物を作っている人達が報われる社会を作る。 – ドレミング株式会社 代表取締役 高崎 義一

ドレミング株式会社は勤怠管理や給与計算、振込をワンストップで提供するシステム「Doreming」の開発・提供、そして、働いた分の給与をすぐに自分の口座に自分で振り込むことができるサービス「My Salary(マイサラリー)」の開発・提供を行っています。

 

「貧困格差を減らし平和で心豊かな社会を築くこと」をミッションに掲げ、発展途上国や金融難民に向けて新しい金融サービスの提供を目指し、国際的に活動している企業です。

 

2000年以前からデジタルマネーの重要さに気づき、労働者が公平に評価され、安全にお金を持てる未来を日本だけでなく世界で実現させようと活躍されている、ドレミング株式会社の代表 高崎 義一様に「システムを開発するまでの流れと、大事にされている事」を伺いました。

高崎 義一- ドレミング株式会社 代表取締役/創業者-

経歴:

熊本県出身。大阪の建築会社に就職、2年後、和食の店へ転職、板前になる。

10年後(30歳)にモスバーガーFC店を兵庫県西宮市ではじめる。

順調に事業拡大中だった1995年(38歳)阪神大震災で被災し、同年にキズナジャパン株式会社設立。

1999年に資金調達を行い日本初のASP型人事、勤怠、給与システムの開発を開始。

2002年ソフト化大賞を受賞、ソニーや沖電気にOEM提供。

2007年世界初、リアルタイム給与支給サービスを開始。

2015年福岡市にドレミング株式会社を設立。

2017年6月にはドレミングホールディングスを設立。

 

震災から立ち上げたキズナジャパン。

 

-起業するまでの経緯を教えてください。

 

元々私は30歳前に板前を10年間、その後外食チェーン店のフランチャイズ経営に10年間携わっていました。ただ、順調だった頃に阪神大震災が起き経営していた3店舗が潰れてしまい、一家心中を考えるような状況になりました。

 

そのような状況の頃に勤めていた外食チェーン店の仲間達に助けてもらいながら「キズナジャパン」という会社を立ち上げました。

 

立ち上げ後、これまでの知識や経験を活かして、仕事内容で給料が公平に評価される仕組みを作ろうと思いました。

 

「エビの殻を1 kg 剥く作業をすれば追加で200円の手当てが付く」「宅配に行ったら500円配達料がもらえる」「クレーム処理をしている時の時給は倍」というように、キツい仕事に対して手当をつける仕組みがあれば、寒い時期でも宅配に行こうと思えますし、コールセンターでクレーム処理の仕事をすることに多少は納得できますよね。

 

実際に私達が作ったサービスは宅配ピザやコールセンターの大手企業さんに利用していただいています。

 

真面目に一生懸命頑張った方が給料が上がるのであれば頑張りますし、きつい仕事と簡単な仕事が同じ時間で同じ給料というのは嫌ですよね。

 

ただ、こういった仕事の内容で給料が変わる仕組みを持つソフトを作る会社は世界で私達しかいませんでした。

 

-それは何故でしょうか?

単体で勤怠管理や給料計算が出来るソフトは何十社もありますが、勤怠と給与を繋げるためにわざわざ売っているソフトからデータを読み取り新たに利用出来るように形を変える…

という面倒な作業をする会社はいなかったからです。

 

-被災された後、どのように資金調達されましたか?

キズナジャパンは資本金が5000万円程なのですが、50人以上の方々から50万円~100万円を出していただきました。

 

その後はJR東日本の元会長の松田様から紹介していただいたJR東日本情報システムという会社の社長さんに「今日働いた分の給料を電子マネーでもらってすぐに使えるシステムを作りたい」と伝えました。

 

すると社長から「面白い事を考えますね。社長決済で1000万円まで出せるから資金調達する際にはJRと提携したと言いなさい」と言ってくださいました。

そうして三菱商事や東京電力の子会社、野村証券のベンチャーキャピタル等多くの会社が最初の資本金にプラスして4~5000万円ずつ出していただいた結果、1999年にASP型という今で言うクラウド型の人事勤怠システムを作る事が出来ました。

 

-このシステムは高崎様自ら作られたのですか?

私は作れないので「パソコンが使えない人でも使えるようにしてくれ」とエンジニアの人達に伝えシステム開発は任せていました。

 

本当は私自らコードをかければ良かったのですが、そのレベルまでは到達しなかったので、「このボタンを押したら画面に給料が出るようにしてくれ」というような、操作の仕方や仕様書を私が作るようにしていました。

 

最初にサービスを目にするお客さんが私というイメージでサービスを製作しています。

一度エンジニアではない人の目を通しているのでサービスを営業した際に営業先の皆さんから「こういうソフトが欲しかった」と共感されるまでになりました。

 

-勤怠管理や給与計算、振込をワンストップで提供するシステム「Doreming」を開発された経緯を教えてください。

 

勤怠管理や人事管理、給料計算から年末調整といった作業を単体で行えるソフトはそれぞれ何十社もあり一つ一つ月額料金がかかります。加えて自社に合うようにカスタマイズしようとすれば別途お金がかかります。

 

これはシステム会社の収益の仕組みなのですが、私はシステム会社の人間では無かったので「何故こんなにもお金が取られなければいけないのか。」「全部一つにしよう。」と考えるようになり、順番にソフトを開発し、それらを繋げていくようになった結果「Doreming」が生まれました。

 

-完成までに時間はどれぐらいかかりましたか?

10年以上です。金額にして開発費だけで20億円以上かかりました。

全てのソフトをワンストップでクラウド型で使えるようにするとなると多くのお金がかかります。

 

私達のシステムは普通だったらカスタマイズで数百万円取られるような設定を自動で出来るようにしています。

 

-作るのは本当に大変だったのではないですか?

そうですね。

様々な付帯サービスが必要になるのですが、複数の会社の技術を用いてみんなで作るようにしているので全てを私達が作成したわけではありません。

 

実際に、現在私達が連携している会社の中にはイギリスの海外送金の会社もいます。

 

世界に目を向け設立したドレミング株式会社

 

-現在の「ドレミング株式会社」を作られた経緯を教えてください。

世界には銀行口座を持っていない成人が3人に2人いるのですが、この人達を助けようという思いで2015年に「ドレミング株式会社」を作りました。

 

サンフランシスコに会社を作り、世界の選ばれた230社しか入居出来ないイギリスのビルに日本企業で初めて入れてもらい、 「Fintech100」というフィンテックにより世界の金融サービス業界に変革をもたらしているフィンテック企業を紹介するランキングレポートに選出される等、次々に世界進出していきました。

 

その後もイギリス政府によって世界銀行総会やグローバルサミットといったイベントにも招待されるまでになりました。

○ 中央銀行カンファレンスに参加した様子

○ グローバルサミット2016に招待された様子

 

世界の多くの国の方々から信頼され協力してもらえるようになったのは、安心安全で公平な社会を作る事への考え方を変えずに取り組んできた結果だと思います。

 

-国内ではどのような活動をされてきましたか?

3年程前に首相官邸に呼ばれた際には自分の経験を話しました。

「現金は泥棒強盗が生まれるので良くない。デジタルマネーで給料を払う事が出来れば、自動的に社会保険も年金も税金も取れますし、会社で発生する面倒うな作業を防げることができていい事だらけだ。」と伝えました。

 

すると、当時の財務担当大臣であった麻生さんに全面的に協力すると言っていただくことができ、その後閣議決定も行われ、給料の電子マネー払いの解禁は目の前まできています。

 

更に国内のフィンテックサミットで、金利を取らないイスラム金融を参考にしたアイデアを発表した結果、法律を変えることができました。

 

発表したアイデアは、事業をする際にお金がかかってしまう設備の内装工事・補償金を全て銀行が負担した上で事業者を募集します。その後事業は事業者に任せます。この際に電子マネーで給料を振り込めるようになっていれば、銀行側が用意した店舗で働いている卸売業者・家賃・従業員、そして店舗を用意した銀行に自動でお金を分配する事が可能になります。

 

また法律改正によって、今まで銀行は事業会社への出資上限が5%だったのですが、非上場企業には銀行が100%出資出来るようになりました。つまり銀行が100%出資の子会社を作れるようになりました。

 

この法律改正により、前述したお金のかかる設備の内装工事・補償金という部分を銀行の100%子会社が請け負う事が可能となり、今後給料の電子マネー払いの解禁と組み合わされば、お金がなくても技術・志・やる気さえあれば事業を起こせるようになります。

 

実現すれば夢と希望のある社会を作れると考えています。

 

-自社のサービスで良い商品・サービスが生まれる土台を作っているのですね。

私がやることは給料を送金できるサービスだけで、どう活かすかは皆で考えればいいと思っています。

 

発展途上国等は従来のサービスでは消費税を徴収出来ないのですが、携帯電話で決済すると同時に消費税を徴収出来れば国に財源を作ることも可能になりますし、現金による汚職や泥棒、強盗が減り、治安も良くなります。

 

新しい金融サービスを起こす際にはデジタルマネーが安心安全で公平な社会が作れると確信しています。

 

-被災してから今日に至るまで軸は変わっていないですね。

そうですね。

天から授かった命を「天命」と言いますよね。

自分の仕事に誇りを持って、最終ゴールを決めてゴールに向かって一直線でやれば周りの人達も信用してくれると思っています。

 

-高崎様の最終的なゴールは何でしょうか?

「物を作っている人達が報われる社会を作る」という事です。

たった一度の人生悔いなく生きると決めて、死ぬまでに何が出来るかと考えた結果この考えが生まれました。

 

新しい事をやる人達には自分の経験と自分が社会の何を変えたいのかを考えて欲しいと思います。

金儲けだけのビジネスモデルで考えると長続きしません。やはり「社会を変えたい」「自分と同じような人達を助ける」といったビジネスモデルを考えた方が共感してくれる人が沢山出てくると思います。

 

-本日インタビューしたドレミング株式会社様の情報-


会社HP

https://www.doreming.com/ja/