれるでしょう。介護業務の効率化は積極的に進めるようにしましょう

 

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