システム開発をするうえで、最初に取り組むべきことが「要件定義」です。
要件定義は、プロジェクト成功の要です。要件定義をきちんと行うことで、より満足度の高いシステムが開発できます。
しかし、システム開発初心者に要件定義の意味はわかりにくく、具体的に何をすればよいのかわからない人も多いでしょう。
そこで本記事では、要件定義の意味や使い方をわかりやすく解説します。
本記事を読むとわかることは次の4つです。
- 要件定義の意味がわかる
- 要件定義の工程がわかる
- 要件定義を行う際の要点がわかる
- 要件定義をより深く理解するための用語がわかる
ぜひ最後までご覧ください。
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目次
要件定義とはどういう意味?わかりやすく解説します
要件定義とは、これから開発するシステムに求められる条件(要件)の内容や意味を、わかりやすくまとめる(定義する)という意味です。
要件定義では、次のことを定義します。
- 開発するシステムの概要や構想
- システムを開発・導入する意図や目的
- これから開発するシステムで実現したいこと
- 開発するシステムに搭載する機能
これらのことを定義してプロジェクトメンバーで共有することで、スムーズな開発をするのが要件定義のねらいです。
【プロジェクトの鍵】要件定義の3つの工程
要件定義はシステム開発の基盤で、この質がプロジェクトの成否を大きく左右します。
要件定義があいまいだと、開発のコンセプトや製品のイメージがブレやすくなるだけでなく、工程の遅延や大幅な方針変更が起こりやすくなるからです。
要件定義からプロジェクト完成までの流れは次のとおりです。
ユーザーの要求をヒアリングする
要件定義をする前工程として、ユーザーの要求をヒアリングし、それをまとめる「要求定義」があります。
要求定義では、ユーザーに近い部門の担当者がユーザーの要望をていねいにヒアリングします。
このとき大切なのが、ユーザーの表面的な要求だけでなく、潜在的な要求までしっかりヒアリングすることです。
ヒアリングの際は、ユーザーの要求が実現できるものなのかどうかを判断するスキルも求められます。
要求定義でシステム開発の工程や進め方をしっかりユーザーとすり合わせておくと、仕様変更の頻発やコスト増加、開発遅延などが避けられるので、時間をかけて行いましょう。
要求を細分化しシステム化する要件を検討する
要求をヒアリングしたら、今度はその要求を細かく分けて整理します。
ユーザーの要求をすべて実現できるとは限らないので、実現できるもの・できないものに分けて、優先順位をつけましょう。
そのうえで、システムやソフトに機能として盛り込む機能(要件)を絞り込みます。
要件定義書を作成する
要件がまとまったら、要件定義書を作成します。
要件定義書に記載する内容は決められていませんが、多くの場合は次のことを記載するので参考にしてください。
~要件定義書に記載する内容~
- 概要と構想
- ユーザーの要求
- システムに搭載する必須要件
- システムを導入する目的や開発の目標
要件定義書は、実際に開発がスタートしてから「言った・言わない」のトラブルを避けるのに必要な書類です。
要件定義書を作成することで、プロジェクトメンバーとも要件の共有がしやすくなります。
要件定義で失敗しないための4つのポイント
要件定義で失敗しないためには、次の4つのポイントを意識しましょう。
- 5W2Hを意識する
- 現行システムの仕様を確認する
- スケジュールを明確にする
- プロジェクトに関わる人に共有を徹底する
5W2Hを意識する
要件定義を行う際に最も大切なことは、ユーザーからのヒアリングです。ユーザーが言葉にしていない潜在的な要求も汲み取ることが、要件定義を成功させるカギになります。
ユーザーからヒアリングを行う際は、5W2Hを意識しましょう。
- Why:なぜそのシステムが必要なのか
- What:そのシステムを通じて何を実現させたいのか
- When:いつまでに開発を完了させなければならないのか
- Where:要求を満たすためにどの範囲まで開発しなければならないのか
- Who:システムの利用者・運用者は誰なのか
- How:どのようにユーザーの要求を叶えるのか
- How much:開発にかけられる予算はいくらなのか
ヒアリングに参加する人は、全員がシステム開発に詳しいわけではありません。
そのことを念頭に置き、なるべく専門用語を使うことは避け、わかりやすい言葉でヒアリングするよう心がけましょう。
必要に応じてフローチャートや図などを用いるのも効果的です。
現行システムの仕様を確認する
ヒアリングが完了したら、現行システムの仕様を確認してください。
とくに、新しくシステムを開発する目的が現在の業務改善である場合は、現行システムの確認が欠かせません。
現行システムの仕様を確認して、足りない機能や改善すべき点を明らかにしておくと、よりよいシステムが開発できます。
現行システムの仕様確認が不十分だと、ユーザーの理想ばかりが先行して、搭載すべき機能や要件に漏れが生じてしまうことがあるので注意しましょう。
ユーザーの要求に耳を傾けるだけでなく、現行システムの全体像を俯瞰的に確認することが大切です。
スケジュールを明確にする
プロジェクトをスタートさせる前に、開発スケジュールを明確にしましょう。
どの工程を・いつまでに行うかを決めてプロジェクトメンバー全員で共有することで、業務の遅れや漏れが生じにくくなります。
開発完了までのスケジュールだけでなく、運用開始後のメンテナンス計画なども含めて、スケジュールを明確に決めておくことが大切です。
プロジェクトに関わる人に共有を徹底する
要件定義書が完成したら、プロジェクトに関わる人に共有を徹底しましょう。
要件定義を行ったメンバーだけでなく、ユーザーや設計段階からプロジェクトに加わるメンバーにも共有し、必要に応じて読み合わせを行ってください。
要件定義書の読み合わせを行うと、関係者で認識のすり合わせができます。
要件定義書に書かれていない背景や、要件検討のプロセスなども伝えることで、担当者間の業務知識や認識の溝も埋められるでしょう。
要件定義書の書き方は?
要件定義書はWordやドキュメント、PowerPointなどで作成できるので、自分が使いやすいツールで作成しましょう。
ここでは書き方の一例を紹介します。
要件定義書に書くべき項目
要件定義書に書くべき項目は以下の5つです
- システム化要件
開発するシステムに求められる要件や機能。そのシステムが何を・どれくらいできなければならないかを解説したドキュメント
- 業務フロー
現場で行っている業務のプロセスを見える化するためのフローチャート。
一般的には「スイムレーン」という枠で部門を、記号で業務を表し、各業務を矢印でつないでプロセスを図にします。
- 業務処理概要
業務フローをより詳細にしたものです。
各業務でのデータの流れやサービスの遷移、処理概要などを解説します。
- 非機能要件
システムやソフトウェアの開発要件で、機能要件以外の要件を指します。
ここで、信頼性や拡張性、運用性、セキュリティなどの要件を定義します。
- サービス移行概要
開発したシステムをリリースするために必要な計画や準備・切替・確認など一連の作業を定義します。
要件定義を理解しないことによるリスク
要件定義は、システム開発の基本です。
要件定義がしっかりできているかが、プロジェクトの成否を分けるといっても過言ではありません。
要件定義を理解しないままプロジェクト開発を進めると、次のようなリスクがあります。
- イメージしていたものとまったく違うシステムができあがってしまう
- 開発スケジュールが大幅に遅延する
- 大幅な予算超過が起こる
イメージしていたものとまったく違うシステムができあがってしまうと、ユーザーの要求を満たせず、大きな不満につながることも少なくありません。
プロジェクトに関わる人の要件定義への理解が追い付かない場合は、ていねいに説明するだけでなく、業界への理解がある外部ベンダーの利用も検討しましょう。
【要件定義をより深く理解するために】知っておきたい4つの用語
要件定義をより深く理解するために知っておきたい用語を4つ紹介します。
- 業務要件
- システム要件
- 機能要件
- 非機能要件
業務要件
要件を定義するにあたって、現在の業務の流れを把握・分析し、問題点とその改善策を定義したもの。
システムを意識することなく、業務の問題点を洗い出し、改善のためにどうすればよいかを考えます。
発注者と開発者の目的をすり合わせるために必要です。
システム要件
業務要件で定義した要件をどのようにシステムに落とし込むか定義したもの。
システム開発の方向性を定義し、システム化を通じてできることをピックアップします。
たとえば、「取引先の郵便番号をすぐに調べられるようにしたい」という業務要件があった場合のシステム要件は「PCからブラウザ経由ですぐに検索できること」や「アプリで簡単に調べられること」となります。
機能要件
システムに最低限実装しなければならない機能を定義したもの。システム設計を行う際の重要な情報になります。
発注者に直接確認するなどして、業務用件と齟齬が生じないようにすることが大切です。
非機能要件
ユーザーの要求を実現するのに直接関係しない(非機能)要件を定義したもの。
具体的には、次のようなものです。
- 画面のデザイン
- 読み込みや画面遷移のスピード
- セキュリティ機能
非機能要件を充実させることで、ユーザーの満足度の向上が見込めます。
要件定義についてのよくある質問
最後に要件定義についてのよくある質問にお答えしましょう。
要件定義は誰がするの?
要件定義は、一般的にシステム開発を依頼する発注者と、受注するシステムエンジニアが共同で行います。
要件定義は発注者とエンジニアが共同で進めるものなので、その責任はどちらか一方だけが負うものではありません。
エンジニアには発注者の要望をうまく引き出す責任があり、発注者にはエンジニアに要望をわかりやすく伝える責任があります。
要件定義のゴールは何?
要件定義のゴールは、ユーザーの要求を実現する解決策を決めることです。
要求をはっきりさせるだけでは不十分で、ユーザーの潜在的な要求にも踏み込んで解決策を提示することが求められます。
要件定義はなぜ難しいの?
要件定義が難しいのは、ビジネスを分析する能力と、システム開発に対する深い理解・高いスキルが求められるからです。
システムを導入するユーザー側が、自分たちの業務改善点を整理し、開発を依頼するシステムの挙動についてある程度イメージを持っていなければできないため、難しいと感じる人が少なくありません。
まとめ
要件定義は、システム開発における要です。
要件定義があいまいなまま開発を進めると、次のようなリスクがあります。
- イメージしていたものとまったく違うシステムができあがってしまう
- 開発スケジュールが大幅に遅延する
- 大幅な予算超過が起こる
一見ハードルが高そうに見える要件定義は、次のことを順を追って行うことが大切です。
- 5W2Hを意識してヒアリングする
- 現行システムの仕様を確認する
- スケジュールを明確にする
- プロジェクトに関わる人に共有を徹底する
ネットでは無料で使える要件定義書のテンプレートもダウンロードできるので、要件定義書の作り方に悩んでいる人は、ぜひ利用してみましょう。
ていねいに要件定義を行うことが、プロジェクトを成功に導きます。
要件定義を行った際はプロジェクトメンバー全員で共有してから、開発をスタートさせましょう。
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