【2025年版】最低賃金の全国一覧と推移 よくある注意点も解説

最低賃金とは?その定義と制度の仕組

最低賃金とは、事業者が労働者に対して最低限支払うべきと定められた時給のことです。企業がこの水準を下回る賃金で労働者を雇用した場合、最低賃金法に違反することになります。

日本では、都道府県ごとに設定される「地域別最低賃金」と、特定の産業に適用される「特定最低賃金」が存在します。特定最低賃金は主に製造業など一部の業種に限定されますが、多くの労働者にとっては地域別最低賃金が適用されます。

最低賃金は、パートタイムやアルバイト、正社員など雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用されます(一部の例外を除く)。

2025年度版|都道府県別・全国の最低賃金一覧

以下は、2025年10月1日に改定された都道府県別の地域別最低賃金の一覧です。今回の改訂で全国のどの都道府県でも1,000以上となることになりました。

都道府県改定額発行年月日
北海道1,075令和7年10月4日
青 森1,029令和7年11月21日
岩 手1,031令和7年12月1日
宮 城1,038令和7年10月4日
秋 田1,031令和8年3月31日
山 形1,032令和7年12月23日
福 島1,033令和8年1月1日
茨 城1,074令和7年10月12日
栃 木1,068令和7年10月1日
群 馬1,063令和8年3月1日
埼 玉1,141令和7年11月1日
千 葉1,140令和7年10月3日
東 京1,226令和7年10月3日
神奈川1,225令和7年10月4日
新 潟1,050令和7年10月2日
富 山1,062令和7年10月12日
石 川1,054令和7年10月8日
福 井1,053令和7年10月8日
山 梨1,052令和7年12月1日
長 野1,061令和7年10月3日
岐 阜1,065令和7年10月18日
静 岡1,097令和7年11月1日
愛 知1,140令和7年10月18日
三 重1,087令和7年11月21日
滋 賀1,080令和7年10月5日
京 都1,122令和7年11月21日
大 阪1,177令和7年10月16日
兵 庫1,116令和7年10月4日
奈 良1,051令和7年11月16日
和歌山1,045令和7年11月1日
鳥 取1,030令和7年10月4日
島 根1,033令和7年11月17日
岡 山1,047令和7年12月1日
広 島1,085令和7年11月1日
山 口1,043令和7年10月16日
徳 島1,046令和8年1月1日
香 川1,036令和7年10月18日
愛 媛1,033令和7年12月1日
高 知1,023令和7年12月1日
福 岡1,057令和7年11月16日
佐 賀1,030令和7年11月21日
長 崎1,031令和7年12月1日
熊 本1,034令和8年1月1日
大 分1,035令和8年1月1日
宮 崎1,023令和7年11月16日
鹿児島1,026令和7年11月1日
沖 縄1,023令和7年12月1日
全国加重平均額1,121

全国平均:1,121円(2025年度)

全国で最も高いのは東京都の1,226円、最も低いのは高知県、宮崎県、沖縄県の1,023円です。

最低賃金の改定の仕組みと決定プロセス

最低賃金の改定は、まず厚生労働大臣の諮問機関である「中央最低賃金審議会」で議論されます。ここでは、労働者側・使用者側・公益を代表する委員の三者が、全国の経済状況などを踏まえて引き上げ額の目安を議論し、答申します。

この目安を参考に、各都道府県の「地方最低賃金審議会」が、地域の経済情勢や雇用環境を考慮して具体的な金額を審議します。このプロセスを経て、最終的に各都道府県の最低賃金が決定されます。

毎年夏頃に答申が行われ、10月に新しい最低賃金が施行されるのが通例です。

過去10年間の全国平均最低賃金の推移(加重平均)

全国平均の最低賃金は、この10年で着実に上昇しています。

年度全国平均(円)
2015年798
2016年823
2017年848
2018年874
2019年901
2020年902
2021年930
2022年961
2023年1,004
2024年1,055

最低賃金引き上げの影響と課題

最低賃金の引き上げは、働く人々の生活を支える重要な政策です。一方で、雇用主にとっては人件費負担の増加という課題も生まれます。

特に中小企業や飲食・小売業などでは、コスト増を商品の価格に転嫁できず、経営を圧迫する可能性も指摘されています。また、最低賃金に近い水準で働いていた層は収入が増える一方で、雇用の機会自体が減少する懸念もゼロではありません。

政府は、生産性向上を支援する補助金制度などを並行して進め、最低賃金の段階的な引き上げを推進しています。

よくある質問と注意点

最低賃金が適用されないケースはある?

最低賃金は原則としてすべての労働者に適用されますが、以下のようなケースでは、都道府県労働局長の許可を条件に例外が認められる場合があります。

  • 試用期間中の労働者
  • 軽易な業務に従事する労働者
  • 精神または身体の障害により、著しく労働能力が低い労働者

これらの「減額の特例」が適用されるには、事前に「最低賃金の減額の特例許可申請」が必要です。具体的な法律根拠は最低賃金法に記載されており、事前に確認しておくのがおすすめです。

残業代・深夜手当は最低賃金に含まれる?

いいえ、含まれません。最低賃金と比較する賃金には、基本給、諸手当などを合計して判断します。時間外手当(残業代)、深夜手当、休日出勤手当、通勤手当、賞与などは含めてはいけません。

最低賃金に合わせた給与改訂が間に合わない場合に、どのような問題がある?

以下のような問題や具体的な罰則が発生します。

  • 法律違反(最低賃金法違反)  最低賃金額を下回る給与を支払うことは、最低賃金法違反になります。
  • 罰則の対象  使用者は「50万円以下の罰金」が科される可能性があります(最低賃金法第40条)。
  • 未払い賃金の請求リスク  労働者から差額賃金の請求を受ける可能性があります。遡って支払いを命じられることもあります。
  • 行政指導・監督リスク  労働基準監督署から是正勧告を受け、改善がなされないと送検されるケースもあります。
  • 企業イメージへの悪影響  最低賃金違反は社会的にも注目度が高く、企業の評判・採用活動に大きなマイナスとなります。

まとめ:最低賃金の確認は働く人にも企業にも必須

最低賃金は、働く人の生活を守るだけでなく、企業にとっても法令遵守や人材確保に直結する重要な情報です。都道府県によって金額が異なるため、採用活動や労務管理の際には必ず最新の金額を確認しましょう。

人事や労務の専任担当者がいない場合には、外部に公開されている賃金などが最低賃金を下回っているケースが散見されます。定期的に外部に出している求人情報などを見直し、更新することが必要です。特に最近では多くの外部媒体に求人を掲載しているケースがあり、全ての求人を効率的に管理出来るように採用管理ツールなどを検討することをおすすめします。

今後も年1回の見直しが続く見込みであるため、定期的な情報のチェックが不可欠です。