今回は「日本人のグローバルコミュニケーション力の向上」を目的とした、英語学習アプリである「英音学」を企画、開発している株式会社DEFアニバーサリー、代表取締役社長の長谷川孔明様にインタビューを行いました。
英音学は、日本人の誰もが気軽に楽しく英語を話すことができる社会の実現のために開発された「音」を核として英語を学ぶサービスです。キャッチーな音楽に合わせて英語のフレーズを勉強するコンテンツを主軸に、発音、アクセント、文法、実際の会話での使い方等を効率よく学ぶことができます。
-長谷川孔明 株式会社DEFアニバーサリー 代表取締役社長/開発責任者-
経歴:長年塾講師として従事。2018年にはAbemaTV、『偏差値32の田村淳が100日で青学一直線』に講師として出演。2019年に開発責任者として株式会社DEFアニバーサリーの新規事業の英音学をスタート。
既存事業から新規事業に踏み切った理由は何かあったのでしょうか?
私が弊社にジョインする前のお話となりますが、弊社は創業からお見合い事業やウエディング系の事業を行う企業でした。「見た目にとらわれない、人柄重視の婚活」をテーマとした「マスクdeお見合い」という当時は珍しく画期的なサービスも運営しておりました。
しかし、事業全体としてコスト面や集客に課題があったようで、その結果ほぼ資金ショートというところまで追い込まれていました。
そのタイミングで、前代表から声を掛けていただいて新規事業を始めて会社を立て直そうということになり、既存取締役の方と共に、大胆なピボットを決断することになりました。
その時には既に「英音学」のアプリで新規事業を進めていくことは決まっていたのですか?
そうですね、前社に勤めていた時にアプリケーションの根幹になるシステムと概要の部分はある程度形になっていました。ただ、前社の環境ではなかなかこの規模のプロジェクトを進めていくことがリソース・リスク観点などから困難であったため、どのような形で立ち上げていくか悩んでいた際にこの話をいただいた形になります。
英音学のアプリの発想はどこから生まれてきたのですか?
前社の会議に外部のミュージックスクールの代表の方がいらして講演会をしてくださったことがきっかけでした。講演の中で、歌う際に音程、タイミング、リズムなどを一致させると音が1つに聞こえることがあるというお話をしてくださったのですが、その時にこれを言語学習に応用できると着想しました。
私自身、英語専任の講師という訳ではなく、全体の進路指導をしたり、数学を教えたり、国語を教えたりと色々な生徒、科目と向き合い、その中で英語教育のあり方に疑問を持つようになりました。
他の科目であれば、考え方や実際の知識として将来役に立つ、だから頑張ろうと生徒にも声を掛けることができます。しかし、日本の英語教育は多くの文章に触れる機会はあっても、将来実際に必要とされているのは会話力で、この力を身につけるトレーニングはほとんど学生時代にできていません。自信を持ってこれは将来役に立つよと言うことができない状態に疑問を抱き、何とか改善できないかと考えていた時にアプリを作ろうと考えるようになりました。
アプリを開発する際にまず何から始めたのでしょうか?
まずは、アイデアを固めて概要を決めました。塾講師をしている間に、大体1年から1年半を掛けて毎日数時間ずつを使って準備をしていました。
その中で今のアプリのベースになる部分はある程度固めることができました。そこから2020年の10月のリリースに向けてコンテンツ開発を中心に準備を進めた形になります。
2019年ごろからサービスに取り組み始め、リリースまでに特許の申請を含めたコンテンツ開発をしていました。業務の95%くらいがコンテンツ開発だったと思います。
その中で一番大変だったことは何でしたか?
社内体制が十分に整備できていない状態でサービスのリリースをしてしまったことです。私は新しい英会話教材としてとても自信があるプロダクトを作っています。なので、最初は良いものを作れば当然売れるだろうと、妄信的に考えてしまい、戦略的なマーケティング施策が考えられていませんでした。
例えば、2020年10月に初リリースをした際に、電車広告を使用しました。名古屋市内の地下鉄や、関西方面のJRの車内などに大々的に広告を打ち出したのですが完全に失敗でした。まだ知名度のないアプリの初期リリースの段階で、大型の認知広告は、認知を広げたとしても「信頼度」が低く、全くと言っていいほどそれだけではCVしないと言われています。
それよりもWEBマーケティングの方がという意見はあったのですが、社内に知見が無く、結局電車広告を打ったためにコストだけがかかってしまいました。
その後は社内体制を整えることに注力したのですか?
2021年4月に、アプリのコンテンツ自体を大幅リニューアルし、再リリースしました。そのために半年ほどは社内体制の構築や、マーケティングの知識がある専門家に話を伺うようにしました。
なぜリリースから短期間でコンテンツのリニューアルに踏み切ったのでしょうか?
これも私たちが妄信的になってしまっていた部分で、コンテンツに関しても専門家の意見やユーザーの意見を聞かずに、社内のみでの判断だけでリリースをしていました。その結果、塾の生徒向けという目線が中々外れずに、勉強が目的のコンテンツではあっても楽しさに欠けるサービスになってしまっていました。
10月のリリース段階ではまだこの失敗に気が付いていませんでした。最初に無料のβ版や、テスト版のリリースをその1ヶ月くらい前にしたのですが、いきなり1500人くらいのダウンロードを1ヶ月で得ることができました。そこで、「これはいけるぞ」と考えてしまい、そのままリリースして実際に使ってもらった時に、大量の離脱者を発生させてしまいました。
ここで、技術に対する過信や、ユーザー側がどう捉えるかなどのユーザー目線での客観的な視点が欠けてしまっていたことにやっと気が付きました。
まずは何から始めたのでしょうか?
まずは本来一番最初に設定すべきだったターゲットペルソナの設定から始めました。元々は学生から大人まで幅広い層に英語をしっかり学習してほしい、というくらいのぼやっとしたターゲットを設定していました。
その時、マーケティングの知識を持ったメンバーがジョインしてくれたので、ペルソナの詳細を設定し、そのペルソナにとことん刺さること、この人が感動するものを作るように、設計をし直しました。
さらにユーザーヒアリングも始めました。初期リリースまではユーザーテストを全くしないという無謀な製品のリリースをしてしまいました。というのも、投資型クラウドファンディングで資金調達をしたという手前もあって、リリースの時期を明言していたため、その時期を遅らせることが難しかったという背景があります。
トラブルが沢山あり、そもそも株主様に約束していたリリースの時期が半年遅れてしまっていたので、まずリリースを優先させてしまいました。なのでユーザーヒアリングをする余裕がなかったというのが正直なところです。
10月の初期リリースからリニューアルのリリースまでには、実際に使ってもらって使いやすさや、効果をテストしました。同時に初期のアプリを使用していた方にも何人かヒアリングをして、現状のものと比較した意見をいただきました。4月にリリースしてからもユーザーヒアリングは続けています。今後もいただいた意見をもとに、使い勝手などを改善していこうと考えています。
これらの結果、元々は様々な英語のスキルを伸ばすアプリだったのに対し、4月のリリースでは「英会話学習」に機能を絞ったことで、コンテンツ量が1/6~1/7に減り、1単元の勉強時間も短くなりました。声を出して学ぶ要素も多いので、比較的ストレスもなく楽しみながら学べ、かつ学習効率の良いコンテンツへと生まれ変わりました。
失敗を重ねて、さらによくすることも大切ではありますが、最初からヒアリングをしていれば追加の開発期間や費用を削減できたのではと反省しています。
コンテンツのリニューアルの中で大変だったことはありますか?
一度出したものを変えることはとても勇気が必要でした。当時の代表とも揉めましたし、追加の費用も必要だったので、何を大切にするか考えた時期でもあります。その時に使ってくださっていたユーザー様もいらっしゃったので、裏切ることになるのではとも考えました。
その中でも、これからの日本の将来に価値を提供できる製品を作ること、そしてユーザー様に本当に価値を感じていただくことをを考えたら、この判断をするしかないという決断に至りました。
長谷川様のご経験から、経営で気を付けるべきところはどこでしょうか?
スタートアップ企業は財務管理の部分や組織づくりの部分で弱いと思います。スタートアップ企業は2種類あると考えていて、プロダクト主体(プロダクトアウト主体)な企業と、利益率の高い事業を市場から探し出し売上を上げることからプロダクトを決めていくことが主体(マーケットイン主体)の企業があると思います。
弊社は前者なのですが、このような企業は初期に開発コストを掛け過ぎてしまうことや資金繰りが思うようにいかなかったりなどで、比較的リスクが高いと考えます。私は、後者のマーケットイン主体の方が資金面での計画性が高いことが比較的多く、特に初期段階はうまくいく可能性が高いと考えています。しかし一方で、最終的に社会に受け入れられ、長期的に企業としてより大きく成長していくのは、プロダクトに夢を託し、プロダクトに命をかけ、そのユーザーを大切にできるプロダクトアウト主体の企業だと考えます。
そのためには社内体制をしっかり構築し、残資金の状態に気を配り、コストの見直しをしっかりするなどのことを重要視すべきだと考えています。プロダクトを中心に、大胆かつ繊細に経営していくことがスタートアップ企業にとっては成功のポイントになるのではないかと考えています。
今後の展望として何かありますか。
グローバルコミュニケーションできるスキルとしての英語、その力を高めていけるようなコンテンツを提供することが私たちのミッションだと考えています。グローバルコミュニケーション力が高まることで、国力の増加にも繋がると考えています。
昨年、大学入学共通テストにスピーキングの導入が検討されましたが、導入には至りませんでした。私は個人的に導入すべきだったと考えていますが、やはり教育を政策からトップダウンで大きく変化させるのは様々な利害関係や公平性の観点などから、大変難しいなと感じました。
私たちは政治の力で教育を変えようとするのではなく、一人でも多くの日本人に、本当の英語の楽しさを伝えたいと考えています。例えば「洋楽をかっこいい英語の発音で歌えたら素敵だな」、「発音が良く英会話を話せたら楽しい」、「多くの人とコミュニケーションが取れたら世界が広がる」という体験を通して、英会話スキルを「音」の力で伸ばしていきたいというように考える人を増やしていきたいと考えています。そこから「英語教育ってこうだったらいい!」というムーブメントを起こしていきたいです。
その時に、英音学のユーザーがアプリでの教育を通して、本来の英語の楽しさや有用性の価値に気が付き、将来の日本を変えていくようなパワーになるようにしたいと強く願っています!
ー本日インタビューした株式会社DEFアニバーサリー様の情報ー
【英音学アプリのダウンロードはこちらから】
https://eiongaku.jp/app-dl
【英音学アプリとは】
https://eiongaku.jp