近年、新規事業の立ち上げに関する方法としてリーンスタートアップが注目されています。リーンスタートアップとは、最低限のコストと短期間のサイクルで検証と改善を繰り返しながら優れたビジネスを構築する方法論です。
リーンスタートアップの特徴は、初期段階では小さい規模から事業を始めることです。市場の反応を細かく反映させやすく、市場のニーズに沿ったビジネスを展開することができます。
この記事では、新規事業開発で成功するためのプロセスや、立ち上げに役立つフレームワークについて解説します。
\新規事業立ち上げ、グロース実績多数!事業開発のプロ集団/
新規事業開発で得られる効果
新規事業開発によって企業が得られる効果には、どのようなものがあるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
新規事業開発により新たにポストを生み出せる
新規事業開発で会社や部署が新設されることで、新たに多くのポストを生み出すことができます。既存の業務形態ではキャリアに限界を感じ、少ないポストの奪い合いからストレスで悩んだりする社員にとっては大きなメリットです。
新規事業の実施により、多様なキャリアビジョンを描けるようになり、新会社の社長や役員になる道も開けます。
新規事業開発で採用力・社員定着力が高まる
新規事業開発は、新入社員の採用力・社員定着力にもよい影響を与えます。今はしっかりした会社経営をしていても、20年・30年先まで、社会の変化に対応して生き残れる会社かどうかはわかりません。
新しい分野に新規参入をするような会社は将来性があり、社員の定着に繋がります。就活生にも人気が出れば、より有能な人材を集めることができます。
新規事業で生み出した利益を本業に投下できる
新規事業が成功し、利益を生み出せるようになれば、本業や従業員を守ることができます。
本業を守るために新規事業開発を始めたという経営者もいるように、この考え方は非常に重要です。
本業の経営に信念やプライドを持っている企業は周囲の信頼も厚いので、新規事業も成功しやすいといえるでしょう。
新規事業開発を成功させるプロセスとは
企業が新規事業開発で得られる効果について解説してきましたが、実際に新規事業を手掛け、実現する為のプロセスについて説明していきます。
新規事業開発を成功させるプロセスは、以下の通りです。
- 新規事業参入分野の明確化
- 新規事業市場調査・分析の徹底
- 新規事業に活用できるアイディアの収集
- 新規事業立ち上げの周知を図る
それぞれ詳しく見ていきましょう。
新規事業参入分野の明確化
新規事業開発を成功させるには、まず、どのような分野に参入すべきかを明確にする必要があります。新規事業開発の意義は、リスク分散と持続的成長の確保です。
新規事業は本業とは異なる未知の事業のため、ノウハウがなく失敗することも多いのが実情です。このリスクを低減するために、以下の3つの視点から参入分野を検討してみましょう。
- 本業との相乗効果が得られる分野か
- 経営資源の横展開や未利用資源の活用でリスクを低減できるか
- 将来的に成長が見込まれる分野への参入となっているか
順に解説していきます。
①本業との相乗効果が得られる分野か
新規参入分野への進出により、本業の商品やサービスにプラスの効果が与えられれば、相乗的な売り上げの拡大が見込まれます。
本業での販売や仕入れルート、営業のノウハウを生かすことである程度のリスク低減が可能になり、本業の周辺強化にも繋がります。
②経営資源の横展開や未利用資源の活用でリスクを低減できるか
本業でのノウハウや設備を転用する、経営資源の横展開も有効な方法です。持っている技術を応用して新たな商品を開発するなどの新規事業展開は、多くの企業が行っています。
また、現在活用できていない土地、建物、設備、知的財産などの未利用資源を有効活用することも、初期投資額の減額になり、リスクを低減する方法のひとつです。
③将来的に成長が見込まれる分野への参入となっているか
将来的に成長が見込まれる分野といえば、IT関連産業やネット広告業界、福祉・健康関連産業などが挙げられるでしょう。しかし、成長市場には新規参入も多く、競争も激しくなっています。
すでに存在するサービスや商品と比較して、自社の競争優位性をどう確保するかを研究する必要があるでしょう。
新規事業市場調査・分析の徹底
新規事業開発を成功させるためには、事前の市場調査と分析の徹底が重要です。
市場の動向を知らずに参入した場合、戦略を考え直さなければならなくなる可能性があります。
なぜなら、自社商品やサービスにニーズがないケースや、競合他社が強すぎるケースが考えられるからです。
そのようなリスクを回避するために、新規参入に必要な市場調査と分析について解説します。
①市場調査とは
一般的に市場調査とは、企業が新規事業を立ち上げる際に、市場規模や顧客のニーズやを知るための調査です。市場規模を調査することで、自社のターゲットとなる客層を決め、顧客のニーズを満たせる自社製品やサービスを研究します。
②調査方法
市場調査の方法はネットだけでなく、イベント会場で回答してもらうケースもあります。収集するアンケートの数は、自社製品の種類や顧客の対象規模、予算によって変わりますが、この調査の結果でマーケティング効果に違いが生まれます。
③自社で徹底分析
上記の方法で集めたデータをもとに、自社で分析を行います。分析結果は商品の開発やサービスの向上のために使われるように、各部署で共有するのが一般的です。
商品の感想や評価などの具体的な意見が多いほど、顧客ニーズに合った商品を生み出す源になります。徹底的な分析が将来的な利益に繋がるのです。
調査を行ってから数週間から数か月後に結果が分かり、さらに調査結果をもとにした分析結果が出るまでには、長い時間がかかります。
最終的に新規事業が始まるまでに、1年以上を要する場合もあるでしょう。しかし、顧客ニーズを反映した商品を開発するためには不可欠な調査のため、新規事業開発には必要なプロセスです。
新規事業に活用できるアイデアの収集
新規事業の核とも言えるのが、事業アイデアの収集です。
できるだけ自由な発想で、自社の強みを活かせるものを考えたいですね。30~50件を目安に、柔軟に発想して収集しましょう。
しかし、ゼロから新しいものを生み出すのは意外と難しいものです。アイデアが浮かばない場合は、現在市場に出ている商品や技術・サービスなどの要素を組み合わせて考えるのもひとつの方法です。
思いもよらぬ組み合わせが、新しいアイデアを生み出すきっかけになるかもしれません。他業種にも目を向けて、複数人でアイデアを出し合うのもおすすめです。
新規事業立ち上げの周知を図る
新規事業開発を成功させる最後のプロセスは、新規事業立ち上げの周知を図ることです。
具体的にどのようなことをするのか見ていきましょう。
新規事業開発部の発足
新規事業開発部を発足させ、開発担当者のアサインを行います。
新規事業の立ち上げは大変なことも多く、失敗してしまう可能性も高いため、モチベーションが途切れてしまうこともあるでしょう。
経営者は、事業が失敗しても担当者だけを責めないという意識付けをする必要があります。
新規事業開発コンサルティングの活用
新規事業開発において、自社だけでできない場合は、外部のコンサルティング会社を活用する方法もあります。
コンサルティング会社を利用すると以下のようなメリットがあります。
- 新規事業開発担当者が仕事の進め方や作業内容に不安を感じたとき、コンサルタントの意見を聞くことで不安を解消できる
- 新規参入する業界やビジネスモデルに対して、さまざまな知見が必要となった場合、コンサルタントが持つ知見の提供を役立てることができる
- 新規事業の立ち上げ時に、人的リソースを十分に得られない場合、コンサルティング会社に作業委託することで手が回らない作業を補える。
しかし、コンサルティングは決して安い金額ではありません。
コンサルティング会社に業務委託する際は「どのような課題を解決し、何を得たいのか」を明確にしましょう。
\新規事業立ち上げ、グロース実績多数!事業開発のプロ集団/
新規事業開発を成功させるスキルとは
新規事業の立ち上げを行う担当者には、どのようなスキルが求められるのでしょうか。
ここでは新規事業開発に必要な5つのスキルについて説明していきます。
情報収集スキル
新規事業開発を成功させる1つ目のスキルは、情報収集スキルです。現代社会では、Googleの検索機能を使えば世界中の情報を集められますが、新規事業の立ち上げ担当者に必要なのは、ネットでは見つからない機密性の高い情報です。
新規事業の成功は情報戦にかかっている側面もあるため、他の企業よりも先に新鮮な情報を見つけて収集するスキルが求められます。機密性の高い情報は、新規参入後の市場において自社のポジションを決定づける主要な要因になります。
誰でも読めるような市場調査の報告書や産業レポートではなく、実際に情報を持っている人と会って話を聞くなどの独自の情報収集が鍵です。そのためには、正確な情報を持っている人を見つけることを意識して、直接情報を集めていくことが重要でしょう。
論理的思考スキル
新規事業開発を成功させる2つ目のスキルは、論理的思考スキルです。
新規事業の参入領域は、自社にとって未知のフィールドであるため、過去の事業経験だけでは実際に起こっていることを推量するのが難しくなります。
このような環境では、先入観にとらわれず、客観的に状況を判断できる理論的思考スキルが求められます。また、新規事業開発においては関係する他部署の協力が必要です。他部署へ新規事業の実施方法や現状について合理的に説明する必要があります。
この際、事業開発担当者の個人的な思い込みと受け止められないような整合性のある説明をすることが大切です。論理的思考スキルを身に着けることが、新規事業開発を成功させる第一歩と言えます。
資料作成・プレゼンテーションスキル
新規事業開発を成功させる3つ目のスキルは、資料作成・プレゼンテーションスキルです。
資料作成のスキルは企画段階だけでなく、新規事業立ち上げの際にも必要なスキルです。
企画段階での資料作成は、決済者に対するプレゼンテーション用のものですが、新規事業立ち上げ段階では関係部署や見込み顧客、ビジネスパートナーなどに向けた資料を作成する必要があります。
相手に合わせて説明文や言葉遣いを変えるなど、柔軟な対応が求められるでしょう。また、資料作成・プレゼンテーションスキルは、社内での業務の方向性をそろえるためのスキルでもあります。
新規事業開発の場合、文書化された企画が後に修正される可能性が高いため、そのたびに方向性を含めた資料修正を行う必要があります。新しい知見に基づいて作成される資料は、修正前よりも一層説得力のあるものでなければならず、高度なスキルが必要とされます。
プロジェクト・マネジメントスキル
新規事業開発を成功させる4つ目のスキルは、プロジェクト・マネジメントスキルです。
新規事業の立ち上げには、下記のような実務能力が必要になります。
- 営業
- 設計
- 開発
- 製造
- 販売
それぞれ全く異なる能力が求められるため、1人ではカバーできません。そこで、担当ごとに人数を集めてチームを作り運営することになります。このチームをまとめあげる力がマネジメントスキルです。
マネジメントスキルには、関係する部門が相互に連携してプロセスを進められるように調整する役割が求められます。同時に、プロジェクト全体を引っ張っていくリーダーシップも必要になるため、極めて重要なスキルです。
デザインスキル
新規事業開発を成功させる最後のスキルは、デザインスキルです。デザインも新規事業に欠かせない要素のひとつです。どんなに優れた商品・サービスであっても、魅力的に見えなければ、手にとってもらえない可能性があります。
商品・サービスには、必ず下記のようなデザインスキルを必要とする作業が発生します。
- 商品(サービス)名を付ける
- ロゴデザインを作成する
- コンセプトカラーを策定する
- HPデザインを作成する
デザインスキルを磨くためには「今何が売れているのか」「流行のカラーは?」などを常にリサーチしておく必要があります。事業内容にもよりますが、商品開発はデザインスキルが必要な分野であり、高い専門性が求められます。
新規事業の分析に欠かせないフレームワークとは
フレームワークとは、事業戦略を立てる際に必要な多角的な分析をわかりやすくパターン化したものです。新規事業開発を成功させる確率を少しでも高めるために、客観的な視点からアイディアを検証し、効率よく分析することができます。
ここでは、代表的な3つのフレームワークをご紹介します。
フレームワーク1:3C分析
3C分析は、市場における自社の立ち位置を知るためのフレームワークとして知られています。
3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字を略したものです
- Customer(顧客)…顧客のニーズ、流行、市場規模、成長性など
- Competitor(競合)…競合企業の特徴や競合各社が占めるシェアなど
- Company(自社)…自社商品の特徴、想定内のサービス、リソースなど
上記3つの要素から、失敗リスクの回避と、自社が事業に活かすべき強みを見出すことができます。
フレームワーク2:SWOT分析
SWOT分析は、企業の現状を客観的に把握し分析することで、事業戦略を導き出すフレームワークです。SWOTはそれぞれ「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の頭文字をとった言葉。
自社の内部・外部それぞれのプラス・マイナスの要素を下記の4つに分類して分析します。
プラス要因(追い風となるもの)
- Strength(強み)…自社の強み
- Opportunity(機会)…市場における機会
マイナス要因(向かい風となるもの)
- Weakness(弱み)…自社の弱み
- Threat(脅威)…市場における脅威
SWOT分析のメリットは、市場の動向と自社の優位性を照らし合わせたマーケティング戦略ができることです。
フレームワーク3:MVV分析
MVV分析は、企業の理念や役割を明確にし、メンバーと共有することを目的としたフレームワークです。
MVVは「Mission(使命)」「Vision(将来像)」「Value(価値)」の頭文字をとった言葉。
- Mission(使命)…企業が社会において果たすべき使命、存在意義
- Vision(将来像)…企業が実現したい目標、理想の未来
- Value(価値)…顧客に対して提供する価値観、行動指針
上記3つの観点から分析することで、新規事業を立案する際に方向性を決める指針とすることができます。
新規事業の分析に欠かせないフレームワークのおすすめ本
ここでは、新規事業の分析に欠かせないフレームワークのおすすめ本の入門編をご紹介します。
「『60分でわかる! ビジネスフレームワーク』ビジネスフレームワーク研究会 (著), 松江 英夫 (監修)」です。
ビジネスの論理的思考を習得するためのフレームワークの正しい使い方や、効果的なフレームワークの組み合わせ方まで紹介されています。
67のトピックにまとめてあり、1時間で読むことができます。管理職や経営者の人だけでなく、就活中の学生にもおすすめの1冊です。
新規事業開発が成功する要因
新規事業開発が成功する要因について、具体的に5つ解説します。
自社の得意分野を応用・発展
新規事業が成功している場合、自社のコアコンピタンス(他社に真似できない核となる能力)をうまく活用しているケースが多いです。
一からノウハウを研究したり習得したりするのは、あまりに時間とコストがかかりすぎて効率的ではありません。
すでに成功体験がある得意分野を横展開して応用・発展させる方が、成果が出る可能性が高いでしょう。
さらに土地や建物、設備、知的財産などで現在未使用の資源があれば、同時に活用を検討するのもよいかもしれません。
ブルーオーシャン市場への参入
ライバルがいないか、極めて少ないブルーオーシャン市場を狙うのも非常に有効です。
多額のシードマネーが必要だったり、準備に苦労が伴ったりするかもしれませんが、成功すればコストを上回る大きな利益を得られる可能性を秘めています。
具体的には、競合のいない分野への参入と、誰も行っていないサービス提供の方法を採用する、という2パターンが考えられます。とくに後者には、買い切りが常識化しているところにサブスクリプションを導入するという例があります。
サブスクリプションは、ユーザーからすると初期コストがかからず、途中解約がしやすくて、好きなアイテムやサービス、また常に新品をリーズナブルな価格で使用できる点がメリットです。
顧客の需要とサービスのメリットが噛み合えば、市場が広がると期待できるでしょう。
適切かつ明確なターゲティング
新規事業が成功しているケースでは、適切なターゲティングが行われていることが多いです。
いくら良い商品やサービスを開発しても、それを必要とするユーザーが存在しなければ意味がありません。
また他社の商品とサービスとターゲットが被ってしまうと、顧客の奪い合いになってしまいます。
ターゲティングのポイントは、ターゲットの枠を広げ過ぎないことと、ライバルが少ないニッチなターゲットを設定することです。例えば、下記のような例が挙げられます。
- 40代 男性 独身 自営業 九州在住
- レコードやカセットで音楽を聞きたい65歳以上の女性
- 20代 左利き 一人暮らし
- YouTubeの登録者数50万人以上のインフルエンサー
このように明確なターゲティングを行い、ターゲットの細かなニーズを把握することで、より魅力的な商品やサービスを生み出すことができるでしょう。
特定のターゲットから強く支持されると、長期にわたる収益化が実現し、業績を支える成長エンジンとなる可能性が十分にあります。
質の高い人材の育成と採用
従来と異なる新たな事業に打って出るには、それに見合った質の高い人材が必要になります。
まずは、先に述べた新規事業成功に必要な5つのスキルを有する人材が社内にいるかどうかを精査しましょう。
該当する人物が見当たらなかったり、あきらかに不足していたりする場合は、外部の人材を採用する必要があります。
計画中の新規事業と親和性の高い業種での勤務経験やマネジメントスキルを持つ人材や、スタートアップでの起業経験などを持つ人材を集めましょう。
また、人材の確保と並行して、社内人材の育成にも取り組みましょう。
社外留学や出向、リスキリングや副業の推奨などを通じて、新規事業が順調に運ぶためのスキルや知識の習得を促します。
他社に出し抜かれないスピード
新規事業の方向性が固まったら他社に出し抜かれないように、1日でも早いスタートを目指してロードマップを策定する必要があります。
その意味では、ソフト開発におけるアジャイル開発が参考になります。
アジャイル開発は、重要度の高い機能から優先的に開発をし、機能ごとに最短期間でリリースを行う開発手法です。機能ごとに顧客からフィードバックを受けることができるので、理想とズレがあった時にスピーディーな修正対応・再リリースができます。また開発途中の仕様変更にも柔軟に応じることができます。
また、最低限の予算で機能も最小限にした試作品を作り、顧客からフィードバックを受けながら改善を進めて正式リリースを目指すリーンスタートアップも有効でしょう。
できないことを挙げるのではなく、できることを前提にし、チーム全体で柔軟かつスピーディーに進められる雰囲気作りを徹底することが重要です。
また事業開始までの期間は、トップが新規事業の必要性や意義を繰り返し説きながら、一丸となって社員の士気を高めていくことも肝要です。
遅々として準備が進まず事業開始が先延ばしになると、社員のモチベーションが下がってなし崩しとなったり頓挫してしまったりするケースもあります。
はじめからすべてが順調に運ぶ新規事業などほぼありえません。
むしろ想定外の事態やトラブルの連続といってよいでしょう。
だからこそPDCA(計画→実行→検証→改善)サイクルを回して改善を繰り返しながら、新たな事業形態を構築していく体制を整えることが重要なのです。
\新規事業立ち上げ、グロース実績多数!事業開発のプロ集団/
新規事業開発が失敗する要因
続いて、新規事業開発が失敗する4つの要因について解説していきます。
ニーズの検証不足
そもそもニーズを読み違えている
市場調査不足と的外れな分析によりニーズを読み間違えてしまうと、想定した成果がでないことが多いです。
具体的には、アンケートを実施した対象に偏りがある、リサーチしたデータが新規事業と乖離している、データが古いなどが考えられます。
新規事業が大きく成功する場合、社会や地域コミュニティ、特定の業界や社会的弱者にとっての「困りごと」に対する的確なソリューションを備えていることが非常に多いです。そしてリアルな困りごとは、ニュースや文献よりも、現場や厚い信頼に基づく人間関係の中から収集できることが少なくありません。
参考までに、売上高粗利率80%超という驚異的な収益率を誇る制御機器大手のキーエンスの例を紹介しましょう。
キーエンスでは、営業担当が顧客から直接見聞きしてくる旬の情報を詳しく記述する「ニーズカード」を採用しており、提出されるニーズカードは月間で数千枚にものぼります。それらを商品企画部隊がいち早く吸い上げて新事業や新サービスにつなげるという仕組みです。
情報は公になる時点ではすでに遅く、その前に原石の状態で拾い上げてこそ将来的に大きな宝の山と化す面があります。新規事業成功にはそれらを的確に察知する情報スキルと分析力、さらに先見性が強く求められます。
事業計画の検討不足
新規事業の計画自体が検討不足で問題発生や計画の不備に対して対応できない
新規事業開始までのリードタイムを早めることは非常に大切です。
しかしあまりに拙速すぎてもトラブルにつながります。事業計画自体が検討不足なために、対応不可能な想定外の問題が発生したり、根本的な仕組みに無理があったりして継続が困難になるケースがあり得るでしょう。
事業計画で大切なポイントとしては、以下のような項目が挙げられます。
- 「何を」「いつ」「誰が」「なぜ」「何のために」「どのように」「いくらで」という6W1Hとともに現実や時流に即した具体的なビジョンがある
- 市場データや他社の動向など客観的事実が豊富に盛り込まれている
- 計画内容が社内と協業相手の末端にまで浸透しており、コンセンサスが取れている
- 従来の事業やサービス、ライバル他社との明確な差別化ができている
これらのどのポイントが欠けても、新規事業開発は順調に進みにくくなるでしょう。
自社リソースの不足
経営資源である「人・モノ・金・情報」が不足している
新規事業を軌道に乗せるために不可欠なリソースは、「人」「モノ」「金」「情報」の4つです。これらが不足していると、新規事業が失敗するリスクが高まります。また通常であれば、これらが十分かどうかは、上記の事業計画が的確に行われていれば予測がつくはずです。
企業の成長サイクルは、一般的に、「創業期→成長期→成熟・安定期→衰退期(再成長期)」の4ステップを経ていくといわれています。そして新規事業を開始するならば、「成長期」もしくは「成熟・安定期」の企業が圧倒的に有利です。
なぜなら企業自体に勢いがあり社員のモチベーションも財務状態も安定しているため、新たな動きをつけるだけの十分な余裕があるからです。業績に対する信頼も厚いために協業相手を見つけたり資金調達もしやすかったりもするので、新規事業が成功する確率も増すでしょう。
一方で、まだ成長途中の「創業期」や、既存事業が下降している「衰退期」にある企業は、人的、経済的リソースに余裕も勢いも欠けています。無理に新規事業を進めることで既存事業に必要なリソースが不足するなど、新規事業開発が裏目に出るリスクは高いと考えられるでしょう。最悪の場合、火に油を注いでどうにも経営が立ち行かなくなる恐れもあります。
このように、開始のタイミングを見誤ったことによるリソース不足が要因の失敗ケースは少なくありません。
撤退の基準が明確でない
撤退時の明確な判断基準がないことで大きな損害が発生する
新規事業を始めるにあたり、うまくいかなかった際の撤退基準を明確にしておくことも大切です。
経営者や担当者からすれば、事業の撤退ほど嫌な作業はないかもしれません。しかし撤退のタイミングを見誤ると、経営に大きな損害を残すリスクが高まります。
日経ビジネスの調査では、ベンチャー企業の創業後生存率は、5年後が15%、10年後が6.3%という結果が出ており、いかに新事業の立ち上げが難しいかがわかります。
もちろんベンチャーの創業と既存企業の新規事業開発を単純比較はできません。しかし新規事業の中で成功を収める案件はわずか10%にすぎないという説もあります。この現実を勘案すると、やはり新規事業開発計画は撤退基準までを明確に設定してようやく完成するものといってよいでしょう。
具体的には、以下のような項目を考慮して、撤退基準を設定しておくのが好ましいでしょう。
- KPI(重要業績評価指標)による判断(売上高、利益率、新規顧客数、受注数、受注率など)
- SWOT分析によるマイナス要因(「弱み」と「脅威」)の度合い
- 市場の将来性と成長性
また、事業の撤退は、新規事業の立ち上げに匹敵するほどの負担と疲弊を伴う恐れがあります。
具体的には、
- 協業相手、金融機関、ステークホルダーへの撤退事由の説明と理解の訴求
- 人員整理や配置転換
- 店舗解体費用や原状回復費用の支払い
- 各種契約の違約金の支払い
- 固定資産売却損の発生
- 既存事業(本業)の侵食
などです。
気は進まないかもしれませんが、これらの項目を現実レベルで想定したうえで撤退の決断が手遅れにならないように基準を設定しておくことが大切です。
とくに近年は、不透明で予測が困難な状況が蔓延するVUCA(ブーカ)時代といわれています。
VUCAとは、
- V→Volatility(変動性)
- U→Uncertainty(不確実性)
- C→Complexity(複雑性)
- A→Ambiguity(曖昧性)
以上の頭文字をつなげた造語です。
新型コロナウイルス流行やロシアによるウクライナ侵攻、これらに起因するサプライチェーンの分断や超物価高など、将来の見通しが難しい状況はますます深刻化しています。このような時代だからこそ、新規事業開発時のリスク管理は極めて入念に行う必要があるといえるでしょう。
まとめ:必要なスキルやフレームワークを学び、新規事業を成功させよう!
新規事業開発を成功させるために必要なスキルや、フレームワークについて解説してきました。
近年、注目を集めているリーンスタートアップによって、新規事業開発を検討している企業が多い半面、新規分野に参入するハードルは高く、リスクもあります。
しかし、新規事業が成功した際のメリットは計り知れません。本記事を参考に、成功するためのプロセスやフレームワークの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
新規事業開発が成功する要因
新規事業開発が成功する要因について、具体的に5つ解説します。
自社の得意分野を応用・発展
新規事業が成功している場合、自社のコアコンピタンス(他社に真似できない核となる能力)をうまく活用しているケースが多いです。
一からノウハウを研究したり習得したりするのは、あまりに時間とコストがかかりすぎて効率的ではありません。すでに成功体験がある得意分野を横展開して応用・発展させる方が、成果が出る可能性が高いでしょう。
さらに土地や建物、設備、知的財産などで現在未使用の資源があれば、同時に活用を検討するのもよいかもしれません。
ブルーオーシャン市場への参入
ライバルがいないか、極めて少ないブルーオーシャン市場を狙うのも非常に有効です。多額のシードマネーが必要だったり、準備に苦労が伴ったりするかもしれませんが、成功すればコストを上回る大きな利益を得られる可能性を秘めています。
具体的には、競合のいない分野への参入と、誰も行っていないサービス提供の方法を採用する、という2パターンが考えられます。とくに後者には、買い切りが常識化しているところにサブスクリプションを導入するという例があります。
サブスクリプションは、ユーザーからすると初期コストがかからず、途中解約がしやすくて、好きなアイテムやサービス、また常に新品をリーズナブルな価格で使用できる点がメリットです。顧客の需要とサービスのメリットが噛み合えば、市場が広がると期待できるでしょう。
適切かつ明確なターゲティング
新規事業が成功しているケースでは、適切なターゲティングが行われていることが多いです。
いくら良い商品やサービスを開発しても、それを必要とするユーザーが存在しなければ意味がありません。また他社の商品とサービスとターゲットが被ってしまうと、顧客の奪い合いになってしまいます。
ターゲティングのポイントは、ターゲットの枠を広げ過ぎないことと、ライバルが少ないニッチなターゲットを設定することです。例えば、下記のような例が挙げられます。
・40代 男性 独身 自営業 九州在住
・レコードやカセットで音楽を聞きたい65歳以上の女性
・20代 左利き 一人暮らし
・YouTubeの登録者数50万人以上のインフルエンサー
このように明確なターゲティングを行い、ターゲットの細かなニーズを把握することで、より魅力的な商品やサービスを生み出すことができるでしょう。特定のターゲットから強く支持されると、長期にわたる収益化が実現し、業績を支える成長エンジンとなる可能性が十分にあります。
質の高い人材の育成と採用
従来と異なる新たな事業に打って出るには、それに見合った質の高い人材が必要になります。まずは、先に述べた新規事業成功に必要な5つのスキルを有する人材が社内にいるかどうかを精査しましょう。
該当する人物が見当たらなかったり、あきらかに不足していたりする場合は、外部の人材を採用する必要があります。計画中の新規事業と親和性の高い業種での勤務経験やマネジメントスキルを持つ人材や、スタートアップでの起業経験などを持つ人材を集めましょう。
また、人材の確保と並行して、社内人材の育成にも取り組みましょう。社外留学や出向、リスキリングや副業の推奨などを通じて、新規事業が順調に運ぶためのスキルや知識の習得を促します。
他社に出し抜かれないスピード
新規事業の方向性が固まったら他社に出し抜かれないように、1日でも早いスタートを目指してロードマップを策定する必要があります。
その意味では、ソフト開発におけるアジャイル開発が参考になります。アジャイル開発は、重要度の高い機能から優先的に開発をし、機能ごとに最短期間でリリースを行う開発手法です。機能ごとに顧客からフィードバックを受けることができるので、理想とズレがあった時にスピーディーな修正対応・再リリースができます。また開発途中の仕様変更にも柔軟に応じることができます。
また、最低限の予算で機能も最小限にした試作品を作り、顧客からフィードバックを受けながら改善を進めて正式リリースを目指すリーンスタートアップも有効でしょう。できないことを挙げるのではなく、できることを前提にし、チーム全体で柔軟かつスピーディーに進められる雰囲気作りを徹底することが重要です。
また事業開始までの期間は、トップが新規事業の必要性や意義を繰り返し説きながら、一丸となって社員の士気を高めていくことも肝要です。遅々として準備が進まず事業開始が先延ばしになると、社員のモチベーションが下がってなし崩しとなったり頓挫してしまったりするケースもあります。
はじめからすべてが順調に運ぶ新規事業などほぼありえません。むしろ想定外の事態やトラブルの連続といってよいでしょう。だからこそPDCA(計画→実行→検証→改善)サイクルを回して改善を繰り返しながら、新たな事業形態を構築していく体制を整えることが重要なのです。
\新規事業立ち上げ、グロース実績多数!事業開発のプロ集団/