ビジネスシーンでよく聞く「業務効率化」という言葉ですが、具体的な意味を理解していない人もいるのではないでしょうか。また、業務効率化については把握していても、業務効率化の方法や目標設定の仕方などがわからない人もいるかもしれません。
今回は、業務効率化の意味や方法、目標の立て方などを説明します。業務効率化を成功させるポイントや成功事例もご紹介。記事の内容をヒントに、自社の業務効率化について考えてみてください。
目次
業務効率化とは何か?
働き方改革や人手不足などによって、多くの企業で業務効率化が推進されています。実際に、業務効率化のプロジェクトチームに参加する人もいるでしょう。
しかし、そもそも業務効率化の意味が理解できていないと、取り組みようがありません。まずは、業務効率化の意味や目標としている到達点を理解しておきましょう。
また、業務効率化と混同されやすい「生産性向上」と「業務効率化」の違いや共通点についても解説します。
業務効率化とは
業務効率化とは、業務全体の流れのなか隠れたムダな作業や負担、その場しのぎの対応などを削減することです。要は、業務がよりスムーズに進むように改善することを指します。
個人の業務効率を上げるだけでは不十分です。複数の人が関わる業務において、それぞれの担当者の業務内容を把握し、無理やムダがないかを洗い出して改善する必要があります。そのため、ときには部署全体、企業全体で業務効率化に取り組まなくてはなりません。
業務効率化の目標
業務効率化の目標は、業務における無理やムダ・その場しのぎの対応をなくし、以下のようなメリットを得ることです。
- ムダな作業を減らし、時間的・人的・金銭的コストを削減する
- 従業員の負担を減らして満足度を上げ、離職率を下げる
- その場しのぎの対応をやめて業務フローを作成し、業務の品質を一定に保つ
ムダな作業が多く、ひとつの業務に長い時間を要したり、より多くの人手を必要としたりすると人件費などのコストが上がります。
また、残業が多いなどの理由で従業員の満足度が下がり、離職する人が増えると、新たに人を雇うためのコストがかかります。さらに、頻繁に人が入れ替わることで業務の質も下がってしまうでしょう。
業務フローがなく、その場しのぎの対応をしていると、担当者ごとに成果物のクオリティが異なり、顧客の不満につながることもあります。業務効率化によって、こうした問題を解決することを目指しましょう。
業務効率化で生産性の向上は可能?
「業務効率化」と「生産性向上」は、似て非なるものです。業務効率化は業務上のムダをなくしてコストを削減する取り組み、手段そのものを指しています。一方、生産性向上は、できるだけ少ない時間的・人的・金銭的コストで、より大きな成果を得ることを意味するものです。
とはいえ、業務効率化を行うことで社員が働きやすくなり、コストが削減されます。結果として企業の業績が上がれば、生産性が向上したとも捉えられるでしょう。業務効率化と生産性向上は違う意味ですが、業務効率化は生産性向上の手段になり得るのです。
業務効率化の方法
業務効率化は、以下のような流れで進めていきます。
- 部署や企業全体の業務内容を可視化する
- どの業務を効率化すべきかを決定する
- 業務効率化の目標を設定する
- 目標達成の障害となる、無理・ムダな作業を洗い出す
- 洗い出した問題点の改善案を考える
- 改善案を実行する
- 実行結果をもとに、改善案の内容を評価する
- 改善案に問題点がある場合は、新たな改善案を考える
- 新たな改善案の実行・評価を、目標達成まで繰り返す
こうして文字に起こしてみると簡単そうに見えますが、すでに社内で定着している作業をなくしたり、新たな業務フローを取り入れたりするのは大変な作業です。
そのため、しっかりと目標を立て、改善案をどのように導入するかを考えておかなくてはなりません。
業務効率化の目標設定の方法
業務効率化の目標を設定する際には、まず、部署や企業全体の業務内容を可視化することから始めます。
以下の項目を細かく洗い出しましょう。
- どこでどんな業務が行われているのか
- 誰が担当しているのか
- 業務フローはどうなっているのか
- どれくらいのペースで発生する業務なのか
業務内容を可視化すると、以下のような問題点が見えてくるはずです。
- 単純作業なのに担当者が多すぎる
- ほぼ毎日発生する業務なのに業務フローができていない
- やたらと残業が多い部署がある
しかし、問題がある業務を同時進行で効率化していくことは難しいため、その中でも特に効率化を優先すべき業務を選択します。
そして、下記のような目標を立てていきましょう。
- 各部署の業務内容や担当者の意見をもとに、どの業務の効率化を優先するか
- 目的はコスト削減か従業員の負担軽減か
- いつまでに完了させるか
従業員にヒアリングを
業務効率化の目標を設定するときには、実際にその業務を担当している従業員にヒアリングすることも重要です。
- 外部から見ると担当者が多すぎる
- 非効率な作業をしていると感じても、実際にはボリュームが大きな業務でむしろ人手不足
- 専門的な業務で決まった手順でないと進められない
こうした内部事情を考慮せず、一方的に業務効率化を進めると効率化するはずがかえって非効率になってしまったということにもなりかねません。さらに、従業員からの不満も出やすくなります。また、従業員が持つ懸念点や改善点を確認すれば、業務効率化の改善案のヒントになるでしょう。
業務効率化を社内に導入する方法
業務効率化を導入するときには、スムーズに効率化を進められるように計画書を作成しましょう。計画書には業務効率化の目標や目標の妨げになるものは何か、いつまでにどのように改善するかをくわしく記載しておきます。
- 業務効率化開始時期が繁忙期に重なっていないか
- 対象の部署が人手不足ではないか
- 改善案を実施するためのスキルはあるか
上記の点も確認することが大切です。
そして、定期的に計画書と実際の進捗状況を比較して、順調に進んでいるかチェックを行いましょう。
仮に計画どおりに進んでいなくても、どうして計画どおりに進められないのかと叱責するのではなく、従業員にヒアリングしてみてください。
そもそも、計画に無理があるのかもしれませんし、導入したツールが業務に合っていないなどの可能性もあります。現場の声を聞き入れて、改善案をブラッシュアップし、業務効率化の目標達成まで継続的に取り組める環境を作っていきましょう。
業務効率化を目指す上で数値化は重要?
業務効率化を目指すときに、各業務を数値化することは非常に重要です。数値化しないと客観的な判断がしづらくなるためです。
たとえば、ある部署のヒアリングでAさんから「Bさんはいつも暇そうで、自分ばかり忙しい」という不満が出たとしましょう。この不満をそのまま受け取ると、Bさんが仕事をしていないということなります。
しかし、業務を数値化してみると、AさんとBさんに割り振られた仕事量は同じで、Bさんが効率的に仕事をこなしているだけということもあるのです。
もし、Aさんの主観を鵜吞みにしてBさんを叱責したり、配置換えしたりすれば、Bさんという効率的に仕事をこなす優秀な人を失うかもしれません。
また、業務を数値化しておけば、改善案実施前より何分作業にかかる時間が短くなったか、作業時間は減ったがミスが増えていないかなどの検証もしやすくなります。
業務効率化のアイデア9選
ここでは、業務効率化のアイデアを9つご紹介します。業務効率化の方法にはいろいろありますが、以下のような方法であれば、どの職場でも取り入れやすく、すぐにでも実践できるでしょう。
業務や会議の削減
- 業務フロー・マニュアルの作成
- タイマーの使用
- デスクや棚などの配置換え
- 書類の電子化
- パソコンのショートカットの活用
- また、以下のような方法は時間やコストがかかるものの、業務効率化の促進に大きく役立ちます。
- ツール・システムの導入
- 作業の自動化
- 従業員の配置転換
それぞれの方法について、くわしく解説していきます。
1.業務や会議の削減
業務効率化の際にまず行いたいのが、ムダな業務や会議の削減です。
- 念のためにと会議に必要ない資料を作成する
- パソコンが苦手な人のためにと電子化された書類をコピーする
- お茶くみ当番が全社員のお茶を入れる
- これまでの慣習だからと誰も確認しない日報を提出させる
上記は一例ですが、このようなムダな作業を省くだけで、本来の業務に回す時間が増えるのです。また、会議中は通常業務から抜けることになりますし、会議のための資料作成や会議室の準備などに何かと時間がかかります。
ちょっとした相談や進捗報告程度のことは、メールやコミュニケーションツールを使って済ませるなどして、会議の回数を減らすだけでも業務効率化につながるでしょう。
業務や会議を削減するのがむずかしい場合は、会議や面接をオンラインで済ませて移動時間を短縮する、自販機を設置するなど、ルールを変えたり設備を整えたりするだけでも効果があります。
2.業務フロー・マニュアルの作成
業務フローやマニュアルの作成も、業務効率化に効果的な方法です。発生頻度が少ない業務だからとマニュアルなどを用意していないと、たまにその業務が発生したときに手順の確認や作業に余計な時間がかかります。
もし、長年同じ人が担当しているなどで業務フローがない場合、担当者が休んだり退職したりした場合に業務が滞ってしまうでしょう。
しかし、わかりやすい業務フローやマニュアルが用意されていれば、毎回確認に手間取ったり担当者不在で業務がストップしたりすることを防げるのです。業務フローがあれば、常に業務の全体の流れが把握できるため、より効率的な方法はないかを考えることにも役立ちます。
3.タイマーの使用
納期がない業務にあたっていると、時間配分に意識がいかなかったり、集中力が切れてダラダラと作業してしまったりしがちです。そこにタイマーやアラート機能などを利用して時間制限を設けると、時間内に作業を終える方法を考えるようになり、目の前の作業に集中しやすくなります。
また、業務が長引くと疲れて効率が落ちてきますが、一定時間ごとにタイマーを鳴らして休憩を取れば、リフレッシュできて作業効率が上がるでしょう。タイマーの音が鳴るとほかの従業員の集中力を削いでしまうかもしれないと気になる場合は、通知音をOFFにするなど、音が鳴らない方法を考えてみてください。
4.デスクや棚などの配置換え
デスクや棚などを、動線や環境に配慮した場所に移動するのもおすすめの方法です。たとえば、備品棚が備品を1番必要とする部署から遠い場所にあると、デスクと棚を行き来するだけでも時間のロスになります。
もし、オフィスの出入口近くにデスクがあると、人の出入りで集中できず作業効率が落ちやすくなります。従業員にヒアリングする際に、オフィスのレイアウトで不便なことはないか、集中できているかについても確認し、必要であれば配置換えを行いましょう。
また、配置換えだけでなく整理整頓も大切です。オフィスが散らかっていると必要なものを探すのに時間がかかったり、他の従業員に聞きに行って作業を中断させたりすることがあります。
オフィス内を整理し、どこに何があるのか誰でもわかるようにラベルを貼るなどすれば、探しものにかかる時間を削減することが可能です。
5.書類の電子化
業務効率化を目指すのであれば、書類を電子化することも検討してみましょう。とくに業務フローやマニュアル、会議用の資料などの電子化はおすすめです。これらの書類を電子化しておけば、研修や会議のたびに人数分コピーを取ってホッチキスで留めるという作業を削減できます。
また、稟議書を電子化して電子印鑑を押印するようにすれば、決裁印をもらうために上司のデスクを回る必要がなくなるため、効率良く回覧を済ませることが可能です。書類が電子化されていると、外回り中やリモートワーク中でも、必要な書類を手軽に共有できるというメリットもあります。
6.パソコンのショートカットの活用
パソコンを使う業務では、ショートカットキーやショートカットアイコンを活用すると作業効率がアップします。
「ショートカットなんて誰でも使っているのでは」と思うかもしれませんが、パソコンのスキルは人によって大きく違うものです。ショートカットを使いこなせない人もいるため、ショートカットの一覧表を作成して共有するなどして従業員のスキルアップを図りましょう。
入力作業の多い部署では、よく使うワードを単語登録(辞書登録)する、書類のテンプレートを作成しておくといったことも有効です。
また、デスクトップやメールボックス、ファイルなどが整理できていないと、必要な情報を得るのに時間がかかります。デスクトップを整理する、メールの確認・削除の手順をルール化する、ファイル名を統一するなどの方法も試してみるとよいでしょう。
7.ツール・システムの導入
業務効率化を大きく前進させたいのであれば、新たなツールやシステムの導入も考えてみましょう。最近は、プロジェクト管理ツールや営業支援システム、コミュニケーションツールなど、業務効率化に役立つたくさんのツールが提供されています。
出退勤管理や情報共有、社内の施設予約など、さまざまな機能を備えたマルチツールもあるので、役に立ちそうなツールをピックアップして試してみましょう。
ツールやシステムのなかには、無料で配布や、無料のお試し期間が設定されているものもあります。なるべくコストをかけたくないという場合は、まずは無料のものから試してみるとよいでしょう。
8.作業の自動化
データ入力や問い合わせの一次対応などを自動化することも、業務効率化の推進に役立ちます。
たとえば、毎日必ず行うデータ入力があるとして、手作業で入力しているためかなりの時間がかかっているとしましょう。これをエクセルのマクロを組んで自動化すれば、入力作業にかかる時間を大幅に削減できますし、単純な計算ミス、入力ミスを防げるというメリットも得られます。
定型文で回答できる問い合わせを、プログラムが自動で返信するようにしておくことをおすすめします。1件1件返信文を考えて送信する作業を削減できるので、問い合わせ担当者の負担を軽減できるでしょう。
単純な繰り返し作業は自動化できる可能性が高いので、業務効率化の改善案を考えるときに「自動化できないか」ということも意識してみてください。
9.従業員の配置転換
従業員を得手不得手やスキル、希望などを考慮した業務に配置転換すると、業務効率化が飛躍的に進む可能性があります。
飲食店を例に考えてみましょう。料理が得意で接客が苦手なAさんと、接客が得意で料理未経験のBさんがいるとします。この場合、Aさんをキッチン業務に、Bさんをホールでの接客業務に配置した方が、業務がスムーズに進むはずです。
同じようにどの業務であっても、その業務が得意な人を担当者にしたほうがより効率的に進みますし、従業員の負担が減ってモチベーションも上がります。
企業側としては「マルチな人材が欲しい」「希望の業務を担当するには、先に別の業務を覚えてもらう必要がある」などの事情もあるでしょう。また、ひとつの業務に従業員が偏ってしまうなどの問題が出ることもあるため、配置転換するとよい方向に進みそうな人を見極めることが大切です。
業務効率化を成功させる5つのポイント
業務効率化は、やみくもに進めると「かえって業務に時間がかかるようになった」「離職者が増えた」など、逆効果になる可能性もあります。このような事態を防ぐためには、以下のポイントを押さえて業務効率化を進めることが大切です。
- 少しずつ進める
- ミスを共有・活用する
- 従業員への周知を徹底する
- 現場の意見を取り入れる
- 継続する
各ポイントの具体的な内容を見ていきましょう。
1.少しずつ進める
業務に問題点があるとわかったら、できる限り早く改善したいと思うでしょう。しかし、業務効率化を成功させたいのであれば、急がずに少しずつ進めることが重要です。早く効率化しようと強引に話を進めたり、たくさんの改善案を同時進行で進めたりすると、現場がついていけなくなってしまいます。
すると、今までよりも業務に時間がかかるようになったり、従業員の不満が募って離職者が増えたりする可能性が高まります。改善案が多数ある場合は、優先順位をつけてひとつずつ変えていきましょう。
定期的に従業員と面談して、業務効率化についていけているかを確認し、難しそうであれば個別に研修を行うなどフォローを徹底することも大切です。
2.ミスを共有・活用する
業務効率化を進めるなかで何らかのミスが発生した場合は、ミスを咎めるのではなく、今後に生かすことが大切です。ミスを責めるだけで終わると、また同じミスが繰り返されたり、ミスを隠すようになったりします。
まずは、ミスが起きたときに報告しやすい環境を整えることが重要です。そして、どうすればミスが発生しないか改善策を考え従業員に共有することで、よりスムーズに業務が進むようになります。
3.従業員への周知を徹底する
業務効率化を行うということは、慣れている方法を止めて新しい方法を実践するということです。そのため、どうしても初めのうちは従業員に負担がかかり、不満が出やすくなります。
不満が積もり積もって従業員が一斉退職などという事態になったら、業務効率化どころではありません。なぜ業務効率化が必要なのか、目的や期間、方法などを明確にして従業員にしっかり周知し、理解を得ておきましょう。
このとき、業務効率化の対象となった部署だけでなく、社内全体に周知することが大切です。業務効率化を始めたばかりのときは、慣れない作業によって一時的に作業効率が落ちることがあります。
その際、他部署の従業員が業務効率化の対象になっていることを知らないと「あの部署は何をやっているのか」と不満が出て、部署間の対立が起こる可能性があるのです。あらかじめ業務効率化について全従業員に周知しておけば、このような無用なトラブルを防ぎやすくなります。
4.現場の意見を取り入れる
どれだけ綿密な計画を練っても、いざ業務に取り入れてみたら、やり方が合わなかったということはあるものです。改善案に取り組んだ従業員にヒアリングを行い、業務効率化によって前よりも業務が進めやすくなったか、困っていることはないかを確認してみましょう。
もし「導入したツールが使いにくい」「以前の手順のほうがスムーズだった」などの意見が出た場合は積極的に聞き入れ、新たな改善案を作るヒントにしてください。
5.継続する
業務効率化は、1度目標を達成したら終わりではありません。改善案のなかにムダが隠れていたり、よりよいツールが登場したりすることもあるため、継続して業務効率化に取り組むことが重要です。
また、業務効率化によって一時的に新たなやり方が取り入れられたものの、いつの間にか昔のやり方に戻っていることもあります。知らないうちに非効率的な方法に戻っていたということがないように、定期的に経過を確認してみましょう。
業務効率化の成功事例5選
業務効率化について、他社はどのように取り組んでいるのか、どのような成果が得られたのかが気になる人もいるでしょう。そこで、厚生労働省発表の「2018年 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」から、業務効率化に成功した事例を5つご紹介します。
美容や介護、建設業などさまざまな業種の会社の事例を掲載しているので、ぜひ取り入れられそうな方法がないかチェックしてみてください。
1.株式会社ハクブンの事例
美容室チェーンの管理・運営を行う株式会社ハクブンでは、以下の方法によって業務効率化を実現しています。
- 全国均一で短時間、高品質なサービスが提供できるよう作業をマニュアル化
- 従来の時間外マンツーマン指導を動画化した技術マニュアルで補完することで、接客の合間に自己訓練できるよう環境整備
- 新たな給与体系を導入することで積極的にほかの従業員のサポートに入るよう促し、業務を効率化
- 全店のレジを交換し、会計や発注作業などを効率化
- シャンプー台やハサミなどを自社開発し、多店舗展開を効率化
このような取り組みによって、回転率が上がり、短時間で得られる利益が大きくなったなどの成果が出ています。午前中の1時間あたりの来店数が1.8倍にアップした事例もあるのです。
また、時間外の指導を減らし、希望地転勤制度を導入して時短勤務や再雇用率を上げることで、離職率を下げることにつなげています。
2.リベラル株式会社の事例
OA・通信機器販売事業などを営んでいるリベラル株式会社では、積極的に障がい者を雇用しているのですが、以下のような方法によって業務を効率化しています。
- 障がい者を正社員雇用することでモチベーションを向上し、職場定着率を上げる
- 障がい者の特性に合わせた多数のマニュアルを作成し、障がい者が障がい者に業務を指導できる環境を整備
このような「会社が社員に合わせる」を方針とした方法で、特例子会社でありながら売上の75%が外部売上という成果を達成しています。
3.株式会社YKAの事例
株式会社YKAは以下のような手法で、介護事業の業務効率化を図っています。
- IT環境を整備して、介護の方法や利用者情報などの情報を動画で共有することで引継ぎミスを防ぐ
- 事務担当者を雇い、介護職員の事務作業の負担を減らすことで、最少人数での業務運営を実現
- 新入社員の指導や定期面談を実施し、人材定着率をアップ
特定の従業員だけが知っている情報があると、その従業員がいないときに業務がスムーズに進まなくなります。それを株式会社YKAでは、動画で共有するという試みで改善しているのです。
また、IT環境や社員が本来の業務に集中できる環境を整えることで、業務を効率化してコスト削減を実現しています。
4.株式会社協和工業の事例
建物の解体や廃棄物処理などを行っている株式会社協和工業では、業務効率化のために以下のような方法を実践しています。
- 有資格者を多数養成し、業務に必要な機械を使いこなせる人材を育成
- 生産管理システム、生産計画システムを導入し、各工程の進捗を見える化することで残業時間を大幅に削減
- 賃金制度や評価制度を改正し、「何が求められているのか」を明確にすることで従業員の意識改革に成功
業務に必要な機械を使える従業員が少ないと、従業員が休職や退職した場合に業務が滞ります。資格取得を支援して有資格者を増やしておけば、そのような事態が防げますし、技術レベルの標準化も可能になるでしょう。
5.株式会社荒木組の事例
岡山県を中心に建設業を営む株式会社荒木組では、以下のような方法で業務効率化を行っています。
- 毎月3回協力会社も参加できる勉強会を無償で開くことで、荒木組社員の安全管理の負担を軽減し、労働時間を削減
- ドローンの導入で土木現場の測量作業の速度を向上
- 共通のファイルサーバーを設置して全事務所から情報にアクセスできるようにし、業務効率化を実現
- ホワイトボードで囲んだアイデアルームを設置する、デスクのスペースを拡大するなどオフィスの環境を整え、働きやすい環境を提供
自社だけでなく、協力会社の社員育成も担うことで自社の業務効率化を図るという、柔軟な発想の改善案が実施されているのが特徴です。
また、ドローンなどの機器を導入することで、これまでは20日かけていた測量作業を2日に短縮するなど、大幅な作業時間の削減を実現しています。
まとめ:自社に合った業務効率化を考えてみよう
業務効率化とは「日々の業務のなかに隠れたムダや負担、その場しのぎの対応を見つけて改善し、よりスムーズに業務を進められるようにすること」です。コスト削減や離職率の改善、業務の品質担保を目標にしています。
業務効率化の第一歩はムダな作業を削減することですが、ツールの導入や従業員の配置転換、マニュアルの作成なども効果的です。
今回紹介した以外にも、業務効率化につながる方法は多数存在します。どうすれば自社の業務がより円滑に進むかを考え、ときには従業員にヒアリングし、自社に合った業務効率化を考えてみましょう。