今回はEC業界で頑張っているショップさんをサポートする、会員制サポートサービス、「ECマスターズクラブ」を企画、運営する日本ECサービス株式会社、代表取締役社長の清水将平様にインタビューを行いました。
ECマスターズクラブはECを使用している企業に対して、勉強会や懇親会、EC関連の質問プラットフォームを提供するサービスで、月額制で会員になることができます。
楽天市場に出店しているショップの25社に1社ほどがこのサービスを利用しており、コンサルティングを頼む余裕のない小さなショップでも参加し、売上向上を期待できる画期的なサービスです。
清水将平 ー代表取締役社長/創業者ー
経歴:インターネットのプロバイダに従事。楽天、フリービット、DTIで勤務後、2010年に独立、日本ECサービス株式会社を設立。
起業の経緯はどのようなものだったのでしょうか
サラリーマン時代は負けず嫌いだったので、どこの会社でもトップセールスとか実績を残していました。
しかし、組織で働くことよりも自分の得意分野で働きたいと感じたこと、タイミングとして子どもの成長やローンを考えた時に良いタイミングだと考えたことが大きなきっかけでした。
最初は、前職の繋がりで仕事があったので、それを個人事業としてやっていただけの感じです。
新規の事業ではなく、今までの知識を応用しての独立だったのですね。
そうですね、先輩方に「清水はハイパフォーマーで、会社にとっては重要な人材だけど、何が一番得意で、どの分野のプロフェッショナルなの?」と聞かれた時に、今までを振り返って考える機会がありました。
その時に、楽天時代に自分でセールスやマーケティングを考えて提案して、そこで結果を出すことが得意だったことに気が付いたので、この分野をさらに伸ばして行こうと考えました。なので、サラリーマンを辞める前はセールス、マーケティング、コピーライティング等をひたすら勉強しました。
ある程度自分の中で結果が出せると思えるようになったので、サラリーマン時代に感覚的、本能的にやっていたことを、再現性を持たせ、人に提供できるように言語化できたので、ECコンサルタントとして独立を決意しました。
起業するときにはすでに今のサービスを考えていたのでしょうか?
私の知り合いが別の業界で、月1万円のサブスクモデルの事業をやっていて、それをEC業界でもニーズがあり、価値を生み出せるとは考えていました。
また、コンサルティングでは、クライアントさんの20~30社しか支援できません。他にも困っているショップさんがたくさんいること、EC支援をするという名目の悪徳業者が多発していることを考え、より多くのショップさんに解決策を提供しようとした際に、月額制のサブスクをしたいと考えていました。
しかし、1~2年は人手が足りずスタートできませんでした。なので、ECコンサルタントとして、自分が対応できる数の企業の方を対象にコンサルティングしていました。
その後、2014年から現在のサービスに着手したのですが、これが実現できた理由は、事業を推し進めてくれる人材を採用できたためです。私が楽天に在籍していた時の後輩だったのですが、彼のおかげで道が開けました。
それまでも何度か採用を試みたのですが、採用には苦労しました。自己資金のみで起業したこともあり、正社員だけでなくアルバイトも募集したのですが、すぐ離職してしまったり、給与分稼いでくれなかったり…。経営者としての未熟さに気が付きました。
楽天でお勤めだった時のコンサルティングと、独立してのコンサルティングは何か違いはあるのでしょうか?
一般的なプラットフォーム運営会社のコンサルティングは、肩書がコンサルタントというだけで、単なる担当者だったり、広告営業をされたり、本当の意味でコンサルタントではありませんでした。なので、個人で活動をして、コンサルティングしていくことは全く別だと考えています。
2014年の時点ではどのようなサービスだったのですか?
サービスの内容は最初は「月額1万円で掲示板に質問し放題です」というサービスでした。要はコンサルタントを契約しなくても、1万円で掲示板でコンサルタントに質問が聞き放題ですよ、というサービスから始まっています。
その後は実際にセミナーを繰り返して、会員さんの反応を観ながらサービスを充実させてきました。
質問はどのようなものがよく来るのでしょうか?
以下のサイトから質問内容は見ていただけますが、ECに関するものであれば何でもと言っても過言ではありません。
URL:https://forum.ec-masters.net/user_post.php
最初は質問が少なかったのですが、会員数が増えるに連れ、今では連日多くの質問が来ますし、過去の質問から学んでいる会員様もいらっしゃるかと思います。
ECマスターズクラブの立ち上げで一番大変だったことは何でしたか?
ここでも一番大変だったことは人手が足りないということでした。会員数が増えると人手が足りなくなるので、半年間は会員を増やして半年間は募集を停止して、従業員を増やして…ということを繰り返していました。
会員数を増やすことには苦労をされなかったんですね。
それはダイレクトレスポンスマーケティングや、コピーライティング等を勉強したので、問題ありませんでした。初期投資だと考えて、お金を払ってすごい人から直接「セミナーにどう集客して、どうやって会員を増やしていくのか」について学びました。そのおかげだと考えています。
月額1万円とは言えども、会員数が増えていく中でコンサルティングをしているよりも売上が上がるようになったのでECマスターズクラブをメインにしていくことを決めました。
オンラインショッピングでショップを出している方々の課題には何があるんですか?
基本的にみんな売れない、売れても儲からないという課題を持っています。
「とりあえず楽天市場にお店出せばお客さん来るんじゃないの?」と考える人も多いのですが、そもそも集客をしなければいくら楽天市場にショップがあっても売上はあがりません。
興味があるからと資料請求をすると、すぐ営業の連絡が来て、勢いでショップを作る人もいるのですが、売れないどころか毎日色々な業者さんから怪しい営業までされてしまうのが現状です。
それに対して我々はオンラインショップに集客するためには、「こういう設定をしてこういうやりかたをしましょうね」ということをセミナーを開催して教えています。
セミナーにはどれくらいのショップさんが参加されているんですか?
コロナ禍によりセミナー会場でのセミナーが開催できなくなり、現在はオンラインにて月2〜3回開催しており、1回あたり50〜80ショップが参加されています。セミナーに参加された方の40%が入会されています。
セミナー参加から入会のパーセンテージがとても高いですね。
世の中の人はセミナーを開催することが目的になっている一方で、我々は、セミナーからの入会を目的に開催しています。セミナーからどのようにアプローチすれば不安なく入会していただけるかを、連絡手段、セミナー内容、クロージングの方法等の様々な側面で考え、どうすればいいのかを勉強していました。
ECマスターズクラブの運営をしている中で大変だったこととかはありますか?
今直面している課題はコロナですね。昔は全国でセミナーを開催して会員の方と顔を合わせて勉強をして、終了後に懇親会を開催するというコミュニティだったのですが、コロナでオンライン開催しかできないので、どうしても繋がりが薄くなってしまっています。そうするとサービスの継続率も低くなってしまいます。
昔は入会して、勉強会に来て先輩や同士と仲良くなって一緒に頑張るという繋がりが持てていました。今は一人で参加して、新しい繋がりもできなくて、どうすればいいか分からず辞めてしまう人が増えています。
もちろん、オンラインでセミナーをしたり、会員専用のSNSグループを運営したり、オンライン飲み会を開催したり、できることはしています。それでも、対面に勝るものは無いと感じています。
他にサブスクリプションモデルのサービスを始めてから取り組んだことはありますか?
取締役が3名に増えたタイミングで、経営方法を見直しました。それまで一人で経営していましたが、少しずつアドバイスをいただくことで組織改革をしました。
それまではフラットな組織で、風通しの良い社風が正だと思っていましたが、「識学」を導入したり、組織図を作ったり、人事評価制度を整えたりしました。
新規事業を開発する中で大切にされていることはありますか?
初期投資してでもたくさん学ぶことです。ECショップを出しているクライアントさんにも言っているのですが、商品が良いから売れるわけではありません。どんなに良いサービスでも、売れることとはイコールではないです。
セールスやマーケティングなどの知識を学んで、売れる仕組みを理解することで売上を上げることができます。資金調達だけして失敗するのであれば、これらの知識を学ぶために投資することが大切だと考えています。
これだけ必死に勉強してきましたので、他社が同じようにセミナーを開催しても集客から入会、運営まで少人数で行い黒字化することは難しいと思います。そこが弊社の強みですね。
今後の展望はありますか?
日本のECをきちんとしたビジネスにしたいと考えています。既存の楽天市場内でのシェアを増やすのではなく、楽天市場もさらに成長し、その分弊社の会員数も増える形が理想です。Eコマースに挑戦して、損したり、騙されたりするショップさんをできる限り減らし、商売が成り立つショップを増やしていくために今後も頑張っていきたいと考えています。
―本日インタビューした日本ECサービス株式会社様の情報―