homeal株式会社は厳選した食材を使い、子ども向けごはんのプロが監修した、1歳半から6歳の幼児向け冷凍食品の開発・販売を展開しています。
成長に合わせた幼児食を提供するhomeal。大人と子どもが一緒に食べることができる幼児食として今、話題のサービスです。
「幼児食の悩みをゼロに。」をブランドミッションに掲げ、設立からコンセプトを変えずに成長してきた、homeal株式会社の代表 鬼海 翔様に「事業開発と組織開発する際に意識していた事」を伺いました。
鬼海 翔 -homeal株式会社 代表取締役/創業者-
経歴:
早稲田大学を卒業後、2010年に組織人事コンサルティング会社のワークハピネスへ新卒入社。自動車・家電・飲料・金融等の大手企業クライアントを中心に次世代リーダー育成や組織変革プロジェクトを推進。
2016年に社内起業家として新規事業(スタートアップスタジオ事業)の立ち上げ及び事業統括に就任。その経験を活かし新規事業コンサルティング部門の責任者 兼 ビジネスデザイナーとして、約50社及び100件程の新規事業/インキュベーションを支援。
2019年に幼児食宅配サービスを展開するhomeal株式会社を創業。サービス開始1年で販売20万食を達成するなど急成長を続けている。33歳、4歳の息子がいる一児の父。
自分が欲しいサービスを作る。
-起業したきっかけ・幼児食に着目した経緯を教えてください。
自分の子どもの病気と、その当時、子どもの成長に合わせた幼児食を提供しているサービスが無かったことがきっかけで起業しました。
我が子が1歳前後の時、肌の病気になりました。どうやったら治るのかを考えた際に、辿り着いた答えが「食」でした。
早速、幼児食と名のついたレシピ本を20冊ぐらい買って料理してみたのですが、そこで分かったことは、レシピがないから困っているのではなく、「レシピ通り作れない」「作る時間がない」から困っているということでした。
「プロが作った幼児食を届けてくれて、料理ができない人でも簡単に完成出来るサービスがあればいいのに」と、切に願いましたね。
さらに市販で幼児食を購入しようと思っても、販売している食品には塩分や添加物が多く入っており、子どもの成長を考えると、あまり食べさせたいと思えるものがありませんでした。これがきっかけとなり、幼児食の悩みを解決出来るサービスが存在していないことに気が付きました。
そこで使い勝手のよい幼児食サービスが無いならば、自分で作ってしまおう!と思い「こういうサービスがあったら」と、自分が欲しいサービスを考えて開発しました。
なので根っこの部分は社会のためのサービスというよりは、自分のニーズを叶えるためのサービスでした(笑)。
-2019年9月に設立されてから最初に何をされましたか?
初めの1年間はテストマーケティング期間を設け、「幼児食」には本当にニーズがあるのか、お客さんは来てくれるのかをとにかく市場検証しました。具体的にはクラウドファンディングや、ECサイトのBASEでプロトタイプのECサイトを作り、購入してくれたお客さんになぜ購入してくれたのかをヒアリングしました。
その結果、最初は湯せんで温めて10分かかるというプロダクトだったのですが、テストマーケティング中にお客さんからのフィードバックで「鍋でお湯を沸かすのは面倒」や「丸型の形状が冷凍庫の中でかさばる」という声があり、現状の平たい形で電子レンジでも解凍できるように改善しました。
また、ユーザだけでなく管理栄養士の専門家や食品の専門家の方たちにも話を聞きました。
このテストマーケティング期間を経て、「幼児食」にはニーズがあるということが分かったので20年の9月から、本サービスとしてリリースをしました。
-サービスを作る上で、どのようなサービスにするかは始めから決められていたんですか?
1番最初に持っていたコンセプトは「親子で食べる事のできる、本物の味を作る」ということでした。
コンセプトからさらに「こういうサービス」あったらいいなと思った
「おいしい、栄養がある、簡単、安い、冷凍できる、そして親子で楽しめる」
の6カ条のようなものを作りました。
-何故6カ条を作られたんですか?
朝ドラの「まんぷく」で出てきた安藤百福さんがチキンラーメンを作る際に5ヵ条を作っていたことに感化されたのもありますが、サービスがリリースされた際にどう噂が広まったら1番良いのかと考えた結果です。
このサービス、プロダクトはお客さんにどう感じて欲しいのか。
「homealって〇〇だよね」の〇〇に何を入れてもらいたいのか。
そういった価値の目標を決めた方がいいと考えていました。
-6か条のような価値目標はどの会社も決めたほうがいいんでしょうか?
決めたほうがいいと思います。多くのスタートアップの創業期は、ビジョンやミッションから発想することがほぼ無いのでは、と思っています。現実的に「自分が困っています」「身近な人が困ってます」だからこれを作りました。というようなプロダクトアウトが多いように感じます。
しかし、プロダクトアウトを開発しようとしたときに「このプロダクトの軸ってなんだろう」という壁に絶対にぶつかります。当初から決めることが出来る部分である「このプロダクトでこういう価値を提供したい」という価値目標を決めたほうが、よりスムーズに開発ができると思います。
自分がどんなタイプか、会社は何をすべきか。
-前職の新規事業のコンサルの経験は、homealを創る上で重要な要因の1つでしたか?
そうだと思います。前職では企業の新規事業の支援をしていたのですが、自分が勉強する期間でもあったと思います。サポートしてもサービスが上手くいかないことのほうが圧倒的に多かったので、その中で「これをやったら失敗するよね」「これやらなかったら失敗するよね」というような失敗確率を上げてしまう要素を理解出来るようになりました。
この経験から同じような失敗をやらないようにはしています。例えばですが、私たちが1年間のテストマーケティングを全くせずに、広告費に月何百万円とかけていたら失敗していたと思います。
-多くの新規事業を見てきた鬼海さんが考える「失敗してしまう選択」はどんなものがあるでしょうか?
僕らのようなEC周りの業界ですと、ECサイトを作れば商品が売れると思っている人が多いですが、ECサイトを新設するというのは広い大海原にポツンと自分のお店を出すようなものです。
お客さんがなかなか来てくれないので、広告費の比重を高めた結果、人を雇うお金が無くなったり、お客さんの声を聞くリサーチ費用が無くなったりしてしまう場合もあります。
自分のお財布だったら出さないようなお金が溶けてしまう場所にも、会社のお金だったらと出してしまう経営者さんは一定数いると思います。
他にもいろいろなタイプの経営者様がいるので千差万別ですが大事なことは、
「自分がどんな人間なのか、どんな思考パターンを持っているのかをきちんと理解すること」
だと思います。
例えば慎重な人間だとしたら、強みはキャッシュフローが安定することですが、弱みとしては踏み込むべきところで踏み込めない、詰められないということがあるかもしれません。
そういった自分の思考の癖を理解して、自分を補完してくれるメンバーは誰なのかを考えてチームを作るのがスタートアップでは非常に重要なポイントだと考えています。
-鬼海さんの場合はどんなチーム作りをしましたか?
サッカーで例えると、僕がオフェンス、フォワードタイプなので、ディフェンス、ボランチタイプの人間を優先的に考えてチームを作りました。
僕は足元の数字とか計画とか立てるのが大の苦手で、正直嫌いです。しかし、物を作って売るというのは、「安定して生産して、物流網にのせて、きちんとお客さんに届ける」というオペレーションシステムがとても大事な作業です。できなくはないですが、やり続けることが僕みたいな人間にとってはすごくストレスで…。
そのため、私が実現したいユーザー体験を、精度の高いオペレーションシステムを構築することで実現することが得意なメンバーが必要だったのです。
-チーム作りで苦しんでいる企業は多いですか?
スタートアップチームは事業と組織のバランスを見ながら0→1、1→10と進めていくので、何に悩んでるかは企業によって全然違いますが、苦しんでいる企業は多いと思います。
本当に0から1を作るときは、事業を作れなかったら組織も作れないので、まずは事業を作ります。そして安定的にお客さんがリピートし続けてくれて、買い続けてくれて、ある程度事業計画の見立てが立って、実績も出てます、という段階になったら、加速するために組織を作る必要があります。
言い換えれば、社長の個人事業主でできる範囲の限界を超えたタイミングです。そのタイミングからは組織を作る必要が出てくると思います。組織を作るタイミングで周りを見渡すと、自分と同じ熱量で経営をしているメンバーがいなかったり、社員がついてこなくてすぐに辞めてしまったりといった、細かい問題が出てくると思いますね。
-事業と組織のバランスをとるのは難しそうですね
難しいです。それに相談する人によってアドバイスも変わってくるので、さらに難しいですね。組織ではなく事業を伸ばせと言う人もいれば、その逆もいます。結局最後は自分で判断するしかないので、判断の軸を持つ必要があると思います。
例えば売上を上げるって軸だったら売上を上げる事業寄りの判断になりますし、楽しい会社を作りたいだったら事業を伸ばすことが疎かになってしまう。
「こういう組織作り、事業作りが正解です」という成功パターンの定義は無いですが、失敗するパターンはいくつかあると思うので、そこを気をつけなければなりません。
-最後になりますが、このサービスで何を実現していきたいですか?
今後は幼児食専門のコミュニティやレシピ本を作ったりと、幼児食に関するサービスをありとあらゆる観点で広げることで、幼児食の悩みをゼロにしたいと考えています。
その先にある、幼児期の子どもの成長を支えることが当たり前の日本にしていきたいです。
-本日インタビューしたhomeal株式会社様の情報-
会社HP