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事業者でもありアーティスト。アートに実用性を与えることで、今までにない価値観からイヤホンを生み出す。 – 株式会社EBRU 佐藤 怜

株式会社EBRUはデザインのカスタマイズが可能なデザインイヤホンを創出し、機能性のあるイヤホンにアートを組み合わせることで新たな需要を生み出している企業です。欧州最大規模のファッションコンテスト「International Talent Support2020」では、Bluetoothイヤホンを内蔵した作品で、部門賞を受賞し、世界的に有名な「Vogue Italia」「Vogue Japan」にも掲載されました。

大学時代からの友人3人で、「ワイヤレスイヤホン×アート」の新たな市場を作りだしている、株式会社EBRUの代表 佐藤 怜様に「アートの事業を選んだ理由と意識していた事」ついて伺いました。

佐藤 怜 - 株式会社EBRU 代表取締役/創業者-

経歴:

1991年、岩手県生まれ。2017年に金沢美術工芸大学 工芸科 染織コース卒業、2018年 Accademia Costume e Moda MA Accsessories 卒業。

美大卒業後、イタリアにファッションアクセサリーを学ぶために留学。テキスタイルメーカーでの勤務を経験し帰国。欧州最大のファッションコンテストInternational talents support 2020 にてBluetoothイヤーモニターを内蔵したアートヘッドピースの作品で挑戦し、Swatchアートワーク賞を受賞。

並行し、Startup studio by Crewwでアイディアが採択され取り組んでいた、デザイン性に特化したBluetoothイヤホンのビジネス化に向け取り組み2021年4月に法人化。

 

ファッションコンペティションから生まれた株式会社EBRU

-アート×イヤホンという発想に至ったきっかけを教えてください

知り合いに、耳型を採集して作るイヤホンを独自で作っている人が偶然いたことがきっかけです。見た時に「面白そうだな」「大学時代に作品制作で使用していたマーブリングという技法の模様を当てられそうだな」そんな想像が膨らみました。

 

そこから海外のファッションコンペにイヤホンが内蔵された作品を応募し、賞をいただきました。コンペの作品は作品的なアート要素が強かったのですが、一般の人も身に着けやすいデザインにしたらどうなるのかと考えるようになり、一般消費者向けにデザイン性の高いイヤホンをスタートアップスタジオで作ってみようと製品化が始まりました。

○ 応募された作品

 

なので起業までの流れとしては「お洒落な物を作ろう!」という流れではなく、アーティスティックな作品を最初に作り、その作品を一般の人に使って欲しいという思いが起業に繋がった形です。

-複数の選択肢からイヤホンを選んだわけでは無かったのですね。

偶然に近かったと言えるかもしれません。日常から電車内や街中にいるサラリーマンの人が、同じようなスーツに同じようなイヤホンを付けている姿を見て、「この人たちは何を聴いているのかな」と勝手に想像していました。

 

見た目からだと全く分からないので、「分からない部分がもっと外に出てきたら面白いのに。コミュニケーションになるのに。」という思いが私達のテーマとなって作品作りに繋がっています。

 

海外のファッションコンテストに出したEARMINDのアートイヤホン作品は、友人や実在する著名人と想像が掛け合わせられた人をイメージした人格の脳内にある好きな音楽や好きな世界観をビジュアル化したものでした。

街を見ていてふと思ったこと、もっとこんなものがあったら日常が楽しくなりそうだと想像したことが、組み合わさったことでEARMINDが生まれました。

 

-「EBRU」は大学時代から活動しているとお聞きしました。

大学1年時に私を含めた3人で「EbRu」という、それぞれが技術を出し合ってマーブル模様の作品を制作し販売するというアーティスグループ兼デザイングループの活動していた事が最初です。

 

私はテキスタイルという布などのデザインを学んでおり、他の2名は焼き物を学んでいました。大学1年から4年まで作品を制作、販売していました。始めはクラフトマーケットからスタートし、少しずつ卸先を見つけたり、展示販売を行ったりしていました。

 

作品の売上で海外に卒業旅行をしに行こうというのが目標だったのですが、実際に3人分のイギリスとイタリア旅行費を全部賄えました。これが最初のビジネス体験でした。

 

-大学時代は実際にどんな物を販売していたのですか?

マーブル模様がついたお皿やピアス、バックやノートといった、ただ純粋に飾るだけ・見るだけのアート作品では無く、実用性のある物を1個ずつ手で制作し販売していました。

 

全て手作業なので誰が買うのか分からないような面白い変な模様が出来ることもあります。しかし、ノート等の商品の形にすると誰かが必ず気に入ってくれて買ってくださっていました。

 

現在は商品化にあたりターゲット層を決めていますが、当時は絞り込まなくてもその偶然に生まれた個性的な物を、手にとってくれる人がいることを実体験として得ることができました。

 

その後は3人が別々の道に進んだこともあって一旦活動を休止しましたが、もう一度作品の制作をしたいという共通の思いから活動を再開しました。

 

-そこから起業の準備をする為にスタートアップスタジオに1年ほど在籍したと拝見しましたがどんな事をされてきましたか?

ブラッシュアップと仮説検証です。

スタートアップスタジオ内でアイデアが採択された後、アクセラレータープログラムの中で段階的にKPIを設定し、基準に達しているかの審査が3次まであったのですが、審査を通過するためにユーザーインタビューを50人とったり、ポップアップイベントを渋谷や吉祥寺で開催したりしました。

その中で「音質はどれが好きなのか。どんなデザインが欲しいのか。」について調査しました。

 

またデザイン性に特化したイヤホンというのは世の中に無いなと思っていたので、デザインが気になる人が市場にいるのかを検証する為にMakuakeに出品し需要がありそうかどうかを検証しました。

 

-スタートアップスタジオで思い描いていたビジョンが変わる事はありましたか?

私達の場合「やりたいこと」は変わりませんでした。

 

早い段階でスタートアップスタジオの方に「アートとビジネスを分けろ」と言われたこともありました。私としては絶対に分けたくないと考えていました。後に実証検証を進めていくにつれて言葉の意味が分かっていくのですが、どうしたらやりたいことと、ニーズのバランスが取れるのかは常に考えていました。

 

-大変だったことや困難だったことを教えてください。

 

1番大変だったのは、スタートアップスタジオにいた頃です。

3人共バイトや正社員の仕事をしながら、事業になるのか分からない状態で、実証検証をやりながら、海外のファッションコンテストに向けて制作もしており、この時が一番大変でした。

ソフトウエアではなくハードウエアなので、物を制作するという作業が入るので時間が非常にかかります。

 

私たちのプロダクトは、充電器や耳の形等の原型を全部自分たちの手で作っており、さらにその原型を3D化して工場に製作をお願いするところまで行う必要があるので時間がかかります。

 

今は資金調達や創業融資を受けたのでフルコミットできる体制になれましたが、始めた当時は大変でした。

 

-成功しなかったらどうしようという不安もあったと思いますが何故一歩踏み出せたんでしょうか?

 

「自分でやるしかない。意地でもビジネスにしてやる。」という気持ちが芽生えた事が大きかったと思います。

 

日本で就活をしていた頃、テキスタイルの業界を受けに行けば「君はアートの業界の方がいい。」と言われアートの業界を受けに行くと「君はファッションの業界の方がいい。」と言われました。

 

私は怒りや不満が自分を動かす原動力になるので、言われた言葉に「もう自分でやるしかない」と奮起して頑張れたんだと思います。仮に仲間が「私はやらない」となって、1人になってしまっても進めようと思っていました。

 

加えて、踏み出すしか無い状況を自ら作っていた事も大きいと思います。

 

投資型クラウドファンディングをやると決めた時点で、会社を作らなければいけませんし、投資家の方も入ってくるので戻れなくなります。なので覚悟を決める決断をしなければいけないとも言われていました。

 

退路が切られて、やるしかない状態を作ることでとにかく前に進んでいました。

 

事業者でもありアーティストでもありたい

 

-不安や困難も多かったと思いますが、やりたい事をやれて楽しいという気持ちの方が大きいんでしょうか?

そうですね。私達のプロダクトを通して多くのアーティストの方と関われるのが大変な所ではありますが、楽しく面白い所でもあると思っています。

 

実は私達「EbRu」も「EARMIND」の中でアーティストとして参加していて、商品を作っています。

 

私達は事業者でもありますが、アーティストでもありたいと考えています。

 

同じ立場で同じく制作し、作ることを私たちも楽しむことで、関わるアーティストの方々も「作る人の立場を分かってくれている」という信頼感を持ってくれるのではと思います。

 

現在は立ち上げたばかりなので協力してくれているアーティストは大学の繋がりがある人達が中心です。元々一緒に作品を作っていた友人でもあるので感覚を共有し共にEARMINDを形にしてもらうことに協力してもらっています。

ここから型を作ってこれから世界中のアーティストと一緒にアートを盛り上げていけたらと考えています。実際に応援したいし、もっと多くの人に知ってもらいたい素敵な作品を作っている人たちが沢山います。

 

そういった感覚の様に、お互いにアーティストであるからこそ理解をし合えるので、私達は「アーティスト」として、「作り手」としてビジネスに入っていたいと思っています。

 

アーティストとしても関わることで、デザイン部を制作する際の難しさを理解できますし、製品として製作する上で失われてしまうこだわりを守ることが出来ます。

 

そういったこだわりは私達が責任を持って、イヤホンを製作する工程まで一貫して入っているので実現出来ます。

 

-今後の展開を教えてください。

現在のプロダクトはデザインの取り外しが出来ませんが、取替えを可能にしたいと考えています。

 

そうなれば、ピアスのように買い手のファッションに合わせて、TPOに合わせて取り替えられるようになります。

また今後搭載したい機能として、バッテリー交換対応があります。Bluetoothのイヤホンはバッテリーを消耗すると今までは捨てられていましたが、バッテリーの交換を可能にすることにより、アーティストの作品であるEARMINDのイヤホンをより末永く楽しんでもらえることも出来るようになると考えています。

 

また「こんなアートや音楽が好きな人は、こんなデザインが好き」という傾向があるのですが、そういったデータをプロダクトを購入してくださった方達から取り、AIに学ばせることで将来的にユーザーのコアなカルチャー的趣味嗜好から好きなデザインを提案できるようにしたいと考えています。ユーザーの半歩先の興味を促したいです。

 

これらの提案は、独自性や専門性が必要になるカテゴリーでもありますし、私達の持ち味を存分に活かせますし、競合優位性になると考えています。

 

-経営する上で大事にしているものは何でしょうか?

 

熱量です。

自分の商品を販売するとか、美術のプロダクトで絶対に形にしようという熱量だと思います。

今までも周りのスタートアップスタジオの方やコンペの方から「熱量がすごいから選んでみた」や「なんか面白そうだから取ってみた」と言われる事が多かったです。

 

「データがあって、立証があって、売り上げがありそう」というよりも、人は意外と熱量の部分を見ていると思いますし、熱量は技量とは関係ないので誰でも押していける部分だと考えています。

 

現在作り手としても、こだわりや譲れない部分の完成度を上げるといった所を熱量が支えているのだと思います。

 

-本日インタビューした株式会社EBRU様の情報-

 

会社HP

https://www.ebru.jp/