自分の性を好きになれる世界に。 ‐ プレイリー株式会社 ‐ 代表取締役 岩川 龍之介

今回は、性感染症をはじめとする性に関する社会課題を感じたことから、大学在学中に起業した岩川さんにインタビューしました。

プレイリー株式会社は「自分の性を好きになれる世界に」を掲げ、性に関する社会課題の解決を目指したソーシャルビジネスカンパニーです。分野を問わない多角的なアクションによって、性に関するさまざまな問題や考え方に触れるきっかけを生み、自分を守り他者を傷つけないための正しい知識を広め、それによってセックスを安全なものにし、様々な価値観を超えてお互いを尊重し認め合う文化を作ることを目指しています。


プレイリー株式会社 ‐ 代表取締役 岩川 龍之介

 

経歴:

1997年4月生まれ。2016年に九州大学 芸術工学部 芸術設計学科に入学。大学ではWebサービスの開発やデザインを学び、性感染症の拡大に関するシミレーションを研究。NOVIGO(現NOVIGO Pharma株式会社)にて1年間ピッチや渉外、法務および薬事を担当。多くのビジネスコンテストの受賞や政府系助成金への採択などに尽力。その後、メドメイン株式会社にて設立初期より3年間、Chief, Legal and Finance Sectionとして法務、営業支援、薬事などの業務を行った。自身がマッチングアプリを介した出会いの中でクラミジアに罹患し、性感染症をはじめとする性に関する社会課題を感じたことから2020年12月にPlayrieを設立。

 

◎創業経緯を教えてください

幼少期からサッカーをしていてプロサッカー選手を目指したり、指導者を目指したりしました。ですが、実力が伸び悩みプレイヤーとしてサッカーに携わることを諦めました。それでもサッカーには携わりたいという思いがありました。そこで、高校生の頃にサッカーチームのオーナーになることを目標設定しました。パズドラというゲームが中学生の頃流行っていたのが印象に残っていたこともあって、自分もゲームを作って成功すればサッカーチームを持てるのではと考え、現在在籍している九州大学 芸術工学部 芸術情報設計学科に入学しました。

 

実際に入学したものの、C++をはじめとするゲーム開発に必要となる技術が当時の僕には難しく諦めました。どうしようかなと思っていた所、九大起業部が立ち上がり、九州大学の技術を使ったワクチンシール(刺さない予防注射)を作るNOVIGOというチームに参加しました。ピッチコンテストで優勝することもできました。その後、休学制度を利用しつつ、メドメイン株式会社に入社し、事務や法務をメインに、弁護士と相談しての契約書の作成や、行政との折衝や営業支援など幅広く行っていました。

 

そんな中、僕が性感染症になり、これをきっかけにプレイリー株式会社を立ちあげました。自分も相手も全く自覚症状がなく、定期的に受けていた性感染症検査のおかげで早期に発見できました。ですが、周囲には検査をしている人がほぼおらず、私にはそれが疑問でした。そこでなぜ検査をしないのかを考えたときに、性感染症検査の必要性や性感染症に関する理解をしていないからだと思いました。このようなきっかけから「性」に関する様々な課題を感じ、「性」についてオープンでもクローズドでも、どんな人を好きになってもなれなくても、「自分の性のあり方を好きになれる世界を作ろう」と、プレイリー株式会社を立ちあげました。

 

◎具体的にはどのような事をされているんでしょうか?

まず、検査がスマホから便利に受けられる環境と、その検査結果からパートナーとお互いに安全を確認し合えるシステム作りを目指しました。現在はそこから拡張して”性的な接触履歴”、”性感染症検査の履歴”、や”ライセンスを活用した性犯罪・性被害対策”など、より性の部分で安全性を担保する「SEX LICENSE」というサービスを作っています。このライセンスを実現できると自衛ができるようになります。例えば、男性でイメージしやすいのは、”相手が美人局かもしれない”という不安や女性であれば、”相手が暴力を振るう人”や”既婚者かもしれない”など、このような事に対して、お互いどういう人なのかライセンスを見れば分かり、ライセンスを見せたがらない人は怪しいなど、相手が安全かどうかをお互い確認できるようなサービスにしたいと考えています。

 

性感染症について認知を広めるために、啓発チラシを配ったりもしています。先日、「福岡天神コンドームプロジェクト」というイベントを行い、コンドーム付きのチラシを2日間で1000個配りました。初日終了の時点で、オレンジのアフロ被った僕の顔がSNSで拡散されていて、次の日に会った人の2割からSNSで見たって言っていただけました。チラシとやってる事は広がってくれたのかなーと思っていますね。そもそも、若い人たちに啓発するっていうのが目的だったので、初めてにしては上出来だったんじゃないかなと思ってます。

 

◎苦労はありますか?

コンドーム付きの啓発チラシを色んな施設さんに置かせてもらったことがあるのですが、高校生や大学生が手に取ってもらえるような所に置いてもらう事がなかなか難しいですね。性に関する文脈に触れてるだけで、断られてしまうことが多いです。内容は、本当に真面目なことしか書いてないので、もどかしいですね。

 

街頭に立ってものを配ったり何かを呼びかけたりする活動では、道路の使用許可を取らなくてはいけないのですが、僕の拠点が福岡なので、東京で開催しづらいのが現状です。東京の管轄署は福岡と違い、電話での事前相談ができず、使用にあたってのルールなども直接行かないと詳細が教えてもらえないので、開催地の変更を余儀なくされました。

 

もう一つは、開発の手が足りないことです。将来的にはAPI提供なども検討しているので、データベースを自分たちで持ちたいと考えています。そうなるとノーコード系のサービスでは開発が難しいので、自分たちでバックエンド構築から全部開発する必要があります。そうなると人手が必要になりますが、雇うにもお金がない。多分このぐらいのステージの会社だとあるあるだとは思うんですが。

 

また、このサービスと並行して、新たなサービスも立ち上げています。ホームページに、「プレイリースペース」という、お悩み相談窓口をオープンしました。他にも、ノーコードでのアプリ開発なども検討しています。時間はかかりますが、情報発信や、啓発活動なども含めて、今できる事に全力で取り組み、光るものがあればそれを育てていこうと動いています。

 

◎創業から1年経ちましたが、なにか心境の変化はありましたか?

会社を立ち上げた当初は、受託開発である程度運転資金を作り、その余剰を自分達のやりたい事業に投資していこうと思っていたんですが、なかなか難しい。それはそうですよね、立ち上げて1年の若くて知らない人に仕事を任せるなんて、そんな人いないですから。

 

立ち上げてから半年経った頃、僕がギリギリ生活できるぐらいの実入りはあるが、このままどうしようと行き詰まりそうになりました。ですが、それまでの受託開発の実績から、融資を取り付けることができました。また、新しいメンバーがTwitterで僕を見つけてくれてコミットしてくれたので、遂にやりたいことに舵を切りました。

 

僕らとしては、正しい知識や、性に対する考え方などを発信していく事が一番大きなポイントなので、広報に力を入れています。最近は、こうしてインタビューして頂いたり、ラジオにも出演させてもらえて、広がりを持ち始めてはいます。金銭面以外だと順調なんですけどね。

 

実は、性の分野で、ある特定の課題に対処しようとしたプロダクトは多くありますが、複雑な問題に対して多角的に取り組んでいたり、あるいは、その問題がなぜ起こっているのかという事に対して、上流部分から解決を試みる会社は多くありません。なので、私たちは、性教育の実施や仕組みとなるサービスの提供、あるいはそれにとどまらず、どうやったら社会を変えられるかを真剣に考えながら、「自分の性を好きになれる世界に」の実現を目指して活動しています。

 

‐ プレイリー株式会社様の情報はこちら ‐

会社HP:https://www.playrie.com/

プレイリースペース:https://playrie.com/project-playriespace

会社Twitter:https://twitter.com/PlayrieInc

代表取締役 岩川 Twitter:https://twitter.com/Ryuno_Iwakawa